カノン | Electronic Dolphin Eats Noise

Electronic Dolphin Eats Noise

空論上の九龍城

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2009年11月。mixiの某コミュニティより移植。

2002年、前年の『Go』の大成功で広くその才能に注目が集まる中でひっそりと撮られた行定勲監督作品。
劇場上映では無くWOWOWでの放映を前提に撮られた性もあるのでしょうが、内容的にも『Go』から『世界の中心で、愛をさけぶ』へと到る流れでの大衆化とは少し離れた処で、どこか初期の流れを汲む作風でこの時期の他の行定作品とは離れた物として佇んでおります。

原作は篠田節子さんの同名小説。

現在は音楽教師として働き幸せな家庭を築いている瑞穂は、嘗て共に音楽を学びながらも現在は弁護士としてこちらも家庭を持っている小田嶋から、同じく音楽仲間であった香西が自殺した事を告げられる。
ほんの一時であったものの心を囚われていた事もあった香西の死にショックを受けた瑞穂は、彼の葬儀で彼の弟から一本のカセットテープを渡される。
それは彼女へと向けて録音されたヴァイオリンの調べであったが、あまりにも奇妙で不気味な音であった。
その音を耳にしてから彼女の周辺に不可思議な出来事が起こり始め、それに連れ3人で学び過ごした日々の記憶が日常を侵食して行く・・・

強烈な存在感をこの世界に持ち込む賀来千賀子さんと石橋凌さんに、行定作品にすんなりと溶け込む水橋研ニさんや大森南朋さんや光石研さん。何とも不思議なキャスティングが並びますが、それぞれが絶妙の立ち位置で中々のアンサンブルを魅せております。

官能的且つ幻想的なこの世界観の空気を流石の手腕で音象化した半野喜弘さんの音楽にも注目したいところ。

幻想と現実が奇妙に絡み合う映像美と音への神経症的な拘り、そして時制の錯乱を醸し出す編集・・・未だDVD化がされていないのが不思議な程見応えのある作品であります。
もっと広く認知されても良い作品だと思うのですが…

何より穂高でのロケーションが素敵だ!

サスペンスと謳ってはおりますが、前半こそホラーな匂いも漂うサスペンスな展開ですが、中盤からはいつもながらの記憶に囚われた人々の焦燥と葛藤に逃避と対峙、そして解放と行定節炸裂であります!