カレル・ゼマン | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

2012年8月開催“モトマチセレクションvol.13幻想の魔術師カレル・ゼマン”の感想纏め。

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カレル・ゼマン!!!
今までの元映のリバイバル上映の中でも一番嬉しい。
末代までこの喜びは語り継ぎます!!!!!



結婚したらの話だけどな!




幻想と現実を、スクリーン一枚分にまで肉迫させちゃう、繊細なる豪腕“カレル・ゼマン”。
「こんなにも自由な映画の世界で、何故に皆飛ばない!?」
そんな彼の声が聞こえてきそうな程の、際限無しのイマジネーションは、時にスクリーンを突き抜けてこちらまで羽を伸ばしそうだった!


あの画!あの色!あの音!
アートアニメだとかチェコアニメだとかの狭い枠にカレル・ゼマンは収まる訳もなく、真の映画作家にして、革命と伝統を矛盾なく更新した巨人である。
あんだけ暴走しても一切破綻しないのには驚嘆するな。


でも、時折見せる“ふらーと訪ねてくる変わり者の伯父さん”みたいなアヴァンギャルドでアナーキーなユーモアはチャーミングで、劇場内に笑いが溢れてた。


『クラバート』のあの音響はいーなー。ジャーマンロックみたい。
あと雪や吹雪、水車小屋とか、あの炎とか…。カレル・ゼマンのあー言う感覚が大好きだ。作品によってはハッタリめいてるのもあるんだけど、『クラバート』の場合凄く詩的。

そう、詩だよね。

美しい。
そしてロマンティック。堪らなく。
だって愛で燃えるんだよ!!!
あそこまでやられたら惚れるしか術はない。

あっ、『クラバート』のあのおどろおどろしさに『妖怪人間ベム』がチラつきやしませんか?あの赤とか、ケモノへのへんげとか、音響とか、まさに!


『盗まれた飛行船』はひたすら楽しかった!!!
えー、もう終わっちゃうの~?ってぐらいあっという間の90分。
クラクラ必至の驚異的な映像感覚が縦横無尽に繰り出され、そこをバリバリと驚愕の大冒険で突き進む。
字幕ですが、是非お子さん連れて観に行って欲しい。

『盗まれた飛行船』は終始劇場が笑いに溢れてたぐらいユーモア満載なんですが、その笑いはサイレント辺りからの伝統を確り踏まえた物。言葉だとかに頼らない、とても原初的な。

その一瞬の笑いを導く為に計算され尽くしたテンポとか構図とか唸るね!
『プロコウク氏 映画製作の巻』なんてまさにそのものだ。


『クリスマスの夢』は、かなりストレートなまでに“子供の幻想”なんだけど、それを徹底して魅せてやる!って気概と、でも、結局自分がいっちゃん楽しー!な、その鬩ぎ合いにニマニマしつつ、引き込まれた。
アニメーションのダイナミズムとスリルが、見事幻想化する、その醍醐味!!!


『鳥の島の財宝』は、人間の欲と業が渦巻く怒涛のアドヴェンチャー。
勘違いしたお子様風に濾過された御伽話からは消えてしまった物語りの作法。
人形劇であるものの、その表情の細やかさと豊かさに驚愕。
そして、あの陰影と遠近を駆使したカメラ!噂が拡がってくシーンのスリルに酔った!


『水玉の幻想』には、一も二もなく持ってかれた…
乱反射するロマンス。
詩的…いや、そんな現世に堕ちる寸前の美…
限りなく透明で無意識なのに、最も濃厚。
故に息が詰まり、溜息すら戸惑う。


『ホンジークとマジェンカ』は、ゼマン最後の長編だそうだ。
集大成?
完成形?
いや、とても、瑞々しいし、とても、人間臭い。
語っても語っても、尽きぬ想いを、次の世代へと…
ホンジークとマジェンカの悲恋には、彼の本音が剥き出しな気がして、少し戸惑い、深くシンクロした。

サントラ欲しい!

ホント、これは観るべきだよ!皆。
アートアニメだとかチェコアニメだとか以前に“映画”としての醍醐味満載。
しかも、これが肝心。普通に面白い!


私はアートアニメって括られている作品はどれもこれも好きなんだけど、その括り方(いや、先ずネーミングが…)に違和感どころか嫌悪感すらある。そこを語り出すと長いから止めるけど、どうしても敷居と言うか、色眼鏡と言うか、逃げと言うか、諸々不純物が付随するでしょ?
そんなのでカレル・ゼマンみたいな面白い作家が一般層から抜け落ちてしまうのが許せない!確かにヴィジュアルはぶっ飛んでますが、面白さの種類で言ったら初期のジブリやピクサーと何ら変わらないからね。

しかし、カレル・ゼマンのあの次元感覚は劇場で映えるなー。
CG?3D?モーションキャプチャー?
いやいや、そんなのすっかり物足りなくなる程の無次元で、こちらとあちらは溶解する。

いやぁー、夢の様な一時だったなぁ。
(途中フィルム切れて起こされたのはご愛嬌)
いや、僕にとってカレル・ゼマンは、
幼い頃の祖母の語ってくれた寝物語と限りなく感触が近いので、そのものとも言える。


驚くべき事に今回のプログラムで観たカレル・ゼマンの7作品は、そのどれもが画風から手法まで全くと言って良い程違う。
これはアニメ界、いや映画を含めた映像の世界や、その歴史を見渡してみてもかなり特異な存在。

勿論その、作品に共通した物は沢山あって、

例えばスラプスティックなまでにどぎついユーモアとかさ。
あと、やっぱ、大きなシステムに組み込まれる事への彼なりの違和と反発であったり。

しかし、大きいのは、嘗ての私達(それは人類の過去であったり、子供時代であったり)が持ち得ていた筈の“視界”の再現なんじゃなかろうか?
だからこその、子供染みた幻想であったり、過去の御伽話の再生であったり、なのでは?

まぁ、あのゼマン作品に共通した“動き”は魅惑的で、それは今のCGなんかを駆使した“リアリティー”とは全く以って対極なのである。
イマジネーションと補完し合う事で、
観た人それぞれに無限に拡がるリアル。


今回の元映でのカレル・ゼマンのラインナップ。

最も古いのが『プロコウク氏 映画製作の巻』で1947年、『ホンジークとマジェンカ』が1980年。
作風も手法もバラバラってのもあるのかもしれないけれど、洗練だとか、将来設計(笑)なんてのとは対極な作家さんだな。
感服。そして、大好き!


もう胸が一杯です。

ありがとう、元町映画館!
ありがとう、カレル・ゼマン!

そして、こんな僕に辿り着かせてくれた諸々…只々感謝です。


正直二周年にカレル・ゼマンって!どうかしてると思ってたけど、ゴメンなさい、どうかしてたのは、元町映画館とカレル・ゼマンを信じ切れてなかった私の方だ。素晴らしく、そして間違いないセレクションだ。