今回は少しだけ昔話を交えながら医療の話をします。
みなさんは「コロナウィルスでなぜ人は死ぬのか?」もっと言えば「なぜ人は医療を受けても死ぬのか」と考えてみたことはありますか?
“そりゃ死ぬときは死ぬでしょ。”と言ってしまえば簡単です。
でも考えてみてください。
どんなに重症でも医療の力で回復する人と、医療を受けても亡くなる方がいるのはなぜでしょうか?
考えてみると良く分かりませんよね?
今日はそのことについてお答えしていこうと思います。
それでは今回も、よろしくお願いいたします!
【目次】
1.研修医の頃、僕の疑問
2.高度な現代医療
3.炎症が人を死なせる
【1】研修医の頃、僕の疑問
研修医として現場に出た頃、僕には大きな疑問がありました。
それは
「人はどうして死ぬんだろうか?」
ということです。
これは全くふざけていなくて、本当に不思議でした。
医療者は学生の頃に「バイタルサイン」という言葉を学びます。
直訳すると“生命の兆候”という意味ですね。
具体的に言うと
があります。
僕たちが教わるのはこうです。
“バイタルサインが0(ゼロ)になると人は死ぬんだよ。”
確かにそうです。
体温が0、血圧が0、脈拍が0、呼吸が0.
分かりやすい。
でも、だからこそ疑問です。
例えば血圧を上げる薬があるなら血圧が低くて死ぬことはないし、ペースメーカーがあれば脈拍は0にならない。
人工呼吸器があれば酸素が足りなくて死ぬことはない。
「それなのにどうして人は死ぬんだろうか?」
とそれが分からなかったのです。
【2】高度な現代医療
現代医療は非常に高度です。
肺や心臓、腎臓の代わりをする機械があるので、理論的にはそれらの臓器が動かないからと言ってすぐに命を落とすようなことはありません。
僕が循環器内科として働いている頃、心臓が止まっていても人工心臓を使って生命維持している人を何人も担当しました。
例えばコロナウィルスの重症例は肺炎です。
肺炎では肺の空気交換が上手くいかずに酸素不足になります。
対応策としては
という順になります。
*この点に関しては前回の記事で詳しく解説しています。
いずれにせよバイタルサインを保つ方法があって、臓器の動きの代わりを出来るならばほとんど人は死なないのではないかと僕は思ったのです。
【3】炎症が人を死なせる
ではなぜ、高度医療を施しても人は死ぬのか?
これは「炎症」によるものです。
例えば感染症などは分かりやすいのですが、熱が出たり頭痛がしたり、こんな時は身体に炎症が起きているわけです。
ただ、実は「炎症」という言葉はとても幅が広くて、それこそ脳梗塞だったり怪我だったり、様々な異常で体に起こります。
そして「炎症」の程度が重症であるほど、そして本人の体力が少ないほど、炎症が全身に拡がります。
全身に拡がった炎症はバイタルサインを悪化させます。
つまり、その時点で敵は
の2つに増えているのです。
この炎症を抑える治療は色々と試されていますが、なかなか明確に「いい」と言える治療がありません。
そのため、結局はもともとの病気(原疾患げんしっかんといいます)の治療が最も効果的だということになります。
最後に話をコロナウィルスの場合に移しましょう。
みなさんもご存じの通り、現時点でコロナウィルスを根本的に治療する薬は開発段階です。
つまり、最も大事な原疾患の治療が出来ないため、炎症が全身に拡がった時に非常に分が悪いわけです。
逆の見方をすれば、原疾患の治療薬が出来れば救われる人がたくさん出てくるとも言えます。
ですから、治療薬の開発には大きな意味があります。
【最後に】
今回はこれからの「なぜ人は高度医療を受けても死ぬのか」について書かせて頂きました!
炎症が強いこと、体力が少ないことによって炎症が全身に拡がることが人の命を奪う大きな理由の1つです。
対処法は原疾患の治療となります。
今回も読んでくださってありがとうございます!
どなたかの役に立てれば嬉しいです!
またよろしくお願いします!