数学ピアニスト教員 | 道玄坂で働くベンチャー課長だったひと

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Il n'est qu'un luxe veritable, et c'est celui des relations humaines.
Saint-Exupery(真の贅沢というものは、ただ一つしかない。それは人間関係の贅沢だ。
サン=テグジュペリ)
 

金子一朗『挑戦するピアニスト』
 
著者自身は早稲田中学・高校の数学の教員ですが、
同時にソロコンサートを
開ける実力のピアニストで、その体験記。
 
2005年にピティナ ソロ部門特級で、
グランプリ(金賞)を獲得。
 
ピティナ・コンペティション とは、
自分も最近知ったのですが、
全日本ピアノ指導協会(ピティナ)が
主催する日本で、権威あるコンクールなのです。

彼は、1962年生まれで、
コンクールに挑戦を始めたのが、
40歳を過ぎてからという、
変わった経緯の持ち主。
 
父親の影響で、幼少期から
ピアノ音楽に親しみ、
とりわけバッハの平均律には、
深い思い入れが。
 
そして、グランプリをとったときも、
やはり、バッハの平均律が曲目にあります。
  
本の前半は、生い立ちを含めた
一般的な内容で、後半が技術的になります。
 
彼の特長は、数学者らしい自由な発想を
もとにしたアプローチの仕方で、
具体的に、曲を仕上げる手順として
次のように上げています。
 
1 音源は聴かない
2 楽譜の収集
3 演奏機会を得る
4 楽譜を読んで分析する
5 分析の実践
6 指使いをピアノなしで決める
7 さあ、ピアノで練習しよう
8 仕上げ
9 いざ、本番
 
また、練習の常識・非常識として、
 
1 リズム練習はやらない
2 ハノンやチェルニーなんか嫌い
3 速く弾くにはゆっくり弾く
4 微妙に異なる音高と強弱をイメージする
5 ピアノを弾かないで演奏する
6 ピアノ曲以外のトレンドをぬすむ
7 留学なんかできないけれど
8 楽譜の指示を守ると個性が生まれる
9 ピアノ技術の習得
10 理論、音楽史、楽譜について
 
彼は、社会人になってからというもの
空白の12年間があり、その期間は、
本格的にピアノに取り組むことはなかったのです。
 
しかし、2001年になり、突然事件が発生し、
マレットフィンガーと呼ばれる
左手の人差し指の腱を断裂するという
事態になってしまうのです。 
 
それから名医を探し、長期に渡る治療後も、
ピアノが弾けるように、過酷なリハビリを続け、
そのピアノを弾けない半年間の後、
それからのコンクールに、出場し始めます。
 
彼のCDが、発売されているようですが、
自分はまだ、聴いていません。
 
この本を通じて、自分は、
ますますピアノが好きになりましたし、
改めて、ピアノの奥深さを感じました。
 
若干、価格が高めですが、
他の本にはないようなヒントが、
たくさんあるので、機会があれば、ぜひ。
 
一押しです!


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