イエジー・スコリモフスキ、今回観た四本。
どれも一筋縄でいかぬ、気持ちのやり場のなさに襲われ、しかもその整理も儘ならぬ内に放り出されて、どないしてくれんねん!な、何とも他では得られぬ後味を新開地から引き摺ったまんまで帰路に着いた。
『アンナと過ごした4日間』
あがががが…
何だ、この35mm上映…
あの煮詰めに煮詰まった想いの丈が純化して、フィルムで不思議な透明感を放つ様よ。
あな、もの狂おしや。
ホント、これを爆音上映しただなんて、そりゃそうだよなぁ。
『シャウト』でも神経質に囚われ配されていた“音響=気配”に縫い込められた想いの粒子は、曝音されてこそ、その真価を問われる。
何度も爆音上映を夢想した!
今作に関してはレンタル二回ぐらいしたし、WOWOWでのイエジー・スコリモフスキ特集でも録画してたんだけど、何故だか見る事なくここ迄引っ張ってしまった訳で…でも、今日35mmを味わって運命を手繰り寄せてしまった事に驚嘆し、歓喜した。
夏に『シャウト』観た時は久作を想起したものでしたが、『アンナと過ごした4日間』には乱歩が過ったなぁー
兎に角音・音響への拘りはスコリモフスキを語る際決して外せない案件な訳ですが、あんなにも異様な『シャウト』以上なここでのフェティシュな感覚には鼻息荒くなる。
オルゴール、オルガン、滝のオブジェの水音や囀り模した電子音、雷鳴…
特に場面展開でのけたたましい音のインサートにはうわぉっ!と立ち上がりそうな程に興奮した!
画もぞっとする程に美しくって、特に“窓”のこちらとあちらを映したショットは何処も愛おしい。
雪舞う夜空が向こう側にある画や、部屋から抜け出してのシーツが干してある寒空拡がる画…
本作、でも、息苦しいサスペンスタッチのラヴストーリーってだけではなく、どん詰まりなユーモアが不意に襲う様がスコリモフスキらしさでもあり、独特の魅力に繋がってもいる。
『ムーンライティング』
『ムーンライティング』は、『シャウト』の次作になる訳か。
イギリスで、ジェレミー・アイアンズを主演に撮られた本作。
当時のポーランドの情勢、そして彼自身の異国での体験をベースに、彼の魅力が煮詰まり過ぎてる、過剰で濃密なる室内楽劇。
『シャウト』でのジョン・ハート同様、ジェレミー・アイアンズが普通のイケメンなのが気持ち悪いですが(笑)、まぁ、何だろ、このシュチュエーションの異常さ。
ムーンライティングとは夜間作業転じて副業みたいは意味あるらしいですが、あの月明かりの下でのお風呂入ってるシーンの異様さとかキモくって最高。
スコリモフスキらしいドン詰まりのユーモアと、人間関係も音響的にも不協和音バリッバリの室内楽が、煮詰まって・煮詰まって・煮詰まって、スパークするラストに呆れる程放心した。
行き場なく、遂には犯罪に手を染めるも、それを寸でで救うのが◯◯者ってのが中々にキツい。
あと、ご近所や各種業者との軋轢のシーンはどこもコントみたいでお腹捩れるー!
それと、奥さん(アンナ!)の写真を…服屋に持って行って…も笑った。
テレビに纏わるあれやこれやも好き。
あの縦に置いて、マトリックスみたいな走査線出てるとことかスコリモフスキらしい画だよね。
『出発』
一方で『出発』は、そのキャストからシュチュエーション、音楽に編集迄、バリッバリにヌーヴェルヴァーグ!
そうらしいとは聴いてたんだけど、まさかこれ程までにまんまだとは(笑)。
ジャズと車のチェイスのあのスピード感、堪らん!
でも行き場なしのドン詰まり感と、ラストの放心っぷりは確かにスコリモフスキだ。
あの音楽のオン/オフ感は本来持ち得てたものなのか?ゴダール譲りなのか?
あの車を盗む件とか、あと美容院でのやりとり、クルミのネタや、カツラのネタ…
スコリモフスキらしくない(笑)ウィットに富んだユーモアが何とも擽ったく、瑞々しい。
まぁ、でも、どうなんでしょ?
1967年って時代を考えるとやっぱ時代に乗り遅れた作品でもあったのだろうか?
91分ってコンパクトさなのに、些か冗長に感じてしまうとこもあって、個人的には物足りなさも…(他が濃過ぎだ!)。
『エッセンシャル・キリング』
『エッセンシャル・キリング』は一度レンタルで見てたんで迷ったんだけど、折角の35mm上映だし…で、飛び込んで大正解!
当然スクリーンでは別物!!!
兎に角、今作の35mmはエロい!
死と直面する極限でこそ発情する身体性をスクリーンに横たわらすには、そりゃ、ギャロしかいない。
あれは“極限下”を設定する為のシュチュエーションであって、ここには一切の政治性や宗教観、どころかモラルですら存在しない。ってのが素晴らしい。
ギャロがさぁ、結局何者なのか!?が、最期まで判らないのが最高よね。
勿論ヒントは出てくる訳なんですが、そこは然程重要でないし、そもそも、だからこそ際立つ身体性なのだ。
あんなに哀しそうに殺しを執行するキャラもいないだろう。 あの顔に何を見出すか?
あと、撮影がとんでもないよね。
氷や雪の一切の情緒排した美しさ。
霞む太陽。
視覚から凍てつく水。
砂漠や森、雪原が舞台であるのに、どこか逃げ場なしな閉ざされた空間の様に捉えられているのも面白い。
音響もまた素晴らしいんだけど、前半の砂漠パートなんて会場ビリビリくるクールな音圧を堪能出来る。
さて全5作品。中、『シャウト』は夏の爆音で同じくKAVCで観たので、
これにてコンプリートとさせて戴いて宜しい???





