打ち上げ花火 | Electronic Dolphin Eats Noise

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空論上の九龍城

夏休み、引越し、そして美少女。
うんでもって、プールに浴衣に打ち上げ花火・・・
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [DVD]/出演者不明

今や世界にその才能が轟かんとしている岩井俊二監督が、映画界に入る前にTVの世界で数々の傑作ドラマを撮り上げていたのは有名な話(それ以前にはPVの世界で名を馳せていた)。

この『打ち上げ花火』はそんな彼のTVドラマ群の中でも燦然と輝く名作である。


元々はタモリさんがストーリーテラーをしていた『if もしも』の中の一本として放送されたんだよね。

その『if もしも』は、ドラマの中盤で分岐点が表れ、二つの結末に向かって枝分かれして行く構成だったっけ。

このドラマ、凄く好きで毎回楽しみにしてたんだけど、予告の時点でこの「打ち上げ花火」は異質な匂いを放っていたのを強烈に覚えている。


さて、岩井監督。

このドラマのセオリーをギリギリで守りつつも、当然ながら只では済ましていない。

TVドラマには在らざる程の様々な実験や遊びを投入し、限界までその才気を詰め込んでいる。

実際見た事ある人なら、その映像や物語がTVドラマのそれとは随分距離あるのを感じただろう。ってかこれって元々TVドラマだったんだ!?って知らない人は衝撃受けるだろうね。

だってさ、これ放送までTV局の上層部には見せなかったんだそうだ。絶対反対されるだろうからって。

でも、だからこそ、後の岩井俊二が生まれた訳だし、この名作が永遠に我々の胸に残っているのだ。


ストーリーは非常にシンプル。

夏休み中の登校日。プールで競争する主人公の少年(山崎裕太君が好演)と友人。その勝者の方を夜中の花火大会に誘ったなずな(奥菜恵ちゃんが妖艶な存在感!)。物語はそれぞれの誘われた方で二つのパラレルワールドを形成して行く・・・

強烈にノスタルジーを喚起する様々なモティーフや、甘酸っぱ過ぎるにも程があるロマンス。

岩井監督ならではの美学に貫かれた映像と、初期岩井作品を甘美に彩ったREMEDIOSの音楽。

とりわけ物語のキーになっている、主人公達が見に行く花火の爆発力と儚さの対比は、まさに彼・彼女達の年代だけが持てた不安定だけど純粋なあの気持ちの象徴だろう。


ドラマ・シリーズの中の一本として発表された本作。

放映時には随分局で問題になったそうだけれど、その反響は凄まじかったらしく、結果その年の日本映画監督協会新人賞をTVドラマであるのに獲っちゃった。

で、その後映画界に進出し一大旋風を起こした岩井作品。この作品も映画用に編集され(残念な事に現在ソフト化されている本作にはタモリさんは登場しない)、劇場公開され幅広い支持を得ることになったのだ。


と、つらつら綴りつつも、本作の肝は誰が何と言おうとなずな(≠奥菜恵)である。

これは監督本人も認めている。

随分後に別の形で芸能界を賑わす事になっちゃった彼女だけれど、ここに刻まれた一刹那は奇跡と言っても過言では無い。

その為だけに本作が存在してると断言しても、きっと誰にも怒られないだろう。


さて、打ち上げ花火は横から見ても丸いのか?若しくは真っ平らなのか?