またダルドリーは私達の深部に触れ、揺さ振ってくれた。
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スティーブン・ダルドリーが巧いなんてのは、彼のデビュー作『リトル・ダンサー』からして判ってた事だけれど、続く『めぐりあう時間たち』で破格の才気を知らしめ、前作『愛を読むひと』では巨匠の風格さえ漂わせていたのだ。
が、しかし、今作では瑞々しさすら忘れていない事を感じさせてくれた。
原作は2005年に出版され瞬く間にベストセラーとなっている。
物語は2001年に起きたあの“9.11”と、その後を描いたもの。
大好きだった父親を9.11で失った少年オスカーは、その巨大な喪失感と吐き出せない悲しみを小さな身体に抱えたまま、母親から・世界から孤立していた。
そんな彼がたまたま父のクローゼットで見つけた鍵を手掛かりに、再び(不器用ながらも)自分の歩みで外の世界へと飛び出て行く・・・
予告なんかで感じた様な、トム・ハンクスのあの顔にU2の歌が乗っかる的な、号泣系のベッタベタな映画を期待すると全く以って怪我しますが、でも、やっぱ、泣く!!!
オスカー演じるトーマス・ホーン君がもう!な程の嵌りっ振りで、驚きなのがこれが役者としての初仕事って!どんだけの才能!
何でもアメリカの人気クイズ番組で活躍する程の神童で、言語からスポーツから芸術から、と様々に手を出すなんて、映画でのあの華奢な姿からは想像出来ない!
彼が見事醸し出す抱える混乱と不安と孤独と、頑固なまでの想い。これが、この映画の胆であり、総てと言っても良いぐらいだ。
特に鍵の謎解きに出る初日のあの姿には震えたな~
父親役のトム・ハンクスはもう全然相変らずで、やっぱ巧いんだけれどさ、母親役のサンドラ・ブロックの柔らかさが絶品だった。良い塩梅で灰汁が抜けましたね。
父親との前半のユーモラスな遣り取りと、中盤の母親との距離感のコントラストがまた深い部分に沁みて、だからこそ後半の母親の行動には掴まれるな。
物言わぬ謎の間借り人を演じるマックス・フォン・シドーの“細やかな所作での台詞”は流石の一言。
無数に登場する“ブラックさん”達を見事切り盛り演出する術はダルドリーの真骨頂だろう。
悲しみを乗り越える事も大切だけれど、悲しみを認め共に生きて行くって選択にこそ強さを感じた。
3.11の未曾有の悲劇で沢山の掛け替えのないものを奪われてしまった私達にも、この映画は大きな示唆を与えてくれている。
ダルドリーの時に抉られる様な厳しい眼差しの先にはいつも希望があるのだから。