【再録】ジダンのヘッドバットは何だったのか?【アンコール】 | ブロッギン・エッセイ~自由への散策~

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド,ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば,水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬編『証言 水俣病』)


 仕事が締め切りに間に合いそうもなく,ブログを書いている時間がとれなくなってしまった。いろいろと書きたいことがあるのだが,どうしても時間がないので,去年の今頃に書いた記事を再録させていただく。去年の今頃といえば,日本が玉蹴りで沸いていた時期だ。僕も浮かれていたその一人だが,サッカーを見る眼は今も変わっていない。ジダンや李忠成が投げかけたテーマを今もなおボールとともに追いかけている。そういえば,今夜遅くには女子サッカーW杯の決勝があるが,残念ながら観られそうもない。どうしてなでしこジャパンの活躍がが管首相の脱原発宣言よりも支持されるかについては,後日。



  思い出はピッチの土埃とともに・・・

  なみだは親愛なる家族とともに・・・

  NO RACISM !!



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「ジダンのヘッドバットは何だったのか?」(2010年7月13日付ブログ)




 サッカー・ワールドカップ2010南アフリカ大会は,昨日の決勝でスペインがオランダを破って優勝し,無事幕を閉じた。思えば,前回ドイツ大会の決勝イタリア対フランス戦で,フランスのジダンがイタリアのマテラッティに頭突きを喰らわせて退場した,あのショッキングな試合から,もう4年が経った。サッカーの試合としては,しかもワールドカップの決勝という世界最高峰の試合であったから,大変後味の悪いものだった。もう忘れている人も多いかもしれないが,あの時ジダンが世界の人々に問いかけたことは重く,根の深いものだった。

 フランスは19世紀,アフリカに広い植民地を建設した影響でアフリカからの移民が多いが,ジダンはアルジェリアからの移民の子として貧民街で育った。その後,サッカーの世界で誰もが認める世界No.1プレイヤーにまでのぼりつめたことは言うまでもない。頭突き事件の当初はマテラッティがジダン自身へ人種差別発言をしたといった報道もあったが,原因はジダンの家族(姉)への侮辱発言にあったようだ。報道によれば,マテラッティがジダンの姉を娼婦呼ばわりしたらしい。それに激昂したジダンがこの暴挙に出たというのが真相と見られている。

 人種差別発言自体はなかったものの,しかしマテラッティの侮辱発言の根っこには差別意識が潜在しているように思える。そうでなければ,家族を性的な対象とするような発言はしないだろう。特にイスラム教徒にとって家族とはかけがえのない大切な存在であり,その家族を汚い言葉で侮辱することは禁忌である。この大会を最後に引退を表明していたジダンが,その有終の美を棒に振ってでも守らなければならなかったものとは,家族であり,さらには,差別され続けてきた弱き少数民族のプライドであった。

 ところで,一昨日,つかこうへいが亡くなった。自ら在日韓国人2世として,弱者・マイノリティの視点を貫いた。それが彼の文学の原点だ。「いつか公平」な世の中になるようにとの思いを込めて,「つかこうへい」の名は付けられたと言う。ジダンの行為は決して許されるものではない。が,サッカー・プレイヤーとアフリカ移民2世とのはざまで苦悩したジダンの心は,世界の人たち皆がシェアしなければならない。「いつか公平な」世界を実現するために。Let's Say NO RACISM!


 僕が一番印象に残るジダンのスーパー・プレーはこれだ!チャンピオンズ・リーグ決勝で放ったボレー・シュート!!





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