雪合戦 | 秋 浩輝のONE MAN BAND

秋 浩輝のONE MAN BAND

はじめに言葉はない

数年に一度しか雪が積もらない温暖な地域なのに、ある年のその日、珍しく5cmくらい雪が積もった。小学4年生だった僕は近所の友だち7人と、僕の家の前にある広場で、はしゃぎながら雪合戦に興じていた。ところが、誰かが投げた雪玉が僕の家の窓ガラスに当たり、「ガチャーン!」と音を立てて、ガラスは割れてしまった。家に居た母に、みんなで詫びを入れにいった。母は、怒ることなくニコニコしながら言った。

「ちゃんとみんなで分担して、弁償するのよ」

誰が投げたのかは分からないが、こういうことは連帯責任だ。僕たちはみんなでガラス屋に行き、同じガラスを注文した。ガラス代は800円くらいだった。8人いたから、ちょうど1人100円ずつだ。小遣いは必要な時以外はくれないのが家の方針だったので、母に頼み込んで、ガラス代を出してもらった。

 

ところが後日、友だちのうちの1人の母親が、うちに文句を言いに来たそうだ。

「子供に話を聞くと、お宅の窓ガラスに当てたのは、うちの子が投げた雪玉じゃないそうです。なので、うちは払う必要はないと思いますが」

なんてせこいことを言う母親だろう。たまたまその時、父が居て、その母親を叱り飛ばしたらしい。

「あなたは『連帯責任』という言葉を知らないんですか。一緒に遊んでいた時に起こったことは、みんなで責任を取るということを教えるのが親の務めじゃないんですか?」

母親は何も言い返せず、不満げな顔しながら帰っていったらしい。たまには親父もいいことを言う。その友だちは、どこかずるいところがあるヤツで、みんなから嫌われていた。『この親にして、この子あり』という諺は、その時覚えたのである。