フンダートヴァッサ―と、自然浴 | ERI`sLeaf

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ピアニスト・黒田映李のBlogです。



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怒涛のレッスンウィークが少し落ち着いた先週、
のんびり外出しました。


先日は絵が見たい衝動にかられて、ベルヴェデ-レ宮殿へ。

美術館ならどこでもよかったのですが、トラムでなんとなく移動したらフンダートヴァッサ―展をやっているというポスターが目にとまり、そうだったそうだったとべルヴェデーレ下宮へ向かいました。


辿りついてみると、フンダートヴァッサ―と日本の繋がりについて展示しているものでした。
展示室にはもちろん日本語もたくさん… 不思議な光景。

彼がそんなに親日家で、日本人と交流して作品を残し、何度か来日してそこでも作品を残し、安藤広重の絵画にまで影響を受けているなんて知らなかったです。


ぐるぐると不思議なデザインの中に配置された赤や緑や茶色、それはその絵それぞれの題名に合わせて色味も配置も違います。

例えばアジアの戦争に関する絵の赤は生生しく、まるで血管の中で血が毒々しく循環しているような、今にも破裂しそうな、細胞レベルの嫌悪感を感じるような作品に映りました。
日本のお寺が題材の絵画は、茶色や緑の自然や土の派生にほっこり感を覚え、その上で赤が温かい生命を帯びているような印象を受けました。


‘大きな自転車でフランスの街を駆け抜けている時に、ようやくラインの基礎が頭に定着した‘‘的な「ライン」に関する哲学や、木には全て精霊がいるんだとか、感銘をうけるポイントは絵のみならず、遺された言葉からも溢れ出ていました。

大きな自転車にのってウィーンの路地を右往左往したら、音楽の基礎が頭に定着するかな…とあれこれ考えてみたり。(いやまず、ウィーンで私が自転車に乗ると雨が降る... 。 )

他にも、自然の中に唯一、直線は存在しない… とか。

絵を見つつ、言葉をかみ砕きつつの鑑賞はわりと長くかかり、
今の私に必要な言葉をたくさんもらった気がしました。



べルヴェデーレのエントランス側には上宮が建っていて、下宮までは広くて芸術的なお庭をてくてく歩いて行きます。
展示へ向かう初めてのその道のりには、遠くからは幾何学模様にのみ映っていた緑、植物一つ一つがちゃんと存在していて、この葉のこすれ合う音とか、光の乱射とか、心地よい風を全身で受けました。

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下宮から上宮を臨む…


帰りのその道のりには、フンダートヴァッサ―の芸術論がもう一つしみ込んでいて、行き帰りですっかり癒されました。




べルヴェデーレに辿りつく前、知らない道をふらふら次の目的地へ歩いていると、ユダヤ人記念碑がある広場へ辿りつき、じーっとみている人達に吸い込まれて私もずーっと見ていました。

ウィーンのど真ん中にこういう所があったんだ・・・ と。

色々調べてみると、フンダートヴァッサ―のお母さんはユダヤ系で、ウィーン人のお父さんが早くに亡くなった後、一時期ユダヤ地区の地下室に住んでいたことがあったそうです。ユダヤ人記念碑が建っていた所は当時ゲットーが合った場所で、彼がいたのもその一角だったのかもしれない・・・ 振り返るとそれは、不思議な偶然でした。



この日は色んな事が一つに繋がったような、大切な一日でした。