【Dysferlinopathyの治療基準】 | 日本ディスファーリノパシー患者会

日本ディスファーリノパシー患者会

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2022年に「Dysferlinopathyの治療基準」に関するオンライン会議が開催されました。

このオンライン会議には、3 人の患者代表と2人の患者擁護者を含む13か国で、神経筋疾患、心臓病学、呼吸管理、理学療法、遺伝学の専門家の34人が参加しました。

 

この会議は、Dysferlinopathyの臨床結果研究(The Clinical Outcome Study in Dysferlinopathy)からの収益の普及について以下の項目に焦点を当てて話し合われました。

1.診断と遺伝学

2.運動機能と運動

3.心臓、呼吸器、および緊急および外科的ケアに関する考慮事項

4.妊娠、免疫、内分泌、栄養に関する考慮事項

 

2021年1月には「ディスファーリノパシー国際臨床アウトカム研究(COS)」における三好型筋ジストロフィーと肢帯型筋ジストロフィー2B型(現:LGMD R2)の患者168人の臨床診断との間の人口統計学的・MRI・機能的および遺伝的差異を比較して、それらが異なる臨床表現型であるかについての論文が報告されました。この研究は、JainFoundationが資金提供をして8か国15施設からDysferlin遺伝子異常の患者さんが参加しています。

「Miyoshi myopathy and limb girdle muscular dystrophy R2 are the same disease」

 

以下は「論文のハイライト」を翻訳したものです。

1.ディスファーリノパシー診断の初期にその後に起こってくる筋力低下のパターンを予測することはできない。

2.ディスファーリノパシー患者集団の筋力低下のパターンは、異なる2つのサブグループとはならず、ひとつのオーバーラップする「連続体(その中のどの点を取ってもその近くの領域と明確に区別できないような広がり)」となる。

3.MM(三好型ミオパチー)はヨーロッパやアメリカよりも日本で一般的な診断名であるが、患者は遠位筋でより筋力低下を示すのではない。(参加者全体 LGMDR2:114 MM:54 / 日本 LGMDR2:4 MM:9)

4.臨床試験のために患者をMMとLGMDR2のサブグループに分けるべきではない。

 
同じDysferlin遺伝子異常で発症する筋疾患を臨床病状(初期症状)で区分することで、様々な問題を抱えています。このままでは、日本は国際共同治験に参加することは出来ないと思います。治療法治療薬を待っているだけでは、治療を受けることは出来ません。

指定難病や様々な問題を解決するには、多くの同病の方のご協力が必要になります。

 

 

追伸

1) 筋病理診断で三好型は肢帯型筋ジストロフィーR2/2Bと同じ筋ジストロフィーに区分されますが、現在のところ三好型は遠位筋優位のミオパチーの総称である遠位型ミオパチーに含まれています。ですが、仮に三好型を遠位筋優位とするならば遠位筋優位の筋ジストロフィーの総称である遠位型筋ジストロフィーに三好型を含めなければ筋病理学的にも医学的にも無理があります。

 

2) 筋病理診断では、筋ジストロフィーの変化( 筋線維の壊死、再生、結合組織の増加 )に加えてディスファーリン抗体(Dysferlin)を使って生検筋の免疫組織検査を行いディスファーリン欠損と診断され臨床病状(初期症状)にて診断名が遠位型ミオパチー又は肢帯型筋ジストロフィーでは除外診断になるので、研究・臨床試験・治験に参加することや治療を受けることは出来ません。

 

3) 血液検査(CK値など)・心電図・肺活量・CT検査・MRI検査・筋電図検査・骨密度検査・ 筋病理検査(筋生検)での診断名が三好型筋ジストロイ―・肢帯型筋ジストロイ―R2/2B・Dysferlinopathyだとしても除外診断になるので、研究・臨床試験・治験に参加することや治療を受けることは出来ません。

 

4) 筋病理診断では、筋ジストロフィーの変化( 筋線維の壊死、再生、結合組織の増加 )に加えてディスファーリン抗体(Dysferlin)を使って生検筋の免疫組織検査を行いディスファーリン欠損(dysferlin)と診断され臨床病状(初期症状)にて診断名が三好型筋ジストロイ―又は肢帯型筋ジストロイ―R2/2Bと血縁関係のある兄弟姉妹でも疾患名が異なるケースが有ります。血縁関係のある兄弟姉妹ならば、遺伝学的検査でも原因遺伝子・病的バリアント・治療法・治療薬は同じなので検討が必要だと思います。

 

5) 遺伝学的検査にて原因遺伝子であるディスファーリン(dysferlin)同定していなければ確定診断を受けたことにはなりません。確定診断を受けなければ、ディスファーリノパシー(Dysferlinopathy)の研究・臨床試験・治験に参加することや治療を受けることは出来ません。

 

6) 「平成27年度 第1回 厚生科学審議会 疾病対策部会」では「今度は1回目の指定疾患に入っていた30番の遠位型ミオパチーという中に三好型が入っているわけです。これは、昔、研究費をもらうときに遠位型ミオパチーという名前にしないと、難病にまとめられないということで無理に入れたという経緯もあるのですが、これは遺伝子から言っても、もともと筋ジストロフィーと同じものです。」と報告されています。

即ち、三好型を遠位型ミオパチーに含めた件に関して医学的な根拠は無いと言うことです。

 

7) ディスファーリン遺伝子(dysferlin)が原因で発症する筋疾患は「難病患者に対する医療等に関する法律(難病法)」にて筋ジストロフィーと遠位型ミオパチーに区分されたことにより、三好型筋ジストロイ―と肢帯型筋ジストロイ―R2/2Bは公的研究費(難治性疾患政策研究事業・障害者政策総合研究事業・科学研究費助成事業研究費・難治性疾患実用化研究事業・その他の公的研究費)や医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬、先駆的医薬品等指定制度、臨床試験、治験などの申請は個別にしなければなりません。しかし、元々患者数が少ないので個別に臨床試験・治験を行うことは現実的には困難なのが実情です。

 

8) ディスファーリン遺伝子(dysferlin)が原因で発症する筋疾患は「難病患者に対する医療等に関する法律(難病法)」にて筋ジストロフィーと遠位型ミオパチーに区分されたことにより、血縁関係のある兄弟姉妹でも臨床病状(初期症状)にて三好型筋ジストロイ―と肢帯型筋ジストロイ―R2/2Bと疾患名が異なるだけで臨床試験、治験、治療には共に参加出来ず大きな隔たりが生まれてしまいます。

 

9) ディスファーリン遺伝子(dysferlin)が原因で発症する筋疾患は「難病患者に対する医療等に関する法律(難病法)」にて筋ジストロフィーと遠位型ミオパチーに区分されたことにより、第4条第1項に基づいた「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」での十分な難病対策を受けられません。このままでは、正確な患者数の把握、診断基準や重症度分類等に係る臨床情報や指定難病患者データを適切に収集し指定難病患者データベースを有効活用することは不可能です。その為、全てのディスファーリン遺伝子異常の患者さんを対象にした研究の促進や難病対策、早期の治療法や治療薬の確立を望むことは出来ません。

 

10) 2017年、本会の要望が日本医学会医学用語管理委員会にて審議され以下の疾患名が採用されました。しかし、ディスファーリン遺伝子(dysferlin)が原因で発症する筋疾患は「難病患者に対する医療等に関する法律(難病法)」にて、筋ジストロフィーと遠位型ミオパチーに区分されたことにより、医師が記載発行する診断書、電子カルテシステム、医療保険請求システムなどの情報の整合性は取れず迅速かつ正確な事務処理をすることは困難で、患者さんに正しい疾患名や医学情報を伝えることは困難です。

「一般財団法人医療情報システム開発センター 標準病名マスター作業班」

1.ディスファーリノパシー  2.三好型筋ジストロフィー

「診療報酬情報提供サービス 傷病名マスター」

1.ディスファーリノパシー  2.三好型筋ジストロフィー

「日本医学会 医学用語辞典」

1.英語名:Dysferlinopathy   2.日本語名: ディスファーリノパシー

 

 

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