駅に着くと旦那が待ちかねたように、しかし前日の事など何も無かったかのように近づいてきた。
私は少し旦那を睨んでいたんだと思う。
旦那は私の機嫌を伺う様子を見せながら、でもいつものように威張りながら私に言った。
「今から大阪行くから着いて来い」
私は前日から旦那が何をしたいのかさっぱり判らなかった。
でもとりあえず着いていく事が旦那を問いただすより早い気がした。
切符を買い、改札をくぐり、電車を待った。
とても話をする気になれなかったので、無言のまま一時間で目的地に着いた。
そこは私の認識では危険地区だった。
こんな所に足を踏み入れる事になるとは・・・と思っていた所にこんな形であっさり入ってしまった。
ある意味その数年前、浮浪者と同じような生活をしていた私たちには、そのままの生活を続けていればソコで生活する羽目になるんだろうね、なんて話に出ていた場所だった。
何故こんな所に来るのか。
旦那は改札を出て、知っている町かのように歩き出した。
大通りから細い路地に入り、全品60円の自動販売機とか、お弁当が100円のお店の横を抜けていく。
不思議な世界だった。まるで異世界。
その町全体が居空間で、そこだけ日本じゃなくて、アジアな香りすらする。
通る人の服は全て茶色や肌色で、原色なんて全く無い。
それが手伝って町全体が砂色で、錆びれた空気が充満していた。
こんな状況で入っていなければ、怖いと思ったか旅行のようで楽しかったかのどちらかだと思う。
その時はそのどちらでもなく、ただ不安で不快だった。
細い細い路地の突き当たり、古い長屋の中の一つの部屋の前で旦那が立ち止まった。
見たことも無い鍵をポケットから出し、鍵を開けた。
ガラガラと横開きのドアを開けると、狭い玄関に自転車が詰め込まれていた。
どうやって上へ上がれば良いのか分からない位狭い玄関を旦那は器用に上がっていった。
私はココがドコなのか、誰の家なのか理解できずしばらく呆然としていた。
旦那が「上がれよ」と言うので、狭い玄関に体をねじり込ませて中に入った。
六畳ほどの部屋の奥に小さい台所があり、その横にトイレがあった。
風呂は無かった。
トイレは三角形の形をしたスペースに和式の簡易水洗で、上から紐が垂れ下がり、それを引っ張ると水が流れる仕組みだった。
後々古い家のトイレに昔よくあったものだと判ったが、その時は知らなくてこんなものがこの国にある事が不思議だと思う位だった。
物凄く誰かの生活痕がたっぷりある部屋に旦那に通された時、私はきっと思考停止していたのだろう。
ボーっと部屋を見渡す事しか出来なかった。
ただ立っているだけで旦那が怒鳴る。
とりあえず座っていると旦那が何か言いたそうだったので私から質問する事にした。
私「ココはドコ?」
と聞くと、住所を言われた。
私「いや、そうじゃなくて・・・ココは何?誰の家?」
旦那「・・・・・・・・・俺の家」
私「(゚Д゚) ハア??」
勿論旦那の家じゃない。
よくよく聞くと、前日ココに泊まったらしい。
私「ココは誰の家?」
旦那「オバハンの家」
私「オバハンって誰?」
旦那「メル友のオバハン・・・」
( ・ω・)何?
私「その人とはどういう関係?」
旦那「肉体関係」
一分の沈黙
私「死ね・・・」
旦那「嫌」
一分の沈黙
旦那「
お前が●×■△$&%★・・・
」
何だか逆切れされた。
私は勤めて平然を装った。
しかし逆切れしてこうなったのは私のせいだと言われ、数分で泣き崩れてしまった。
旦那はいつも威張り散らすし、ワガママを通そうとするし、すぐキレルけれど大抵私が本気で泣いたら慰めようとするのだった。
私の頭の中では「浮気相手の家に私を連れ込んで何がしたいん?怒るのは私がする事やのに何でアンタが怒るの?こんな状況で平然とできるわけが無いやん!!私まだ21才なんだよ?あんたの方が17才上の癖に、何でいつも私ばっかり我慢せなあかんの?」等、今でも同じような思考になる事があるんだけれど、いつも思っている事がドバーっと頭の中に溢れてきて止まらなかった。
私が泣き出すと、旦那は突然静かになり私の頭を撫でてゴメンと言った。
冷静なような、冷静でないような感じだけど実際冷静ではなかったと思う。
でも人間って慣れるんだ。
今でもそう思うけれど、どんな状態でどんな状況であろうとも、時間や日数を重ねて経験すると「慣れ」るものなんだ。
私は一日でその環境に適応してしまった。
自分の適応能力にビックリしながらも、翌日には私はその居空間な町を楽しみ始めていた。
旦那から失踪一日目の話も普通に聞くことが出来た。
旦那は仕事中の私に電話をし、折り返しすぐに連絡が来ることを待っていたらしい。
しかし私は仕事中だったので電話をする事が出来ず一時間位後のお昼休みになってから電話を掛けた。
その時にはもう彼は別の作戦に出ていたのだった。
私からの電話を待ちながら30分くらいで業を煮やし、メル友に「寂しい」とメールしたらしい。
そう、旦那は寂しかったのだ と本人が言っているのでそういう事にしておく。
メル友数人に同じようなメールをしたが殆ど学生の為学校に行っていてすぐに返信が無かった。
私が昼休みのなり、電話をした頃旦那は拗ねていて電話には出てくれなかったらしい。
それから30分程たった頃、一人のメル友からメールがあり、会おうという話になった。
その間にも私とのメールで書いていたようにレンタルビデオショップや、トイザラスなどにフラフラ立ち寄りながら、メル友とメールをしていたのだ。
旦那はお金を持っていなかったので、大阪から自宅最寄り駅までメル友に迎えに来てもらい、彼女の家に行った。
私が心配で寝れない時間を過ごしている間、旦那はメル友と寝たのだ。
慣れたとは言え、落ち着いていたのは少し精神的負担が大きすぎてイッちゃってただけだし、そんな話を聞くとやっぱり心が痛かった。
でももっと痛かったのは肉体関係になったメル友の年齢を聞いた時だった。
旦那はゴソゴソと引き出しを漁りって保険証を出してきた。
勿論メル友の保険証だった。
生年月日が書いてある。
私は吐きそうになった。
私の母は昭和28年生まれ。
メル友は昭和26年生まれだった。
!(´Д`;)
私の母親より年上・・・
_| ̄|○、;'.・ オェェェェェ
↑となったのは旦那の方だった。
なんと保険証を見るまでもう少し若く言われていたらしい。
世の中には熟女好きな人もいるだろうし、吉永小百合さんみたいな人なら女として、女だと思う。
しかし周りを見渡そう。
普通のオバサンは普通のオバサンなのだ。
うちの母もある意味女を逸脱した存在になっている。
世の中は広いから、確かに綺麗な人は存在するけれど、熟女の請いセックスを否定する気は無いけれど、私の旦那が(この頃はまだ結婚していなかったのだけど)自分の母親より年上の人とセックスした。
しかもその時私が座っている布団の上で・・・
誤解を恐れず書いているけれど、本当に心底ショックでした。
またそのうち書こうと思うのだけれど、この話より以前に旦那の元彼女の存在が度々出てくる時期があった。
その彼女も私より、彼より年上の人だった。
旦那は極端なロリコンなはずなのだけど、同時にマザコンでもあった。
でも相手は年下の方が、私的には救われる。
とりあえず話しを聞き、最後に一番気になっている事を聞いた。
その家に二日間居着いてて今更な話だったが。
「そのメル友は今どこに居るの?」
すると旦那が
「奴は今中国に旅行に行ってて一週間帰ってこない。留守番を任されたからお前呼んだんや」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
呼ばないで(;´Д`)ノ
そのメル友が帰ってくるまでの一週間、私は旦那と一緒にその家に居た。
ご飯は近所の100円弁当で済ませた。
風呂は近くの銭湯に行った。
その家には猫が一匹居たので、そいつの世話もした。
実家から電話やメールがあったが、さすがに状況が状況なのでどう言い訳しようか考えている間に日にちが経ち、妹にだけとりあえず生きている事を伝えた。
メル友が帰ってくる予定の日、午前中にこれからどうするか話し合いをし、メル友から日本着のメールを受信してからその家を出た。
旦那はメル友が帰ってくるのを家で待つといった。
止める気にも、メル友と対立する気力も無かったので私は一週間ぶりに実家に一人で帰った。
旦那との話し合いの時、今回の浮気は自分が悪かった。本命は(本命と言われてもあまり嬉しくなかったんだけど)お前だけやから許してくれ。今日メル友が帰ったら事情を説明して家に帰るから と言われた。
許すとか許さないという話では無いと思ったので、私は特に何も言わずに旦那をその家に残してきた。
次の日、旦那は家に帰ってきた。
私はバイトを首になった。
一週間無断欠勤だったので当然だった。
旦那は喜んでいた。
私が働くこと、私が働いている間の時間実家に一人で置いていかれてる状態が嫌だったらしい。
今回の騒動で私のバイトが首になることは計算済みだったらしい。
きっと一つ一つはよく考えての行動では無いのだと思う。
しかし旦那の帰宅から一週間後、また旦那は家出をした。
家出をして行った場所は、またしてもあの家だった。
