日本財団のレポートを読みました。
タイトルは『家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析』です。
認知・非認知能力とありますが、平たく言えば地アタマや学力、それに社会性や自己肯定感ということです。
学力だけに注目しがちですが、学力を伸ばすには非認知能力が鍵を握るということです。
意欲がない子どもが増えている現状を、将来への希望の格差などとも言いますが、同じこと。
「どうせ、勉強なんかしたって自分には明るい未来なんかない」という諦めがあったら、努力する気力が起きず学力が伸びません。
経済的に困窮していると、10歳すなわち小学4年生以降急激に学力が低下することがわかりました。
それ以下の年齢であれば、学力を大きく伸ばすことが可能ですが、10歳をすぎるとそれがとても難しくなります。
つまり4年生で学力が固定してしまう割合がとても高くなるのです。
一方で、経済的に困窮していても、非認知能力が高い子どもたちの学力は高いという結果も出ています。
したがって、この調査では10歳までの非認知能力、つまり『意欲・自制心・粘り強さ・社会性・自律性』などを高めることが、学力向上につながるという結論を出しています。
家庭の経済格差というと、塾や習い事へかけられるお金の違いと思いがちですが、私の考えでは直接的な教育費の違いではないと思います。
家庭の経済格差が結果的に家庭の文化的環境の格差として表れる傾向が強いことが原因ではないでしょうか。
豊かな家庭の方が蔵書が充実していたり、家庭内の会話の質が高いことが、子どもに強く影響を及ぼすのでは?
子どもは親の言うことは聞かなくても、親の真似はするものです。
本がたくさんあって本を読む家庭の子は、本が好きになります。
家でゲームをよくしている父親の子どもはゲーム好きになります。
経済的に豊かな家庭でなくても、本だけは買ってもらっていたという子どもが学力の高い子どもに育った例はたくさんあります。
ところで、本調査で10歳をすぎると格差が固定してしまうのは、その年令になると家庭の影響よりも友達関係の影響が強くなるからではないでしょうか。
非認知能力の低い集団に属してしまうと、そこから抜け出すのは難しくなります。
友だちがみんな勉強していなかったら、自分もしなくなります。
結局10歳すなわち、つのつく歳までに子どもの意欲や自律性を育てて、同じような価値観を持つ友だちと交われるようにすることが大事なのですね。
これは経済的に恵まれない子どもだけに当てはまるのではないと思います。
鈴木鎮一先生が「人は環境の子なり」と言い当てたのは真理ですね。(羊)