「ザ・コーヴ」にみる映画と言論 | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

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Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

以前、「ザ・コーヴ」について、
記事を書きました。

[映画「ザ・コーヴ」(コーブ)・・・イルカ漁の真実]
http://ameblo.jp/dupondt/entry-10581842087.html

あの記事を書いたときは、映画を観た直後であったので、
多少感情が高ぶっていた部分もありましたし、
偏った記事にならないように努めていましたが、
それでもいろんな方からコメントなりを頂きました。

都内で上映されていたのは、渋谷・イメージフォーラムで、
自分は7月4日に観ましたが、
公開日である前日の3日には、イメージフォーラム前で、
上映公開をはばむ衝突がありましたが、
自分はそのことに関しては、その時知らず、
3日夜には、新宿・ロフトプラスワンにて、
「ザ・コーヴ」に関する討論が関係者にて開催されました。

$道玄坂で働くベンチャー課長

その一部始終に関しては、下記ユーストリームでも
ご覧いただくことは可能ですし、
ロフトプラスワンが発刊に関わっている
月刊誌「創」(Tsukuru)にも、掲載されています。

[7/3『ザ・コーヴ』公開討論会 1]
http://www.ustream.tv/recorded/8048373

[7/3『ザ・コーヴ』公開討論会 2]
http://www.ustream.tv/recorded/8049249

この文芸誌「創」ですが、価格は600円ですが、
内容は非常に充実しています。

さて、イルカ漁を扱ったザ・コーヴですが、
イルカ漁そのものの是非ではなく、
その周辺要素から討論が展開されていきます。

特に興味深いのが、動物に関する人々の考えの変化で、
例えば、十数年前に小学校で飼われているウサギを殺しても、
ウサギを殺した人間が罰せられるのは器物損壊で、
ウサギはモノ、誰かが所有しているモノであったのです。

従って、野ウサギであったり、自分で飼っているウサギを
殺した場合には、器物損壊には問われないのです。

それと同時に、その時代にも動物保護管理法というのがありましたが、
3万円くらいの罰金で、器物損壊は30万円くらいであったと。

それが、99年になって動物保護保護管理法が、
動物「愛護」管理法になり、それ以降、
自分のものであろうが他人のものであろうが、
野生のものであろうが、動物を虐待したり、
殺したりすると1年以下の懲役と罰が重くなったのです。

つまり動物やイルカに対する人々の意識や考え方は、
相対的、流動的なものであり、時代や周囲の状況に応じて、
変化でしていくものであるということです。

その上で、クジラ漁を含め、日本には文化とまではいかなくても、
それなりの歴史はあるわけで、
いろんなレイヤーにてグローバリゼーションが進んでいる中、
それを理解してもらうための、説明責任(アカウンタビリティ)が、
あると自分は思います。

また、「ザ・コーヴ」がプロパガンダであるという意見もありますが、
この議論で紹介されているのは、もともとドキュメンタリー映画は、
プロパガンダから始まっており、
具体的にはナチス時代の監督レニ・リーフェンシュタールの
「意志の勝利」などです。

「意志の勝利」に関しては、自分も以前、鑑賞しましたが、
ナチスやヒトラーを理解するうえで、一度は観ておくべき作品です。

「意志の勝利」
http://ameblo.jp/dupondt/entry-10331041252.html

自分が観る映画の大半はドキュメンタリーですが、
歴史と同様で、事実をもとにしつつも、
当然、監督等の意図があり、都合よく編集されるわけです。

本では読者の想像力・理解力が問われ、
視覚的な部分が伝わりづらいですし、
テレビにおけるドキュメンタリーでの放送枠が制限されているなかで、
ドキュメンタリー映画というのは、社会に波紋を投げかけるだけの
大きな力があります。

また、個人的にも将来、何らかドキュメンタリーの現場に
携わりたいという思いがあります。

「ザ・コーヴ」はかなり監督による演出が、
大きい作品だと思いますが、
観られていない方で興味があれば、ご覧下さい。。


創 (つくる) 2010年 10月号 [雑誌]/著者不明

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