消費税増税の前に言っておきたいことがあるので,急いでブログに向かった。できるだけ簡潔に述べるよう心がけたい。
消費税増税の前に,ちゃんと経済の現状を把握し先の見通しを立てておかないと,以前の消費税増税の時(1997年,橋本政権)のように,必ず経済が萎縮し景気が悪くなる。その頃,ある学習塾に勤めていたのだが,その塾の家主が北海道拓殖銀行に塾の建物や土地を抵当として入れていたらしく,そこに拓銀の経営破綻があり,しばらくした後,塾の建物・土地を使えなくなってしまう事態が生じた。確か山一証券の破綻もその頃だったと記憶するが,そういった金融危機やデフレ不況を加速させた,一つのきっかけが消費税増税だったことは,すでに共通認識であるはずだ。
いわゆる平成不況とか複合不況とかいわれた不況からまだ完全に立ち直っていない時期に,消費税増税が行われ,経済を一層混乱させた。もちろん不況の原因は複合的なものであり,とりわけ金融の自由化の帰結としての金融機関の経営悪化によってリードされて引き起こされた部分が大きい。不良債権が未処理のままで,消費税増税・特別減税の廃止・医療費の自己負担率引き上げが実施されて,日本経済は立ち直るきっかけを失った。さらには財政再建策として緊縮財政路線が続いて,景気はますます悪化した。企業は過剰設備・過剰雇用を抱え,リストラを実行した。
この時期の財政政策が失政であることは疑う余地がない。増税の時期を完全に見誤ったし,その前に景気判断を誤っていた。いわゆるデフレ不況の根本的原因をつくりだしたのは,単純化して言えば,マネーサプライの調整のみに依存した経済政策・金融政策の失敗であり,そのため今や日本経済は財政政策によって有効需要を創出できない構造になってしまったのだが,そのマネタリスト的な,換言すれば新自由主義的な経済政策を助長するような役割を,消費税増税その他の当時の財政政策が果たしていたのである。
90年代末の二の足を踏んではいけないと思う。だから消費税増税の前提条件には,最低限3つある。
まずは景気の回復局面と税収の増大傾向を確認しなければならない。これがない限り,前回の二の舞となる。というより,今回の増税による国民負担の規模は前回よりはるかに大きいから,二の舞では済まない。2000年代の小泉改革により非正規雇用が増えて,所得も減少しており,しかも去年の震災からの復興もままならない中で行われようとしている今回の増税は,日本経済にとって死の宣告に等しい。
第二に,今日はこのことが一番言いたいのだが,所得の再分配機構を直ちに再編成すべきだ。消費税が逆進性を持っていることは明白であるから,生活困窮者層への再分配機能を,税制や社会保障,労働法,医療・介護制度,等において早急に整える必要がある。今の子ども手当は拡充する必要があるし,また品目別消費税の導入が業界間の対立を招くなど難しい面があるのならば,県民税・市民税非課税の世帯や生活保護受給者などの低所得者層に対して現金給付を行うという案を提案する。貧困層にとって生活必需品に10%の税がかかるというのは,かなりの負担である。その分を現金給付で補って余りあるようであれば,彼らの消費は減らないだろう。もう少し詳しく言うと,低所得者のうちでも,所得水準別に現金給付の額も段階的に変えていく。その主眼は,とにかく国民の消費を減らしてはいけないということである。ただ消費税を増税するだけだとしたら,必ず需要は落ち込む。それをできるだけ防止し,むしろ需要を拡大する工夫が必要だ。貨幣供給や信用創造だけに焦点を当てた経済政策では限界がある。有効需要の創出という観点から経済政策・財政政策は見直されるべきだ。国内市場の豊かな成熟がなければ,財政による有効需要拡大政策も効果が現れないし,またグローバリズムにも対応できないだろう。グローバリズムありきで,国内市場の確立という国民経済的観点の欠落した思考様式では,逆にグローバリズムの時代にも生き残っていけないと思うのである。
最後は,よく言われていることだが,消費税増税に当たっての与党・民主党の政治姿勢である。社会保障制度改革のための消費税増税という大義を掲げるなら,社会保障制度の将来像ぐらいは描いて,国民に示すべきだ。それがないから国民も増税案に不信感を抱くし,財務省の走狗と見られても仕方あるまい。そして,行政や国会の無駄をなくすことにもっと努力すべきだ。議員定数の削減や公務員の給与削減,天下り法人の解散,特別会計の廃止など,そのパフォーマンスすらないから,国民は不信感を募らせるばかりである。単に財源確保のためという,安易で漠然とした理由では国民も納得しないし,97年の時に招いたdepressionを,増幅した規模でくり返すことになる。
急いで書いたので論旨が乱れ,また,どこか事実誤認があるかもしれない。その点,寛恕を請う。
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