パンドラⅣ AI戦争
いまwowowでやっているドラマである。病気の診断をAIがするとどうなるのか…医師はAIとどうつき合っていくべきなのか、そこで起こりうる様々な問題、トラブルなどを描いた近未来の話で、なかなか面白いストーリーだ。医療用AIを開発した医師の向井理、医師ではないが代表の渡部篤郎と、AIを否定する医師たち、黒木瞳、原田泰造、弁護士の三浦貴大らとの対立が描かれる。山本耕史はジャーナリストでことの成り行きを冷静に観察している立場だ。パンドラの箱を開けると、いったい何が出てきたのか…? 「AI戦争」というサブタイトルは違和感がある。そうじゃないだろう。
向井は子供の頃、父親を誤診で亡くした。だからミスのない医療を目指し、必死に医師になるべく勉強してきたのである。だが、人間は完璧ではない、ミスをする動物だと悟った向井は、ミスをしないコンピュータ…AI(人工知能)を開発した。金儲け主義の野心家である渡部篤郎の協力を得て、病院にAIを導入する。ある患者がAIの診断結果をもとに手術をするが、患者は亡くなってしまう。遺族は病院を訴えるが、渡部は金の力で訴訟を取り下げさせた。向井は、AIの診断ミスではなく、外科医原田泰造の判断ミスに問題があったと考えているが、訴訟にはならなかったので、死亡原因は明らかにはされていない。
ある時、渡部は自らAI診断を受けたが、心臓に穴があいており、余命2年という結果だった。ショックを受けた渡部は、向井が提案した治療を拒絶し、最後の命の炎を燃やすべく、シビアな病院経営に乗り出し始めた。まずは医師減らしからだ。スキルの低い何人かの医師にメールで解雇を通達する。当然、医師たちはみんな反発し、不当解雇だと訴訟を起こそうとするが、医師と病院の間に交わされた契約書の条件により、解雇は不当ではないと弁護士は判断、訴訟は起こせなかった。当然、渡部はすべてを熟知したうえで出した通達だった。向井は医師の気持ちも理解し、解雇するべきでないと渡部に訴えたが無駄だった。そして、向井と一番仲が良く理解者だった医師が、自身も解雇を通達されると、突然向井に反旗を翻した。馬乗りになって酷い暴力をふるい、向井は意識不明の重体に……?!
といったところが、今現在までのストーリーである。この話がどう着地するのかは解らないが、「重さ」と「問題意識」を失わないでほしいと願っている。脚本は井上由美子だが、剛柔なんでも書ける才人だと思う。今回は硬派な「社会派ドラマ」である。そういえば、医学界の暗部を描いた「白い巨塔」の脚本も井上だった。
他の医師たちに嫌われている向井はコミュニケーション能力が低く、AIに執着し過ぎたパラノイアには違いないが、決して悪人ではない、気持ちは純粋だ。AIが出来ることと医師が出来ることを完全に分けて効率化し、ミスのない医療を目指しているのである。だが、他の医師たちは自分のポジションをAIに奪われることを恐れ、一切認めようとしない。まぁ、でもこれは仕方のないことかもしれない。医師とはいえ人間だし、ほとんどの人間は自分が一番大事というのが本心だからだ。
このことは医師だけではなく、他の職業にも当てはまるのだが、たしかに将来、AIを備えたロボットが開発、導入されれば、人間がやっていた仕事の半分以上はロボットに取って代わられる時代が来るだろう。経営側の立場で考えると、AIを設備投資として導入する代わりに人件費をカットするのは当然のことだ。これは近い将来、現実に起こり得ることである。
ストーリーに恋愛要素は、ほとんどなさそうだ。向井を理解する看護師美村里江の想いくらいだろうか。だが、ジャーナリストの山本耕史と関係があったりするので、油断のならない女ではある。黒木瞳は医師会会長として医療界のトップに立ち、AIは時期尚早と、向井や渡部の動きを封じようとする。一方、渡部は厚生労働大臣を動かして、AIの有益性を世にアピールする。そのあたりの政治的な駆け引きはなかなか面白い。だが本筋は、向井のひたむきな想いが人を動かし、医療界を変革することができるのかということだろう。おそらく感動のポイントもそのあたりにあると思う。
The Good Life / Tony Bennett
エンディングに流れるのは、トニーベネットのグッドライフ。
なんてセンスのいい選曲だろう。
まるで名画を観たあとのような気持ちにさせられる。

