空を渡り行く鶴の 隊列のすき間には
いずれわたしが行くだろう あなたとまた逢うために
薄紫に染まる 夕闇を超えて飛ぶ
この世に残したわれらに その想いを伝えながら



やぎりん訳詞《鶴》決定版歌詞
《鶴》を訳すという難題

8月15日の夜明け前『ラジオ深夜便』の
「明日へのことば」のコーナーで
やぎりんのインタビューが
放送されてから、ボクが2022年に書いた
ウクライナ名歌《鶴》のページへのアクセスが
増えています。
インタビュアーは迎康子アンカーでした。

★「明日へのことば」
「聴き逃し」はこちらから
8月22日の朝5:00まで

音楽番組ではなくお話中心なので、
曲をかけるのは1〜2曲とのことでした。
迎さんが選んでくださったのが《鶴》です。
無意味な殺し合いである戦争が長引く
悲しみの中で、やっぱり
この歌にこめられたメッセージは大切です。
戦争で亡くなった方々から、ボクらは
どんなメッセージを受け取るのか?
そして........


大前恵子さんのご依頼で訳詞に取り組んだものです。

◎《鶴》という歌

ロシア語原題:Журавли(ジュラヴリー)

鶴たち(直訳タイトル)


戦後20年1965年の原水禁広島大会に参加した
当時のソ連邦の一部、ダゲスタン共和国の詩人
ラスール・ガムザートフが
アヴァル語(ダゲスタン共和国の公用語)で
作詞。彼は
折り鶴の少女・佐々木禎子さんの生き方に
感銘を受けて、鶴をモチーフに歌詞を書いた。

ナウム・グレブニェフが

ロシア語に訳した歌詞に

ウクライナ人の
ヤン・フレンケリが作曲。

ウクライナには《キーウの鳥の歌》という
民謡もあり、そこにも
鶴や白鳥などの渡り鳥に託して
遠くの人や、亡くなった人への
思いを伝えようとする歌詞が歌われる。

渡り鳥は、この世とあの世をつなぐ鳥....
のように思われていたかもしれない。

渡り鳥に対しては、ボクも不思議に
憧れを抱いてきた。
メキシコ名歌 ”つばめよ” を訳したのも
渡り鳥への愛着からだ。

“鶴”は
原爆という絶望から生まれた名歌で、
世界中で歌われている。
日本語訳詞もさまざまあるが、
決定版はなかったようだ。
大前恵子さんの依頼により
2021年8月に訳詞。

ちなみに、当時のソ連で、
ロシア語圏でない国の作家に共作で
作詞作曲をさせるのは
ソ連邦の国策だったと思う。
”鶴”とならぶ大ヒット曲
”百万本のバラ”も

作詞はグルジア人(現ジョージア)で

作曲はラトビア人である。

ロシア語圏でない国の作家たちの共作で
ヒット曲生み出し、世界に広まることで、
ソ連邦の中でのロシア中心の
文化的一体感を演出しようとした。
日本ではその策略にまんまとひっかかり
“鶴”も ”百万本のバラ” も
「ロシア民謡」の範疇に入れられて、

一般国民を勘違いさせたことがある。

民謡ではなく、
「ソビエト歌謡」と呼ばれるのが正しい。

◎受け取るバトン、わたすバトン
戦争で亡くなった方々から、わたしたちは
どんなバトンを受け取るのか?そして
自分がこの世を去るとき、どんなバトンを
誰にわたすのか?
一人ひとりに考えてほしい・・・
”鶴” はそういう歌だと思う。

核兵器禁止条約に
日本が参加しないことは、
日本政府が、
戦争の犠牲者からのバトンを
受け取っていないことになる。

なんと絶望的な政府。
日本は平和憲法を持つ国として
軍縮で世界を
リードしなければならない。

今の日本の軍拡と米軍のやりたい放題は
地球人がめざす方向に逆行している。

2017年3月28日、核兵器禁止条約の国連会議会場で
日本の席に置かれた「あなたがここにいてくれたら」と
書かれた折り鶴。(遠藤誠二 撮影)


採決に日本は欠席した。

(歌詞の翻訳)
詞:ラスール・ガムザートフ(ダゲスタン共和国)
曲:ヤン・フレンケリ(ウクライナ共和国)

私はふと思うことがある
血まみれの戦場から
帰ってこなかった兵士たちは
我らの大地にたおれたのではなく
白い鶴に姿を変えたのではないかと

彼らは昔も今も
あの遠い時の果てから
飛んできて私たちに声を落とす
そのせいか
私たちはしばしば悲しげに
空を見上げながら黙ってしまう


疲れた鶴の群れが
空を飛んでゆく
夕暮れの靄の中を飛んでゆく
その列の中に
小さな隙間がある
ひょっとしたらそれは
私のための場所なのかもしれない

その日が来れば
あの鶴の群れと共に
私もあの灰青色の霧に包まれ飛んでゆく
地上に残してきた者たちすべてに
空の彼方から鳥の声で
呼びかけながら

[Coda]
私はふと思うことがある
血まみれの戦場から
帰ってこなかった兵士たちは
我らの大地に倒れたのではなく
白い鶴に姿を変えたのではないかと


訳詞:やぎりん

戦から還らぬあなたは

大地に斃れたのか

わたしは思う あなたは

鶴に姿を変えたと

はるかな遠い空から
時を超えて語りくる
わたしは言葉をなくして
夕空を見上げるだけ


空を渡り行く鶴の
隊列のすき間には
いずれわたしが行くだろう
あなたとまた逢うために

薄紫に染まる
夕闇を超えて飛ぶ
この世に残したわれらに
その想いを伝えながら

わたしもいつか空から
誰かに呼びかける
その日が必ず来ると
今はわかる 宿命(さだめ)だと

[Coda]
戦から還らぬあなたは

大地に斃れたのか

わたしは思う あなたは

鶴に姿を変えたと

「灰青色の霧に包まれて飛んで行く」
という意味のところの訳詞に悩んでいたとき
毎日のように早起きして
夜明け前の東の空を見たり、
日没後の夕焼けを見ていた。
「灰青色の霧」がかかる空とは
この世とあの世の境にある空のような
氣がした。そんなイメージの空の色を
ボクは待っていた。
アントニ・ガウディの言葉
「人間は創造しない。
自然の中から発見するだけ」
ボクはこの言葉を信じている。
(この件の詳しいブログ)

ボク以前にこんなにたくさんの訳詞が♪
ヨーロッパ系言語から日本語への翻訳で、
歌詞として訳したら、元歌が同じなのに
ずいぶんと違う歌になってしまうという例です。
日本語表現の多様性でもあり、
この歌詞から何を伝えたいか?という
訳者の想いの違いでもあります。



訳詞:坂山やす子
(合唱版の歌詞)

私は ふっと思う
傷つき帰らぬ兵士ら
異国の土に眠り
いつしか白い鶴に

鶴は昔から今も
訪れては声伝う
それ故か いつも切なく
声もなく 空見守る


日暮れの 霧の空を
疲れた渡り鳥が飛ぶ
あの列の中の隙間は
もしや 私の為に

やがて鶴の群れとなり
青い夕もやを飛び立とう
大空へ 鶴の言葉で
世の人々 偲びつつ


訳詞:中村五郎
(ダーク・ダックス/鮫島有美子)

空を飛ぶ鶴の
群の中にあなたは
きっといるきっと
このわたしを待っている
激しいたたかいの日も
空に群れて飛ぶ
美しい鶴の群れ
あなたはそこにいる


いくさにいのち捨てても
死んではいない あなたは
きっといる きっと生きてる
このわたしを待っている
激しいたたかいの日も
空に群れて飛ぶ
美しい鶴の群れ
あなたはそこにいる


訳詞:北島真行

ご覧 暮れなずむ霧の空を
白い翼 連ねて
鶴の群れが流れて行く
静かに舞いながら

遥かな山脈(やまなみ)越えて
羽ばたく白い炎
あれは戦に散って燃える
帰らぬ兵士の魂(こころ)


呼びかける問いかける
貴方に私に
戦争の空しさと
生きる事の尊さを

冷たい静寂(しじま)に谺する
祈りと鐘の響き
応える術(すべ)なく佇む
頬を涙が濡らす


父よ母よ 妻よ子らよ
愛しあった 恋人よ
私達は哀しく還る
別れの時を告げて

春よ大地を抱けよ
平和よ永遠にあれと
大空高く歌いながら
命の 故郷へ

以下の三つは全部「見上げる」で始まる。
最後の二つは1行目が全く同じ。


訳詞:星野和正
(ボニー・ジャックス)

見上げる空を旅行く
白い翼の群れよ
はるかなる時を超えて
悲しみを今日も運ぶ

傷つき力尽き果て
戦の野辺に眠る
今は帰らぬ兵士らの
変り果てた白い姿


大空高く旅行け
疲れた翼の群れよ
夕暮れの霧に歌え
再び帰らぬ時を

大空高く旅行け
疲れた翼の群れよ
夕暮れの霧に歌え
再び帰らぬ時を

日は去り時春 今こそ
一人たたずむ僕も
つばさ広げ飛び立とう
飛び立とう 鳴きながら


訳詞と歌:山之内重美

見上げる夕暮れの空に
白い鶴の群れ
あれは遥かな戦の地に 
たおれ帰らぬ兵士(あなた)

ふるさとの空に抱かれ
翼広げて飛ぶよ
大空高く呼ぶ声 
愛しい人いずこ


空を行く渡り鳥の
群れとともにわたしも
いつの日か飛び立つだろう
この世の命終えて

ふるさとの空に抱かれ
翼広げて飛ぶよ
大空高く呼ぶ声 
愛しい人いずこ

ああ・・・・
空を行く鶴よ


訳詞:不明
(ロイヤル・ナイツ)

見上げる夕暮れの空に
失われた時を求めて
今日も悲しく飛ぶのか
白い鶴の群れ

あれはわたしを呼ぶ声
還らぬ友の祈り
翼ひろげてわたしを
いつまでも 待つのか

2番以後ロシア語
**********************
このブログを訪ねてくださった方々の
幸運をお祈りします。
ボクが2013年秋から10年間ずっと
さまざまな幸運に恵まれていますので、
幸運のおすそ分けができたら良いと思って
ブログを綴っています。

天使と悪魔の絶望名歌集
「世界が終わっても音楽と愛が残る」



歌:大前恵子(★印)
演奏:やぎりんカルテート・リベルタ(1〜16)
 高橋泉(チェロ)
 藤枝貴子(アルパ)
 清永アツヨシ(ギター)
 八木倫明(ケーナとナイ)

演奏:やぎりんトリオ・ケルティカ(17〜18)
 田中麻里(アイリッシュハープ)
 清永アツヨシ(ギター)
 高橋泉(チェロ)【ゲスト】
 八木倫明(ケーナとアイリッシュフルート)

読み語り:河向貴子(5と7)

1. ガブリエルのオーボエ
  (E.モリコーネ作曲)
2. 『銀河鉄道の夜』〜白鳥の停車場
  (藤平慎太郎・作曲)
3. ふるさと銀河に還る★
  (E.モリコーネ作曲/やぎりん作詞)
4. あなたの肩を借りたら
 【You Raise Me Up】★
 (B.グラハム作詞/R.ロヴランド作曲/やぎりん訳詞)
5. [読み語り]
  パラグアイの先住民族グアラニーの伝説
6. チョグイ鳥 (パラグアイ民謡)
7. [読み語り]
 ニュージーランドの先住民族マオリの伝説
8. ポカレカレ・アーナ★
 (NZマオリ民謡/やぎりん日本語詞)
9. 鳥の歌 (カタルーニャ民謡)
10. 聖母の御子★ (カタルーニャ民謡)
11. 愛は花、君はその種子★
  (A.マックブルーム作詞作曲/高畑勲・訳詞)
12. アマポーラ (J.M.ラカーリェ作曲)
13. もう一度愛の言葉を[切れた絃]★
  (ロシア民謡/やぎりん訳詞)
14. 鶴★【ウクライナ名歌】
  (R.ガムザートフ作詞/Y.フレンケリ作曲/やぎりん訳詞)
15. ワルツ 切れた絃 (ロシア民謡)
16. 小さなオルゴール (ウニャ・ラモス作曲)
17. 思い出のサリーガーデン★
  (アイルランド民謡/やぎりん訳詞)
18. 広い河の岸辺★
 (スコットランド、イングランド民謡/やぎりん訳詞)
19. ムーン・ダンス (清永アツヨシ作曲)[ギター+ケーナ]
CD番号
LIBERTAD-CD8686 【¥2800+税】
◎お申し込みは、やぎりんへ
yagirin88@gmail.com
税送料込みで¥3000にいたします。
◾️郵便振替口座
00180-2-612135 八木倫明(ヤギリンメイ)

《ふるさとのナナカマド》入りのアルバム

大前恵子×木星音楽団 セカンド・アルバム
鳥たちの詩、海の詩

1.くじらの子守歌  
 小笠原育美・作曲/相馬邦子・編曲
2.海はふるさと【大海啊故郷】
 王立平・作詞作曲/やぎりん訳詞
3.浜辺の歌
 林古渓・作詞/成田為三・作曲
4.アメイジング・グレイス
 英国賛美歌
5.ロッホ・ローモンド
 スコットランド民謡/相馬邦子・編曲/やぎりん訳詞
6.ふるさとのナナカマド
 スコットランド民謡/相馬邦子・編曲/やぎりん訳詞
7.聖母の御子
 カタルーニャ民謡
8.鳥の歌
 カタルーニャ民謡/やぎりん訳詞
9.つばめよ
 ナルシソ・セラデル・セビージャ作詞作曲/やぎりん訳詞
10.海はふるさと【大海啊故郷】
 王立平・作曲(インストゥルメンタル)
2017年8月25日
東京文化会館小ホールでのライヴ録音
11. 童神(わらびがみ)
 古謝美佐子・作詞/佐原一哉・作曲
12. コンドルは飛んで行く
 ダニエル・アロミーア・ロブレス作曲/やぎりん作詞
歌:大前恵子
演奏:木星音楽団
 小野美穂子【箏:十七絃/十八絃】  
 藤枝貴子【アルパ】
 三塚幸彦【尺八】  
 八木倫明【ケーナとナイ】
ゲスト
金亜軍【揚琴】 
古谷真未【チェロ】
★定価¥2600(+税)
★通販価格¥3000(送料¥180込み)




大好評♪絶賛出版♪
やぎりん(文)+小澤一雄(絵)
絵本『わくわくオーケストラ楽器物語』
(ポトス出版)¥1800(+税)