短篇小説 死にものがかりvol.4(最終話改訂版) | 秋 浩輝のONE MAN BAND

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はじめに言葉はない

「あなたは、恋人の志乃さんを誤って殺してしまったの」
「しの……志乃?……あぁ、思い出した!」
「あなたは、その記憶を一番消したかったのね。殺人ということで、仕事にリンクしてしまったけど」
――志乃、すまない。

俺は志乃の優しさや可愛かった笑顔を思い出して、更に嗚咽し、号泣した。


ある日、些細なことから喧嘩になってしまった。志乃の肩を軽く押したつもりだったが、志乃はよろけて、うしろのタンスの角に頭をぶつけ、そのまま動かなくなってしまった。当たり所が悪かったのだろう。あっさりと志乃は死んでしまった。ふだんは滅多に喧嘩なんかしなかったのに……。


「あなたは志乃さんが死んだあと、すぐに自殺したのよね」
「志乃を誰よりも愛していた。志乃の命を奪った以上、もう生きてはいけないと」
「なぜ首吊り自殺だったの?」
「死刑囚の死後の苦痛に歪んだ表情を思い出した。自分も同じ苦しみを味わうべきだと思ったんです」
「やっぱり…純也さんらしわね」
「俺を離れ島に連れていってください」
「そういうわけにはいかないわ。あそこは反省心のカケラもない、どうしようもない人間のクズが行くところなの」
「俺はいったいどうすれば?」
「あなたには天国への昇天試験を受けてもらうわ」
「俺なんかが天国にいく資格はありません」
「ばかっ! なにを言ってるの!  志乃さん、あなたが来るのをずっと待ってるのよ」

トーマはスマホを取り出し、パネルの数字をタッチし始める。電話が繋がったあと、スマホを俺に渡しながら言った。
「志乃さんよ。話しなさい」
俺はこわごわとスマホを受け取った。

「もしもし……」
『純也? 私』
「志乃……すまなかった。俺は……俺は……」
『いいの、あなたを恨んでなんかいない。 あれは事故だもの。それより、こちらに来て。また、一緒に暮らそ。誰よりもあなたを愛しているから』
「ありがとう、志乃。こんな俺で……すまない……」

翌日、俺は昇天試験を受けることにした。試験官トーマはとびっきりの優しい笑顔を俺に向けてくれた。

 

 


若き日のエリカ様♥


(了)

2015.3.6

2019.6.3改訂