今回のクールの中でボクが一番面白かったと感じたのは、
『獣になれない私たち』だった。
最終回の前の回で、
深海晶(新垣結衣)と根元恒星(松田龍平)は、
傷を舐め合うように肉体関係を結んでしまうが、
朝方、帰途につきながら、晶は自問自答するように呟く。
「間違った?」
『飲み友だち』だったはずのふたりが、
互いに弱っている時とはいえ、
ちょっとしたハズミで肉体関係を持ってしまった。
そのことに対して、晶は呟いたのだろう。
最終回、ふたりはそれぞれの問題に立ち向かう。
今まで言いたくても言えなかったことを言い、
今までやりたくてもできなかったことをやってしまったのである。
晶はパワハラ社長に立ち向かい、
言いたいことをすべて言ったあと、退職届を提出、
恒星はクライアントの粉飾決算に加担していたことを税務署ですべて明らかにし、
粉飾関係者を一発殴ったあと、事務所をたたんだ。
ふたりの将来は何の希望もなかったが、
互いの相似点を確認、理解し合って、一緒に前に進もうとする。
最終回の前の回まで、
晶はまったく笑顔を見せることはなく、
恒星は厭世的な態度で他者を皮肉るばかりだった。
周りを取り巻く人間もクズのような人間ばかりで、見ていると腹が立ってくる。
そのしつこさにうんざりして観るのを止めた視聴者もたくさんいたようだ。
絶望的な描写ばかりで、まったく夢を見せてくれなかったからだ。
案の定、視聴率も悪かったらしい。
多かれ少なかれ、我々は晶や恒星と同じような目に遭いながら生活をしている。
結局、人間関係や自分のポジションを守りたいがために、
なかなか本音が言えないからストレスが溜まるわけで。
でも、何かを突破口として現状を突き破り、嫌な流れを断ち切りたい。
このドラマは最後まで観ると、その勇気を与えてくれる。
それは愛する人がいつも横にいてくれるという儚い幻想もあっての話だけど。
午後4時に鳴るという鐘の音を聴きにいったふたり。
晶は恒星の手を取り、その瞬間を待つ…
晶の腕時計が4時を回り、
すべての雑音が閉ざされた中で、
一瞬、鐘が揺れたところでフィニッシュ!
鐘は鳴ったのか、鳴らなかったのか、
それは視聴者の心もちに委ねられたのだろう。


