Led Zeppelinをハードロック・バンドとしてしか認めないという頑固というか、偏った見方しかできない人が昔いた。それは、とある音楽喫茶のマスターで、長髪にちょび髭、赤いチェックのシャツ、ベルボトムジーンズ、ロンドンブーツを穿いた、イカにも…という感じの人だった。
「ZEPはさ、1,2枚目がすべてなんだよ。3枚目なんてクズ。そのあと、天国への階段? レインソング? 軟弱な! 日和ってるんじゃないって!」と彼は言った。
「へぇ、そうなんだ。でも、ひとつだけ言っていい?」
僕は、頷きながら言った。
「なに?」
「マスターはハードロック至上主義者みたいだけど、1枚目も2枚目も、ハードロックっぽくない、アコギを使ったフォークブルースの曲もあるじゃないですか? たとえば1枚目の「Babe I'm Gonna Leave You」とか「Black Mountain Side」とか「Your Time Is Gonna Come」とか、2枚目の「Thank You」とか。それらの曲は否定するんですか?」
「それは……」
「それは……」のあと、マスターがなんと言ったのか、残念ながら覚えていない。なにしろ大学時代の話だし。まぁ、つまらん言い訳っぽいこと言ってたような気はする(笑)
Your Time Is Gonna Come(1969)/Led Zeppelin
パイプ・オルガンっぽい音から始まり、アコギのアルペジオを中心とした音をバックにボーカルが入ってくる。この曲を聴いてハードロックと感じる人は少ないだろう。むしろ、プログレといってもおかしくはない。
Black Mountain Side(1969)/Led Zeppelin
Your Time Is Gonna Comeがフェイドアウトする中、妙なチューニングのアコギの音が覆いかぶさるように入ってくる。アコギと打楽器のみのアンサンブルのインスト曲だが、原曲はトラッドで、歌が入っている。有名なのはBert Jansch(バート・ヤンシュ)の弾き語りによるバージョン。
そのギター奏法をJimmy Pageは(明らかに)パクっているのだが、Bertのほうは、「Black Waterside」という曲名である。ふたりは仲がいいのかと思っていたが、どうやらほとんど面識はなかったらしい。
「Led Zeppelin? なにやら派手なかっこうした奴らが出てきたな…と思ったよ。Jimmy Page? よく知らんな……」
と、昔Bertは、インタビューで答えていた(笑)
だが、Jimmy Pageは60年代、Yardbirdsに加入する前は、スタジオ・ミュージシャンとして鳴らしていた。その頃、イギリスではBig Jim Sullivan(ビッグ・ジム・サリヴァン)という有名なスタジオ・ギタリストがいたが、Jimmyは、Big Jimの弟子的扱いだったのか、「Little Jim」と呼ばれていたらしい。その当時のイギリスのポピュラーソング伴奏のギター・パートの50%くらいは、Jimmyが弾いているという話もあるが、真実は定かではない。バック・ミュージシャンを明らかにしないなどの「守秘義務」がこの業界ではあるらしく、Jimmy自身もよく解らないそうだ。なお、Jimmyは楽譜が読めないことを自ら明かしている。スタジオ・ミュージシャンは、初見でこなせないと仕事にならないと聞くが、実際のところはどうだったのだろうか。
Black Waterside(1966)/Bert Jansch
Black Mountain Sideの元曲。トラッドなので歌詞が付いている。Bertは、この曲をD-Drop Turning(6弦のみ、EをDに下げる)で弾いており、Jimmyは、DADGAD Turningで弾いている。運指的にはD-Dropで弾くほうが難しい。Jimmyのギター演奏は、DADGADを使ったことに、そのセンスの良さを感じる。初期のライブでは、White Summerのあと、メドレーでBlack Mountain Sideを弾いているが、レコーディングで弾いたものとは、まったく異なったアプローチで弾いているところが、いかにもJimmyらしい。
Thank You(1969)/Led Zeppelin
セカンド・アルバムに収められたラブ・ソング。Robert Plantが作詞を手掛け、Jimmy Pageが作曲した抒情的な曲だ。この曲を始めとしたセカンド・アルバム以降、Plant-Pageのコンビネーションで、さまざまな名曲が出来上がっていく。この曲もハモンド・オルガンの音が入っているが、演奏しているのは、ベーシストのJohn Paul Jones(ジョン・ポール・ジョーンズ)。5枚目の「聖なる館」でも、「Rain Song」でメロトロンを披露しているが、ZEPのプログレ・センスは、John Paulの持ち込んだものかもしれない。
Led ZeppelinⅡジャケット
