彩海(あやみ)との出会いのきっかけは、ゲームアプリで、彩海はハンドルネームだった。同じゲームが好きで、ネット上ではしょっちゅう話していた。まったくの偶然だが住んでいた場所が近くだった。一度会いたいと思い始め、思い切ってメッセージを送ると、彩海も会いたいと言ってくれた。カフェで待ち合わせ、彩海と会った。彩海は想像していた通りの雰囲気の女性で、思いっきり美人ではないが、表情豊かで笑顔がとても可愛い20歳くらいの女の子だった。彩海の俺に対する印象も悪くないようだった。ネットでの会話とまるで違和感がなく、初めから気が合った俺たちは、話が弾み、食事した後、そのままラブホに入ってしまった。ヴァーチャルからリアルに会った女性は今まで3人ほどいたが、会ったその日にラブホまで行ったことは一度もない。こんな小説みたいなことがあるんだ……。彩海とセックスした後、不思議な感慨を覚えながら、煙草をふかしていた。
「本名教えてくれる?」
「いいじゃない、本名なんてどうだって。私、どこへも行かないから」
彩海はそう言うと、俺の胸に顔を埋めた。
そんな可愛い仕草を見ると、本名なんてどうでもいいかという気になってしまう。
俺は彩海を抱きしめ、そのポテッとした色っぽい唇に口づけた。
帰り際に俺たちは、次に会う日を約束した。
ひとつだけ気になったのは、彩海のスマホに電話が掛かってきたことだった。
会話はほとんどなく、彩海は2,3回相槌を打った後、
「うん、わかった」
と言って電話を切った。
直感的に相手は女ではなく、親しい間柄の男ではないかと思った。
彩海の私生活をまったく知らない俺は、男がいても仕方ないと思っていた。だから電話の相手が誰かなどと聞かなかった。嫉妬深い男だと思われるのも嫌だったし。彩海も俺に彼女がいるかなんて一度も聞かなかった。もし聞かれても彼女はいないので、「いない」と言う他はない。
そして何度か会ううちに、俺はますます彩海のことが好きになっていった。体の相性も申し分なかった。彩海の体を他の男に触れさせたくないという独占欲が沸きあがってくるのを感じていた。自分では嫉妬心や独占欲は強くないと思っていたのだが、どうしたことだろう。意外と自分のことは解らないものなのかもしれない。
そして、時折彩海のスマホに掛かってくる電話が気になりはじめた。いったい誰なんだ?
(続く)
