たまたまテレビの番組表を見ていたらNHKで、「世界のニュー試」という番組があったので、見てみました。
海外大学のエッセイと呼ばれる小論文のテーマにそって、ゲストが実際にエッセイを書いて、それを試験事情をよく知る先生が合否を決めたり採点するというものです。
あまりにも、問題が漠然としすぎているので、これは一筋縄じゃいかにと思いました。
日本の小論文のテーマは、もう少し書く内容の範囲が限定されているのと大きく違います。
番組で取り上げられたものとは違いますが、インターネットで調べてみると、こんな問題があります。
例1 「あなたは何に幸福を感じますか」
例2 「あなたにとって大事なことは何ですか?それはなぜですか?」
どうです?文章を書くとしたら何でもありな感じがしませんか?
もちろん、こうした大学を受験する志願者は、こうしたエッセイを書く訓練を受けていたり、宿題でしょっちゅう提出したりしているわけです。
日本における小論文のテーマと比較してみましょう。
例3 「近年のSNSの発達は、人間関係に大きな影響を与えています。あなたの身近な家族や友人など周囲の人との関係に与えた影響を一つ取り上げて、あなたの考えを述べなさい。」
例4 「異文化を理解するということはどういうことかについて述べ、さらにそれがどのように社会貢献につながるかについて、4000字以上5000字以内で論じてください。」
いかがです?
日本のテーマは、すでに問が立てられていて、それにこたえるものが多数派です。
もちろん海外型の漠然として短いテーマの出題もありますが。
例1,2の場合は、テーマから自分で問いを立てて、それについて論理を展開する必要があります。
問いの立て方で、その人の問題意識などが見られます。
着眼点のユニークさも独創性の評価につながるでしょう。
そのためには、まずテーマ内の用語の定義をはっきりさせる必要があります。
例1であれば、「幸福」とは何か、どのような状態をさすのか。しかも、あなたにとってだから、自分というオリジナリティが求められるでしょう。
論じ方として、自分だけが幸福なのは違うという展開もあるでしょう。
そうした、社会的視点もあった方がいいかも知れません。
こうしたエッセイは、当日書くというよりも、何か月かの募集期間に練りに練って提出するものだそうです。
文字数は原稿用紙の日本とは違いますが、はやり数千字レベルだそうですから、日本だったら原稿用紙10枚なので、小論文の域を超えています。
だからエッセイなのかな。
海外と日本のエッセイの評価の違いは明らかだと思います。
海外の場合は、「いったいあなたはどんな人間なの?」という問いです。
入学後は大学にどんな貢献をしてくれる人材なのか、まさにアドミッションポリシーに合致するかどうかが評価のポイント。
だから、どんなに学科テスト(SAT等)の点数が良くても、エッセイがダメなら不合格。
とびぬけてエッセイが優れていたら、多少点数が悪くても合格する場合もあるそうです。
日本の場合は、論述の巧さや文章力など、もう少し技術的な部分が見られているようです。
小論文だけでアドミッションポリシーを問うわけではないという立場ですね。
最近は、日本の高校から直接海外の大学へ進学する学生も増えてきていますから、エッセイ力を磨いたら、日本の受援勉強をパスして留学できるかもしれませんね。
余談になりますが、テーマをインターネットで探していたら、日本の大学でも、このテーマはいいなというのがありました。
日本映画大学の「ラストシーンが印象深い映画を1本選びそれについて述べなさい。そのシーンが印象に残る理由も書きなさい。」という問題です。
さすが、大学名に映画をつけているだけのことはありますね。
羊なら、「カサブランカ」の空港のシーンとか、「ローマの休日」の王女の記者会見シーンとかを取り上げるかな。
もっと、マイナーな映画をチョイスしてユニークさを強調するのもありかも。例えば「ガタカ」で主人公が自ら死を選ぶシーンとか。
日本の学校教育の作文指導では、こうしたエッセイを書く力をつけるのは、難しいかもしれませんね。(羊)