あくまで架空インタビューです。事実と思われるエピソードや、キースとグレッグが過去にインタビューで語ったことを膨らませ、「創作」しています。(一部ウソも含まれていますw)
GL=グレッグ・レイク
HA=秋 浩輝
HA「ファースト・アルバムについてお聞きします。『ナイフ・エッジ』は前回取り上げたので、今回はそれ以外の曲についてですが……まず1曲目の『バーバリアン』。デビュー・アルバムの1曲目から、いきなりクラシックのインストですね」
GL「俺とキースはデビュー前に、色々方向性について話し合ったんだ。まず、インストとボーカル曲は半々にしようと。それと、ステージでは、それぞれのソロを公平にやろうと。この2つが基本だった。ファースト・アルバムは、(レコードでは)A面の3曲がバンドとしての表現、B面の3曲は、キース、カール、俺の順番でソロ・パフォーマンスの表現…てな感じで作ったつもりだ」
HA「なるほど、そう言われれば、そんな感じの構成になっていますね」
GL「『バーバリアン』は原題は『アレグロ・バルバロ』というバルトークのピアノ曲で、キースが持ってきたんだけど、バルトークはキースに一番影響を与えた作曲家じゃないかな。クラシックにしては暴力的でパーカッシブな曲が多いんだ」
HA「たしかにそうですね。『アレグロ・バルバロ』を何人かのピアニストの演奏で聞きましたが、とてもパーカッシブな曲だと思いました。でも、キースの演奏が誰よりもパーカッシブで素晴らしかったと思います」
HA「ファズ・ベース……ですよね? 日本の音楽評論家KO氏は、あの音をキースのシンセ音とか言ってましたよ(笑) ベースにファズを掛けたミュージシャンって、その当時、あまりいなかったんじゃないですか?」
GL「そうだな……。元々、ギタリストなもんで、発想の仕方がギターっぽいんだよ。『展覧会の絵』の『小人』や『バーバ・ヤーガの小屋』でも使ってみたんだけど、どうだろう?」
HA「いやぁ、個性的でとても良かったと思いますよ。お堅いクラシック・ファンは眉をひそめてましたけどね(笑) 2曲目の『石をとれ』ですが、あなたの作詞、作曲ですよね?」
GL「あぁ、そうだよ。10代の頃から暖めていた曲だった。中間のピアノ・ソロはキースのアレンジだけどね。練習しているうちに、カントリー&ウエスタンぽいギターとか、ピアノ・ジャズ・トリオとか、どんどんアイディアが出てきて、それをみんなで煮詰めていったんだ」
HA「あなたはジャズっぽいベースが、ほんとうに上手ですね。いつ覚えたんですか?」
GL「クリムゾン時代だ。何曲かジャズっぽい曲をライブでやってたからね。理論は知らないけど、見よう見真似でやってたら、いつの間にか身に付いてたよ。耳の良さだけは自信があるんだ」
HA「そういえば、展覧会の絵の『ブルース・バリエーション』の中間部はビル・エバンスの『インタープレイ』という曲をパクリましたね(笑) ビル・エバンスよく聴いてたので知ってました。だから、初めて『ブルース・バリエーション』を聴いた時は、ぶったまげて椅子から転げ落ちそうになりましたよ(笑)」
GL「ははは。キースはクラシックだけでなく、ジャズも10代の頃からやってたからね。73~74年のライブで『石をとれ』やってた時は、フリードリッヒ・グルダ作曲の『プレリュードとフーガ』を間奏にして、ピアノ・ソロやっていた。グルダは元々、クラシック・ピアニストだから、この曲はかなりクラシック寄りのジャズというニュアンスがある」
HA「グルダ……よく知ってます。NHKのクラシック番組でライブ観たことがありますし、レコードも買いました。クラシックとジャズの両刀遣いのピアニストは、クラシック側からはアンドレ・プレヴィン(どちらかというとピアニストよりも指揮者として有名)、ジャズ側からはチック・コリアやキース・ジャレットなどがいますが、中でもグルダは変わってますね~。装飾音を勝手にいっぱい付け加えたモーツァルトとか平気でやっちゃいますもんね。ピアノをバチで叩いてみたり(笑)」
GL「キースも変人だから気が合うんじゃないのかな」
HA「あなたには言われたくないと思いますが(笑) B面の1曲目は完全にキースの世界ですね。『運命の3人の女神』…重厚なパイプ・オルガンから始まって、煌めくような硬質な音のピアノ・ソロ、次はバンド演奏になって、最後は爆発音とともに2曲目のカールの『タンク』に雪崩れ込む……何度聴いてもカッコいいというか、ドキドキします。ところで、『タンク』はカールの作曲になってますが、ほんとうにカールが作曲したんですか?」
GL「いいや、カールは曲は作らないよ。ドラム・ソロやっただけ。カール作曲の曲がなかったので、『カールの作曲にしとこう』とキースが言って、クレジットされただけさ。実際に作ったのはキースだ」
HA「やっぱり……そんなことだろうと思ってました(笑) で、ラストの『ラッキー・マン』ですが、この曲はあなたが12歳の時に作ったと言われてますが、ほんとうですか?」
GL「ほんとうだよ。まだギター弾き始めて間もない頃さ。使ったコードは、D、G、Am、Emの4つだけ。その頃はまだシンプルな曲しか作れなかったんだ。だけど、シンプル=つまらない曲ではないよね? 逆に言うと、複雑=素晴らしい曲でもない。人の心の琴線に触れる要素は、もっと別のところにあるのさ。そう思わないかい?」
HA「おっしゃる通りです。ところで、ファースト・アルバムでシンセを使ったのは、結局、この曲のエンディングだけですよね?」
GL「そう。レコーディングがほとんど終わったところで、キースに『最後にちょこっとシンセでも入れたら?』と言ったら、キースは素直に応じた。ほとんどぶっつけ本番で、ワン・テイク録っただけじゃなかったかな。だから、キースは後悔してるらしい。もうワン・テイク録りたかったらしいけど、テープが残ってなかったんだ(笑) でも、結果的にあのフレーズが世界的に有名になったから良かったんじゃないのかな。世の中、何が幸いするか解らないもんさ」
HA「そして、『ラッキー・マン』がシングル・カットされました。キースにとっては不本意だったんじゃないですか? 噂によると、あなたはビジネス面でキースより長けていたから、レコード会社に手を回したのだと……」
GL「たしかにキースは音楽バカみたいなところがあったからね。でも、よく考えてほしい。ファースト・アルバムで『ラッキー・マン』以外にシングル・カットできそうな曲があったかい?」
HA「……ありませんね」
GL「俺はいつでもプロデューサーとして、正しいことをやっているんだよ」
HA「はぁ、そうですか……」


