暖かな春風が吹く前に
あなたは立ち去っていった
冬の木枯らしを巻き込みながら
あなたは音もなく立ち去っていった
晩秋の冷たい風に煽られ
あなたの細腕のような木の枝は
カサカサと乾いた音を立てていた
つまりその時に気づくべきだったのだ
初夏の初々しい空と海
あなたは大きく手を振り
小麦のような溌剌とした声で
僕の名を呼びながらキョリを縮めてゆく
逆に還ってゆく時の流れは
霧の中を彷徨う旅人のように
懐かしさと息苦しさを分け合いながら
出口を求めてさ迷う
ふと気づけば測ることができないほど近くに
あなたが佇んでいる
ゆるやかに たおやかに
あなたの辿り着いた心をそっと包み込んでいたい……