Achilles Last Stand,etc… | 秋 浩輝のONE MAN BAND

秋 浩輝のONE MAN BAND

はじめに言葉はない

Led Zeppelin7枚目のアルバム、Presence(プレゼンス)1976年リリース。僅か3週間で全曲録音された。楽器はエレキギター、ベース、ドラムと最小限の編成で、アコギが使用されたのはわずか一曲、John Paulのキーボードも登場しない。Robertは事故で足を怪我しており、ずっと車椅子に座ったまま歌った。そんな悪条件の中、録音されたにもかかわらず、硬質な音が凝縮され、一つの巨大な塊のような壮大な音空間を創り上げた。形式的にはハード・ロック、ブルース・ロックがほとんどで、バラードを期待していた人は裏切られた思いを抱いたかもしれない。

 

 

表ジャケット

ジャケットデザインは、ヒプノシス。どこにでもあるような幸せそうなファミリーが机の前に座っている写真だ。だが、テーブルの真ん中には、不思議な黒い物体が置かれている。捻れた形をしたモノリスである。さて、どういう意味があるのだろう?

 

 

Obelisk(オベリスク)

モノリスには「オベリスク」という名前がついている。オベリスクとは、昔からギリシアの神殿などにあるモニュメント…記念碑のことだ。初めは「オベリスク」がアルバム・タイトルになる予定だったそうだ。オベリスクは内や裏ジャケットの写真、すべてに必ず存在している。

 

話は飛ぶが、昔、東京でヒプノシスのアートワーク展があったそうだ。その中にはこのオベリスクもあったが、驚いたことにオベリスクに触ろうとしても触れることが出来なかった。実はオベリスクは物体ではなく、オベリスクのカタチをした「穴」だった!! 来日していたヒプノシスのストーム・ソーガソンの説明によると、オベリスクは「虚無の空間」なので、触れることが出来ないのだそうだ。…この話はネット上に、ある方が書かれていたもので、僕が直接行って確認した訳ではありません。孫引きです。申し訳ありません。

 

アルバム・タイトルのPresenceは「存在」という意味である。つまり、我々が存在していると信じているものは、実は「虚無の空間」であり、存在していないのかもしれないのだと。たとえば、表ジャケットの家族愛、たとえば、裏ジャケットの教師が生徒を褒める行為、たとえば、内ジャケットの男女の語らい、順調な仕事、家の中でのリラグゼーション、ゴルフなどの趣味を楽しむ人たちの笑顔……穏やかな行動や弛緩した表情は、すべて本物なのか、ひょっとして、その中に嘘や欺瞞は潜んでいないのだろうか? 何でも盲信するのではなく、時には疑ってみることも必要なのではないか?

……そんなことを問い掛けられているような気がする。これらの写真は、いずれも怪しげな新興宗教団体のパンフレット写真のような感じがして、なんだか気持ち悪い…と感じてしまう僕はヘンなのだろうか(笑)そして、逆に間違いなく存在しているものは、確信に満ちたZEPの音楽であると、天国への階段で言ったTo be a rock not a rollの答えがPresenceだと、Jimmyは言いたかったのではないだろうか。

 

 

裏ジャケット

 

内側ジャケット1

 

内側ジャケット2

 

 

 

Achilles Last Stand(アキレス最後の戦い)

ZEPの後期の曲の中では傑出した名曲、名演だ。イントロのEm9の美しいアルペジオから、エンディングのイントロと同じアルペジオに至るまで、小細工することなく、ハードかつソリッドな音で、4人が疾走してゆく様が心地良い。

 

ところで、詞を見ると、「アキレス」はどこにも出てこない代わりに、最後のほうで「アトラス」が登場する。両方ともギリシア神話に登場する神だが、まったくの別神だ。アキレスは、「アキレス腱」の元になった足を負傷した神である。(ただし、父親は人間、母親は神なので、半神?)アトラスは、天空を支え、地球を守っている偉大な神だ。下の写真の彫像は有名なので、誰でも知っていると思うが、持ち上げているのは地球ではなく、天空(宇宙)である。タイトルにアキレスを持ち出したのは、ちょうどその頃、足を負傷していたRobertのイタズラ心かもしれない。ネットを見ると、ギリシア神話のエピソードを引用しながら、深く考察している方もいらっしゃるが、この詞に関しては、あまり深読みしないほうがいいと、僕の直感が言っている(笑)

 

Wandering and wandering,

What place to rest the search

The mighty arms of Atlas,

Hold the heavens from the earth

 

ずっと迷い続けてきた

探索する手を休めたい

アトラスの力強い腕が

大地から天空を支えている

 

足も怪我したことだし、ここいらで少し休みたいというRobertの気持ちが詞に表れているような気がする。だが、Robertの不遇は続く。それから3年後、息子を病気で亡くしてしまうのである。

 

アトラス神

 

 

 

Tea for One(一人でお茶を)

アルバムを締めくくるのは、マイナー・ブルース。Ⅲの「貴方を愛しつづけて」と雰囲気がよく似た曲だ。Jimmyが紡ぎ出すメロディック・マイナー・スケールのフレーズは、とても切なく哀しい。

 

 

 

Since I've Been Loving You(貴方を愛しつづけて)

「Tea for One」と比較すると、こちらのほうが構成は複雑。特に間奏のギターソロは、よく練られていて秀逸だ。どちらがいいということではない。

 

 

 

Since I've Been Loving You (1973 Live Version)