銀の匙 | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

しかし、『銀の匙』、唯の傑作やったわ。

恐るべし、吉田恵輔監督!
油断させまくるこのポスターはズルい!

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@ 姫路OS。

2014年3月。


吉田恵輔監督、昨年末の『ばしゃ馬さんとビッグマウス』~『麦子さんと』で拓いた新境地で早くも意気揚々とその才能を謳歌してるかの様な、余裕すら感じさせる傑作で、まぁ、このスパンで、こんな三本撮れちゃう才気と周りの期待に悶絶。


人気漫画を、旬なアイドル・若手役者陣で、な企画の鉄板具合をここ迄最大限に活かしつつ、それを最上のフォルムへと導いてしまえるその才能に、今迄こっそりと愛して来た吉田恵輔の才能と作品は何だったの!?と、放心させられちゃう程。


『ばしゃ馬さんとビッグマウス』でおぉぉ!こんなん撮れちゃう迄なっちゃったか!からの間髪入れずの愛すべき『麦子さん』で、充分にスリリングな邦画史最前線を横断出来たのに、結局今作を観る迄その出来に信用置けなかった数時間前の私を断罪したい。 


『机のなかみ』『純喫茶磯辺』『さんかく』と、他人と時間/空間を共有する事の心地良さ/心地悪さをいやらしい迄に角度が歪み合う三角関係の視点から切り撮り、そこから浮かび上がるオスどものどうしようもなさで私らを悶えさせ・怯えさせた吉田恵輔監督。
しかし、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』『麦子さんと』『銀の匙』と言った三作には、嘗てのそんな意地悪な視点は最早希薄で、自らへその厳しい眼差しが向かっているかの様に、そうだ、メジャーフィールドで撮る事への気概と覚悟が、夢や希望、重圧や挫折に右往左往する登場人物達へと折り重なる。

北海道の農業高校を舞台に酪農と青春を描くってだけで充分に成立するお話なれど、そこに全く安穏としないのが吉田監督の凄みで、近作で描かれている親子の軋轢であったり、夢を実現する事・諦める事の重みは当然、更に踏み込んで酪農を通し、労働・食育との静かなる格闘迄が浮き上がる。
特に“食”に関しての拘りの眼差しは、そんじょそこらのドキュメンタリーを軽くあしらう程で、しかも確りとエンターテイメントとして機能して物語る訳だから畏れ入る。

何より“美味しそう”へと辿り着けるんだから成功だろう。


しかし、学生達演じた若手アイドル・役者陣が皆ことごとく良いな。

ほぼ知らないのに、今では皆愛着持てる。
主演の中島健人くんのフラットな存在感は原作未読なれど、まんま八軒じゃん!だし、近年あまり見ないタイプの健康的な可愛らしさがはち切れんばかりの広瀬アリスちゃんもまんま御影アキ!

昔なら袴田くんが演じてそうな朴訥感ある市川知宏くんや、もうちょっとフィーチャーして欲しかった!なキュートさの岸井ゆきのちゃん、そんなんズルいわ!な安定感の安田カナちゃん、軽薄が学ラン着てる様な矢本悠馬くん…
そんで、美味しいとこガッポリ持ってく黒木華ちゃん!!!


あの中村獅童や吹石一恵が個性的な先生演じてたり、吹越満や西田尚美が味わい深い親演じてたり…に流石に時代の流れ感じますが、アキの親族が石橋蓮司・竹内力・哀川翔ってのは狙い過ぎでしょ(笑)。

そして『抱きしめたい』でのジモンさんに続く、意外な程の好演魅せる上島校長!


『銀の匙』原作人気、主演のパワー、そしてレディースデイの三連打でか、姫路某劇場はいつになく女性陣・学生陣で賑わっておりましたが、彼女・彼らが上島竜兵さん・哀川翔さん・竹内力さんが初登場したとこで、クスクス笑ってたのが、物語が進むにつれて、その声が薄れて行く感じあったのが映画の力。

そして、それとはまた別に劇場賑わってたのは、吉田監督お得意のやりっぱな小ネタの数々。
うーん、彼女・彼らにばしゃ馬以前の恵輔ネタを見せてみたいぞ!


深川栄洋監督が2011年に『白夜行』『洋菓子店コアンドル』『神様のカルテ』と撮り上げた時は唸りましたが、今回の吉田恵輔監督は、スパンの短さだけでなく、そのギアの入って行き具合からしてもそこ越えたんじゃなかろうか?