
何気ない生活は発見を連れてくることもある。
悲しみをいなして暮らしていたころ、「俺、これが好きなんだよね」と本を勧められた。正確に言うと、彼は自分が好きな本を挙げただけで、私も軽い気持ちで読んだ。そこには「生きろ」なんて書いていないし、前向きな言葉は何ひとつなかった。希望などない。でも、純粋にとても美しい文章だった。読書嫌いで「小説を読む意味がわからない」と豪語していた自分にとって新鮮な感情が湧いた。初めて文章の美しさを知ったのだ。
塵のように積もっていく時間は、いつか悲しみを和らげる。3日かもしれないし、20年かかるかもしれない。
でも、日常は誰にでも平等に訪れる。だからきっとあなたも大丈夫だ。