『息を殺して』
2015年11月 @ 元町映画館
映画館でのみ味わえる時間の流れ、訪れる事を許される至福。
間違いなく2015年を代表する一本であろう。
二年後の東京オリンピック(設定上)を前にしても、訪れた変化から逃避・日常に足止めな登場人物達の閉鎖感が真空パックされた工場の年末年始を、余りに映画的に描いた傑作。
これは、好きだ。
工場が舞台で、物語もほぼ全編工場内で展開するんですが、結局何の工場やったんやろ(笑)?ってぐらい仕事の描写はないんだけど、工場内に漂う作業者同士の空気感、まるで世界から隔絶されたかの様な時間の流れの捉え方は絶妙!
たっぷりと取られた間の保たせ方。
どっしりと構えられたカメラ。
その太々しさが頼もしい。が、だからこそ訪れる、余りに映画的な瞬間(ダンス!抱擁!)を私達は祝福を以って享受出来るのだ。
帰りたくない日常、工場に紛れ込む犬、訪れる筈のない訪問者etc.
此方の脳内を刺激するピースを、知的なパズルとしてだけでなく、映画的な間や画を形成するエレメントとして機能し始める興奮にこそ埋没したい。