ずっとずっと前から貴女は僕の前に佇んでいた
とても清らかで透き通った貴女の存在に気づかないほど
僕の目は歪んでいた
どす黒く濁っていた
あの頃は
快楽と愉楽の渦に巻き込まれ
友情ごっこや愛情ごっこに精を出す
ヴァーチャルと現実の区別もつかないままに
クリックひとつでその場凌ぎの関係を
繋ぎ合わせたり切り刻んだり……
それはまるで
膨らんでは弾けて消える気泡のようなものだ
蠢くように細胞分裂を繰り返すアメーバのようなものだ
僕もかつては君と同じだった
干からびた現実から目を背けたかっただけ
辛い今日と明日と明後日から逃れたかっただけ
言葉は魔物だ
言葉ひとつで甘い幻想を抱くこともできれば
冷水をぶっ掛けられることもある
ヴァーチャルからスタートした関係は
たとえ同じ空間を共有しても
ヴァーチャルから抜け出せないことがある
ヴァーチャルでついた嘘は守り通す必要があるからだ
嘘が露見した時に、その関係はあっという間に崩壊する
隠微 そして 淫靡な世界で誰もが巧妙な演技をする
自分が理想とする人間に見えるように
内向から外向へ
無口から雄弁へ
そして 笑いを取るべく言葉を懸命に探している
時に俄か知識をひけらかし
時に実は真面目だよと一歩引いてみせる
それらはとてもオカルティックでナルシスティックな振る舞いだ
でも 遥か遠くから
行間に同意した君がやって来たなら
そんなまどろっこしい振る舞いはしない
人間は誰もがめくるめくような欲望に突き動かされ
そして……支配されている
ずっとずっと前から貴女は僕の前に佇んでいた
とても慎ましやかで温かい貴女の存在に気づかないほど
僕の目は歪んでいた
どす黒く濁っていた
あの頃は
そして今
揺るぎなき調和が
僕と貴女の間にもたらされる……
2015.12.10
