ショートショート 待ち合わせ(改訂版) | 秋 浩輝のONE MAN BAND

秋 浩輝のONE MAN BAND

はじめに言葉はない

コンビニの駐車場で君が来るのを車の中で待っている。
待ち合わせの時間を過ぎても君は来ない。
時間に正確な君なのに、どうしたんだろう。
約束の時間を15分過ぎた頃、俺は君に電話を掛けた。
話し中だった。
 
その3分後に再度電話すると、
『お客様のお掛けになった電話番号は電源が入ってないか……』
誰もが聞きたくない感情のこもらないアナウンスが流れた。

そのあと何度電話しても、同じアナウンスが流れた。
諦めて家に帰ろうとした時、
ルームミラーの端に息を切らせながら走ってくる君の姿が見えた。

 

……よかった。

俺は安堵の息をつく。

だが、君は俺の車とは違うヤンキー車に向って走っていく。
車の運転席には遊び人風の若い男がいた。
助手席に乗った君は男と談笑している。

 

やがて車は爆音を残して走り去っていった……。

 

 


もしやと思って、スマホのスケジュール表を画面に出す。
やっぱり……約束は明日だった。
彼女とは週に一度だけ、いつも同じ曜日に会う約束をしている。
正月休みが続いたせいで、俺は曜日を一日勘違いしてしまったのだ。

ということは、たぶん彼女は毎日同じ時間に
違う男と待ち合わせしているんじゃないだろうか。
月曜から金曜までなら5人、
月曜から土曜までなら6人、
……なんてこった!

割り切った体だけの付き合いだった。
互いに本名なんか知らなかった。
愛情なんてまったくない。
そう思っていたのに、この虚しさはいったいなんだろう。
他の男と彼女が抱き合っているところを想像したくなかった。
ひょっとして俺はいつの間にか彼女のことを……。

俺は帰りに彼女の好きな紅い薔薇の花を
車のトランクから溢れるほどいっぱい買った。

(了)

 

 

2017.6.17
2019.5.30改訂