
⬛️イオマンテ⬛️
貨幣経済以前の社会において、穀物とは富であり権力資源である。人間の世界(アイヌモシリ)の投影である神々の世界(カムイモシリ)においても、イナウ=稲の穂=富=権力資源が、支配者の投影である神々に喜ばれるのは当然のことであろう。もちろん、子熊自体が稲に相当するので、原理的にはイナウは必要ないのだが、こうした儀礼において、同じ役割を果たす異なる象徴が重複しても問題はない。人間心理としては、豊穣や幸福を実現する縁起物は、種類と量が多くあればあるほど良いのである。そして、稲作を行わない狩猟採集民族であるはずのアイヌの豊穣儀礼に、イナウを必要とするところに、イオマンテ儀礼の原型・起源が透けて見えるのである。