現場と会議室 | 蘭野球事始 〜オランダ野球風聞書〜

蘭野球事始 〜オランダ野球風聞書〜

自称日本一オランダ野球に詳しいブロガー。オランダ代表から国内リーグホーフトクラッセのことまで紹介していきます。オランダ野球の魅力が伝われば幸いです。 twitter(@macchakiromen)

 「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」


 

 人気映画シリーズ、踊る大捜査線で、こんな名台詞があります。この台詞をふと思い出した時に、海外の野球を追う人達の中にも、現場派と会議室派が存在するのではと感じたのです。


 現場派は、実際に海外まで足を運び、現地の雰囲気を肌で感じ、人々と触れ合う。そして、そこで得たものを写真という形で、外へ向けて発信していく人々。

 会議室派は、現地には行かない。身は日本に置いたままで、ネットサーフィンをし、心だけを海外に置く。そして、文章を綴ることで、海外の野球を知らない人へ発信する、という人々。
 一概に、海外の野球が好きな人々をこの二つの型に当て嵌めることはできませんが、今回に限りご了承ください。


 現場派のひとつの特徴としては、写真を撮るということです。僕がオランダ野球に興味を持ち始めた頃、一番見たかったのは写真か映像でした。やはり、良くも悪くも人間が一番発達させた感覚は、視覚というもの。目で見るのが最もその場の雰囲気や状況が伝わりやすいものであります。特にスポーツとなると尚更です。海外の野球に興味を持ち始めた人たちにとって、その国の野球の位置や距離感を掴むのに一番手っ取り早い資料が写真と言えます。

 しかし、写真や映像から得られるものには限りがあります。僕がオランダ野球にどっぷりハマるきっかけとなったのは、世界の野球を対象にした有名なブログ。自分の興味がある国は一体どんな団体が野球をやっていて、どんな形式で野球をやっているのか。その国における野球の歴史、現状、国際大会への姿勢や強さ、その他たくさんのことは他者を介して知るほかないのであります。そこには文章の力は不可欠。筆者の文章力や表現力によって導かれる事も有りましょう。言葉もまた、人間が最も発達させた能力の代表であるのです。





 話は変わりますが、私は歴史学を学んでおります。歴史を研究する上において、最も重要なのはいい資料に出会うことです。そして、歴史資料は大きく一次資料と二次資料とに分かれます。大久保利通研究に例えると、利通本人が書いて他者を介していない一番信憑性が高いとされるのが、大久保利通日記。一次資料です。一方、後世の学者が大久保利通に関連する史料を集め、ほかに先立って研究されたものが大久保利通伝。二次資料です。歴史学の研究においては、これら双方をうまく活用しなければなりません。一番純粋性を持ち、自分の考察を進めていけるものは一次資料でありますが、同時に先行研究にも依拠しながら、先人たちの成果に沿いながら、それを超克していかなければならないのです。


 言うならば、事件を解決に導くには現場と会議室が協力しなければならない。海外野球における、一次資料・写真を扱う現場と、二次資料である文章を扱う会議室がタッグを組むことで、事件は解決に導かれるのです。


 



 先日125日、東京で『世界の野球写真展×旅』というイベントが開催されました。このイベントの主催者は若杉雅也さん。世界8カ国を旅して各地の野球を撮影してきた、現場派代表とでも言うべき人物です。かれは今回の写真展で自分が撮影してきた写真を展示することはもちろんですが、海外の野球に精通する人々から写真と文章を提供してもらい、同じくそれを展示しました。このイベントにおいて、ついに写真の力と文章の力が結集されたのであります。現場と会議室がタッグを組んだと言っても過言ではありません。

 

どうして今回、こんな訳のわからないような例えを出したのかというと、僕の真意はただこのイベントが前代未聞で非常に意義のあるイベントである、ということが言いたかった。それだけにあります。海外野球好きにとって、事件の解決がどんなものを指すのかはわかりません。しかし、今回の現場と会議室が協力し、一つものを作り上げることができたとういことは大変意義深いと思います。

そして、若杉さんの勇気、行動力がこれを成し遂げました。これまで今回のようなことは一度もなかったのではないでしょうか。ここに、写真展の大成功にお祝いを述べるとともに、感謝の意を込めて賞賛したいと思うのであります。










【追伸】

 では、私はどちらに属するのかと考えました。が、どちらかに属するほどの写真も文章力も備えておりません。このブログでも、拙い文章を補うために、今後は写真を閲覧出来るリンクを極力載せていこうと思っております。

 

そして今回、私も文章と写真を提供することで、写真展に参加させていただきました。

以下、提供した文章と写真を掲載しておきます。




①アムステルダム・オークメールスポーツパーク(Ookmeer Sportspark)

 オランダリーグホーフトクラッセの強豪L&Dアムステルダムパイレーツの本拠地。西アムステルダムに位置する。


②アムステルダムの観客


 プレーオフのある一戦にて。一つ一つのプレーにみんなが一喜一憂。右上の部屋にはDJや記録員が座る。


③ベルケンボスフ対フェルトカンプ

 打席のベルケンボスフ昨季打率.359。投手のフェルトカンプは防御率1.7690敗。



【オランダ野球の魅力】


 実は、オランダは野球の強豪国です。近年は、2011W杯優勝、2013WBCベスト4。国内リーグは8チームが全42試合を戦います。こうした限られた試合数の中で、非常に熱い魂を込めたプレーをするのが魅力の一つです。また、選手と観客の距離が非常に近く一体感があるのも魅力です。動員数は少なくても観客の熱さ・野球への愛は負けません。特に、オランダ主催の国際大会では顕著です。三つ目の魅力としては、国際大会での快進撃です。格上の国に勝利したり、劇的な勝ち方をする。野球好きには堪らない魅力ではないですか?


○プロフィール 松﨑晃平

1994212日生まれ 福岡県久留米市出身


小学から高校まで野球をプレー。オランダ野球との出会いは2009WBC。オランダが2度も強豪ドミニカ共和国を破ったことに衝撃を受ける。最も影響を受けたのはブログ『世界の野球』。2度現地を訪れ、野球を観戦する。現在は熊本大学で歴史学を学ぶ傍ら、オランダ野球を追っている。ブログ『蘭学事始~オランダ野球~』twitterアカウント(@macchakiromen)