毒まんじゅう~原発情報のウソ~ | ブロッギン敗北【ご愛読ありがとうございました】

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アウシュヴィッツが陸の上のジェノサイド、ヒロシマ・ナガサキが空からのジェノサイドだったとすれば、水俣病は海からのジェノサイドである。(栗原彬)
そして21世紀のいま、史上最悪のジェノサイドがパレスチナの地で、殺人国家イスラエルによって遂行されている…


 福島第1原発の状況がますますエスカレートして悪くなっているように感じる。放射性物質が原発周辺の海水(限度の4000倍)からも,40km地点の飯舘村(IAEA基準の2倍)からも,福島県産の牛肉(基準値を上回る)からも検出された。「安全」「ただちに人体に影響はない」「避難の必要はない」といった,これまで国(原子力保安院)・政府や東電の言ってきたことが,いかにごまかしであったのかが明らかになったのではないか。ここまで来ると,反環境の急先鋒だった,自称・原子力の専門家,武田邦彦氏(中部大学教授)の言っていることの方を信じたくもなる。武田氏の見解も,あくまで各自が政府発表の真偽を判断する上での一つの参考意見として見るべきだが,こういう意見があまりメディアには出てこないので,ここで紹介する。断っておくが,それは,必ずしも原発事故の危険性を誇張して伝えたいためではない。念のため。


 武田氏によれば――――

政府やマスコミは「福島原発から20キロのところの放射線は、330マイクロシーベルトだから、胃のレントゲンの2分の1」という言い方をしている。だから安全という。

しかしそれは「そこに1時間しかいない人」の事であり、住んでいる人ではない。だから、1ヶ月あまり住む人は330ミリシーベルトを浴びることになり、子供も親も白血病になるだろう。

すぐ待避しなければならない。決して「安全な放射線」ではないのだ。
原発 緊急情報(10) 政府・マスコミ、ごまかし。危ない?!


 ここで言っている330マイクロシーベルトというのは,1時間あたりのシーベルト(放射線量)であることに注意!1日(24時間)いたら,330×24=7920マイクロSv。1ヶ月あまり(42日)いたら,7920×42=332640マイクロSv=332.640ミリSv。つまり,そこに約1ヶ月あまりいただけで,約1000倍(24×42)の放射線量,すなわち約330ミリシーベルトの放射線量を浴びることになる。こんな計算は小学生でもできるだろう。400ミリシーベルトで、白血病のリスクが高まるというから,この値は相当高いが,政府やマスコミからは,そのような説明は一切ない。武田氏が言うように,確かにレントゲンの値と比べるのは,ごまかしというほかない。レントゲンを受けると「一度に600マイクロシーベルト」の放射線を受けるが,これは瞬時(0.5秒)のことだからである。ただし,330ミリシーベルトという値がすぐさま白血病になるかのような武田氏の理解は,にわかには信じられない。また,原発から出る放射線とレントゲンとは放射線の種類が違うことから,両者を単純には比較できないことは,政府も武田氏も考慮に入っていない(中性子線量が原発からどれだけ出ているかが不明)。


 また,武田氏によれば,避難指示範囲は風向きを十分に考慮した上で出すべきだという。――――


風が問題ですから全く同じ距離でも全然、汚染の程度が違います。例えば、チェルノブイリから200キロ西のところは相当強い汚染を受けていますが、200キロ東南東は全く汚染されていません。

風に乗って一筋になって流れますから遠くに離れても汚染は強いままであまり弱くなりません。
原発 緊急情報(8) 放射線はどこまで行くか?

世界気象機構、アメリカ海洋大気庁、およびフランス気象庁はいずれもその任務を果たし、福島原発付近の風から汚染がどのように拡がるかについて「過去、現在、近い将来」についてコメントしている。
・・・・・・・・・日本の気象庁!!・・・・・・
天皇陛下が国民のことをご心配になっているのに、日本の気象庁は「過去、現在、近い将来」に福島原発の放射線物質がどのように流れるかについて、まったく発表をしていない。
日本には気象庁はなかったのか!
・・・・・・・・・
今のところ、福島原発からの放射線物質の漏洩はそれほど大きく無い。従って、半径50キロぐらいは危険があるが、それより遠い北側と西側には問題がない。東は海だから良いとして、南は引き続き原発の状態と風に注意をしておいた方が良い。
原発 緊急情報(9) 気象庁:国民の方を向いてくれ!



 だから,政府による半径20kmとか30kmという避難範囲はあまり意味をなさない。放射能物質の量は風向きによって大きく異なるからだ。40km地点の飯舘村で高濃度の放射性物質が検出されたのも,そのことと関連しているようにも勘繰りたくなる。放射能物質が漏れた場合に,どのようにそれが流れるかということは原発を建てるときに検討しているはずだから,気象庁はそういう気象データを公開すべきだと指摘する。それが分かれば,危険な方向や地域がもっと詳細に突き止められるだろう。外国の気象庁はちゃんと風と汚染の関係について発表しているのに,日本の気象庁が全く何もしていないことに,武田氏は怒りを顕わにしている。

 確かに近隣住民が求めている詳しい情報があまりにも少ない。メディアでは政府も東電も専門家も「安全」を強調するばかりだが,日に日にその矛盾が明らかになっているではないか。といって,武田氏の意見に加担すべきだというのではない。武田氏の議論にも,再臨海=核爆発や放射線の健康への影響などに関して乱暴なものもあり,鵜呑みにはできないものも少なくない。が,メディアでは情報統制がされているような感じが否めず,政府発表に迎合する意見しか取り上げられていないように感じたので,今日ここで紹介した次第である。あくまで各自がさまざまな情報を元に判断することが重要だと思うのだが,その情報があまりにも少ないというか,偏りすぎているため,判断材料の一つとして武田氏の分析も有りかなと思った。

 一番まずいと思うのは,チェルノブイリのようになってしまうことだ。チェルノブイリ原発事故では,旧ソ連政府は情報をひた隠しにした。その結果,原発から遠く離れた人たちを含めて多くの国民が犠牲となった。そして,今なお後遺症で苦しむ人がおり,原発では事故処理が続く。それは53年後まで。僕が神経質すぎるほどになっているのは,人類が共有しなければならない教訓としてチェルノブイリがあると思うからだ。ただ疑惑や危機を煽りたいためではない。

 何のための原子力技術か。人は何のために科学技術の開発・発展を追い求めてきたのか。それは,もともと人間の必要を満たし,生活をより便利に,より快適なものにするためだったはずだ。それがいつの間にか,人間の必要や生活とは関係なく,先へ先へ技術が自己発展を遂げるようになってしまった。技術開発自体が自己目的になってしまったのである。そうなると,われわれ一般市民,技術の消費者は,技術が開発されるたびに,必要のないものまで使わざるを得ない状況が生まれてくる。その状況では,市民の生活の自律性は奪われ,技術の提供者によって支配されることになる。原子力技術もそのような種類のものではないか,と思える。決して市民の要求に根ざして使われていたものではないだろう。われわれ市民は技術の開発・利用に関して,もっと監視の眼を光らせ,意見を言うべきだ。そして,生活に必要のない技術の押し付けには異議申し立てをすべきだし,生活の必要性や便宜の前提をなす安全を脅かすものについては,尚更そうだ。

 今のような非常時には,さまざまな情報が飛び交い,錯綜するが,何が本当で,何が嘘かを,各自が自立して判断することが求められる。"原子力は難しいから,わからない"ではダメなのだ。上に例を挙げたように,小学校レベルの算数がわかっていれば,政府のウソが見破れることもある。核物理学の専門家と称する人にしたって,原子炉の構造をわかっていない人も多いし,原発の構造に詳しい専門家は,初歩的な核分裂反応の化学反応式がわかっていない人もいる。いわゆる原子力の全体像というか,原子力の「素顔」なるものを見た人は,この世におそらく誰もいないのだ。このような先端の,まだよくわかっていない技術については,意外と素人の意見が有益だったりすることも多い。特に今回の原発事故は市民の生活と健康に直接に関わる問題であるから,各自一人一人が考え,意見を出し合うべきだと思う。そうでないと,国から「毒まんじゅう」を喰らうことにもなりかねない。風評被害はできる限りなくさなければならないが,危ない,危ないと言って,結果,何も起こらなかった場合,補償などの形でやり直しはきく。だが,安全・安心を吹き込まれた末,最後の最後にどんでん返しを喰らって被爆したら,取り返しがつかない。国も電力会社も何も面倒を見てくれない。そんなチェルノブイリのようなことにならないためにも,政府や東電の発表を鵜呑みにするのではなく,各個人の自立した判断を求めたい。鴎外も言っていたように,「盲目の尊敬・追従」というのが一番いけない。

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