階(きざはし) | 秋 浩輝のONE MAN BAND

秋 浩輝のONE MAN BAND

はじめに言葉はない

僕たちが初めて出会ったのは十字路の手前の小さな店
僕はギターを爪弾きながらキミが来るのを待っていた
キミはベースを肩に掛け長い髪をかきあげながらやってきた
キミは自分の過去を洗いざらい話して僕に衝撃を与えたけど
僕は平気なフリをして冷めたコーヒーカップをソーサーに置いた
いつかふたりの紡ぎだす音が美しく絡まればいいと僕が言うと
キミは目を潤ませながら深く頷いた

そして瞬く間に季節は回り、
ふたりは言葉や視線や体を何度も絡め合いながら
出会う前のア・プリオリを互いに見極めようとした
一見まるで違って見える互いの過去ではあるけれど
油絵に描かれた赤と黒の色彩と筆致は驚くほど良く似ていた
キミはその2色で人の痛みを解らない人間への怒りと絶望を
僕は血とヤニの入り混じった反吐を吐く自分自身を描いていた

偶然の出会いは神の創造した運命だと人は言う
でもそれは人間同士の悲痛な想いの果てにある必然だと
キミを知れば知るほどそう思わざるをえなかった
僅かな裂け目から互いに疑心が生じたこともあった
互いのすべての想いがまったく同じであるはずはない
そう認識出来たときにふたりの絆はより深いものとなった
そして互いの音を重ね合わせると、美しく深遠な調和が紡がれはじめた

到達点の見えない階(きざはし)を
キミとともに一段一段昇ってゆく
この先にいったい何があるのだろう?
登りつめた先にはいったい何が……?
ふたりは心のなかで幾度も同じ問いを発し続ける
絶望と地獄を見続けてきたふたりにとって不安や怖れはない
たぶんそこには暖かな光に包まれたふたりの未来が佇んでいる

 
 
 

(再掲載加筆修正あり)