「祭りの余情」夏のさかり-季節の周期のなかで、天と地、人が、ひらききる時だ。今日もないし、明日もない。今だ。自分は自分であると同時に、みんなである。みんなであると同時に自分なのだ。まさしく、今日あるがための命であったし、火が燃え、笛が鳴り、太鼓がとどろき、中空に月が冴える。ここに人間と、霊のなまなましい交流、対決が現出している。草履の鼻緒を切らした踊りゆかたの娘の姿に、祭りの余情がなまめかしく香っていた。(岡本太郎「美しく怒れ」)