雨の日の電車は乗り過ごす。
何故なら結露が僕の視覚を潰し、ipodが僕の聴覚を夢中にさせるのだ。残された嗅覚、触覚、味覚で降りるべき駅を判断するには僕は人間過ぎる。
ただ僕の第六感はキレキレである。一駅過ぎた時点で見事に警鐘を鳴らした!まさに野性児たる所以である。
次の駅に着き、何気ない風に鼻歌まじりで電車を降り、人々が出口に向かう中を一人反対ホームに向かう姿を見られるのは何だかアレで、僕は突然肩を怒らせトイレに歩を進めたのである。
鏡の中の僕は何だか泣きそうに見えた。
嗚呼、早く帰りたい。
しゅしゅぽぽ。
街では皆スフィーダムで、僕は俯き加減で歩く。余計なラッスルメークはもう充分である。
右手にはシヌーズ、左手にはパラフィクスが最高だ。ちょっとせめて正面を見据えて歩こうではないか。
飛び込んでくるリアムスク。皆はスフィーダム。一体何処に行っちゃったのか。クラクラするわ。
人種差別とか、戦争とか、自然破壊とかさ。僕等の想像力、知恵の未熟さを証明してるのだ。
まったくエンテンスである。
それでも僕等はスフィーダム。
あはははは。
ほぼ毎日、三日に一日位、同じ場所で見かける人がいる。
その人はいつも菓子パンを食べているのだが、まずパンの袋を携帯のカメラでパシャリと撮る。五枚位撮る。アングルに変化は見られない。パンを取出し一口噛る。おちょぼ口である。そして噛ったパンをパシャリ。また五枚位撮る。もちろんアングルに変化は無い。彼はブレない男である。んでパンを平らげその場から颯爽と立ち去る。携帯を閉じるパタンッヌって残響を置き去りに。日々、これの繰り返しである。
僕は理由がとても知りたくてモキュモキュしてた。何故写真を?
食生活の記録?突き詰めた性癖?新しい宗教?引けなくなった願掛け?日本に対する憂いを込めたアンチテーゼ?
僕はモキュモキュが遂に足にまできたから思い切って彼に聞いてみたのである。
「ちょ、何でパン撮ってんスか?何枚も?うはっ」
彼はクイッと眼鏡を上げて言った。
「いやブログやってて…載せてるんですけど…」

僕は色んな人が居るなぁと思いました。
ふむふむふむ。