英国版『生きる』を見た。
3月31日の封切り日の朝いちに行った。
泣きました。
涙が出てきた理由はひと言では表せない。
いろんな思いがボクの心を渦巻いたのです。

脚本を書いたカズオ・イシグロさんは
12歳の頃にロンドンで
黒澤明監督の『生きる』を見て
衝撃を受けたそうです。

周りからの称賛を期待して行動してはいけない。
良いことを正しいやり方で行なったという
自分の達成感だけで十分なのだ。

そんな黒澤監督のメッセージは、若き日の
イシグロさんに大きな影響を与えました。
いつかこの映画の英国版を作るべきだ........と
ずっと思っていたが、まさか自分が
脚本を担当することになるとは........

「称賛を期待して行動してはいけない。
達成感だけで十分」というメッセージは、
ボクの心にズシンと響きます。

ボクの作詞家としての最初の仕事
《広い河の岸辺》の歌詞が出来上り、
自分たちで唄い始めたころ(2010年)
ボクはこの訳詞の良さを認めてくれる
歌手やお客様を必死に求めていました。

駆け出しの「作詞家」のボクが書いた歌詞を
すすんで唄ってくれる歌手は、当然いません。
著名な作詞家の作品であれば
「ぜひ私に唄わせてください」ということに
なるのでしょうが、ほとんどの人は
作品を見る目はなく、作者の名前だけで
判断するものです。
どの歌手にもボクが「頼んで」
唄ってもらっていました。
「仕事」として頼むわけですから、歌い手は
断ることもなく、坦々と唄ってくれました。
当然ですが
ボクが頼んだ仕事の中でだけ唄うのです。
自ら主体的に唄うわけではないので、
ボクのいないところで
《広い河の岸辺》を唄ってくれる歌手は
いませんでした。

ボクは専業音楽家になる前は、
クラシック音楽の業界にいましたので、
出会う歌い手のほぼすべてが、声楽家か
音楽大学の声楽科出身でした。

「仕事」として坦々と唄ってはくれましたが、
歌詞を書いたボクとしては、満足できる
歌い手にはなかなか出会いません。
オーケストラの事務局員として
仕事をしていると
歌手との仕事はときどきありますが、
大抵はイタリア語がドイツ語で唄います。
歌詞の世界をどれだけ深く表現しているのか?を
わかることはありません。
声が大きいか、音程は正確か.....それだけが
歌手を判断する基準でした。
2000席以上の大ホールで生声で唄うのが
声楽家の仕事ですから、
そんな判断基準しかなかったのです。

しかし、
自分が歌詞を書くという立場になってみると、
ただ良い声で唄っている歌手と、
歌詞を表現しようと工夫して唄う歌手の
違いがわかるようになりました。
具体的には
一番、二番、三番と歌詞がちがうのだから
唄い方も違うはずだろう、ということ。
シャンソン歌手が普通にやっていることを
試みる声楽家は、当時ボクが出会った中には
ほとんどいませんでした。

そこで、なんとかしようと思い、
自分のユニットでは
《広い河の岸辺》の三番でテンポを落とし、
「二人の舟は沈みかける......」とボクがハモって
三番だけデュエットするやり方を
定着させました。
今でも
「やぎりんのあのハモリが良かった」と
言ってくれるお客様もいらして、
ボクには光栄なことです。
苦し紛れにやっていたことでしたが、ボクも
この歌の歌詞の良さを認めてもらうために
必死でした。
最初に唄ってくれた歌手はやがて去りました。
結局ボクの歌詞の良さを認めてはもらえず、
ボクの前から去り、二度と
《広い河の岸辺》を唄うことはなかったのです。

そんなときに出会ったのが
声楽家の大前恵子さん。
彼女は楽譜を見て、そのとき手元にあった
電子ピアノで自分で伴奏しながら、
《広い河の岸辺》を唄ってくれました。
「これはいい歌ね♪」
ボクは、自信を持って書いた歌詞を初めて
声楽家に褒めてもらったのです。
大前さんは、ご自分の「歌声講座」でも
課題曲として採用し、毎回この歌を
参加者全員で唄ってくれたのです。
《広い河の岸辺》がボクのいないところで
独り歩きを始めた瞬間でした。
誰にも頼まれなくても
歌い手が唄いたくなる歌でないと
未来には残りません。

《広い河の岸辺》の歌詞の良さが
わかる人とわからない人の違いは何なのか?
誰かを真剣に愛したことがあるのか、
ないのか……その違いではないか、
と思いました。
大前さんに出会う前に、インディーズで
《広い河の岸辺》のCDを出したときに、
湯川れい子さんが賛辞をくださり
タスキの推薦文を書いてくださいましたが、
歌い手が認めてくださったのは初めてでした。
これがボクの人生を
変えるきっかけとなりました。

《広い河の岸辺》を氣に入った大前さんが
スコットランド民謡の
《ローモンド湖の美しい岸辺》
(ロッホ・ローモンド)や
カタルーニャ民謡の《鳥の歌》の訳詞をボクに
依頼してくれるようになったからです。

すでに前世紀のうちから日本語歌詞の楽譜が
複数出版されている有名曲の訳詞を
ボクに頼むとは♪
ボクには大変なプレッシャーでした。
先人の作品を越えて、大前さんが
これなら歌いたい♪という歌詞に
しなくてはなりません。
ボクの訳詞家・作詞家人生が始まりました。
まだクミコさんには出会う前の話です。

称賛を期待して行動してはいけない。
というメッセージはボクの心に響きます。
どうしても、誰かが認めてほしい.......
歌い手が歌詞に共感して
一番、二番、三番の
唄い方を自分で工夫してほしい、と
思ってしまうのです。
ボクが指導するのでなく、
歌い手が共感した証拠を
自ら表現してほしかったのです。
「いい歌詞だ」と思ったら歌い手は
自然とそうするはず。

それは容易に叶う願いではありませんでした。
しかし、地道に創作をつづけていると
稀に叶うこともあるということです。
こういう出遭いは
宇宙の意思からのギフトなのでしょう。
訳詞の言葉を練っていて、
朝焼けや夕焼けを見て、突然言葉が
降りて来るようなギフトです。

しかし、
大切なことは誰かの称賛を得ることでなく、
自分が成すべきことをすること。
自分にしかできないことを遂行する達成感。
他人の評価はどうでもよい。
ボクが自分らしい仕事をした、という
自信があれば、それがすべてなのです。
それを忘れかけていました。

称賛を期待しない生き方で、

飄々と生きられたらいい。

スナフキンの生き方ですね。

それがかっこいいと思えば、きっと
そういう風に生きられる。

やっぱりかっこが大事だから(笑)


この英国版『生きる』は名作だと思います。
ボクはまた見に行きます。
テーマ曲、劇中歌として主人公が唄う
(人生最後にも唄う歌)
The Rowan Tree(ナナカマドの木)は
ボクが2016年に
《ふるさとのナナカマド》として、
世界で初めて日本語訳詞をした歌です。
《広い河の岸辺》を最初に認めてくださった
大前恵子さんに唄ってもらおうと思って、
《ローモンド湖の美しい岸辺》に続いて
書いたスコットランド民謡です。
この名作映画の中で再会するとは、ボクはまだ
幸運の女神に
見放されていないと思いました(笑)。

来年2024年は、ボクの作詞家デビュー10周年。
10周年のコンサートは、大前恵子さんに
唄ってもらおうと思います。
それまでは元氣でいなくちゃ♪
来年の夏のことなので、まだ
会場も日程も未定ですが、
どうぞお楽しみに♪♪♪


《ラピュタ・シチリアーナ》動画リンク先

https://youtu.be/Odu3pM_cUfo

◆ご訪問ありがとうございます。このブログを
訪ねて下さった方々の幸運を祈ります。




大好評♪絶賛出版♪
やぎりん(文)+小澤一雄(絵)
絵本『わくわくオーケストラ楽器物語』
(ポトス出版)¥1800(+税)



2023年4月16日(日)2:00
立川市女性総合センター アイムホール
金子みすゞ生誕120年
こころの鈴の音コンサート♪
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★昔昔亭桃之助 亀有落語会
4月29日(土)午後2:00
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★まりりん・やぎりん・とーこ
読み語りアイリッシュ・コンサート
5月20日(土)午後2:00
亀有駅南口 藍ほーる


やぎりん作詞家デビュー9周年♪コンサート
歌:渡辺麻衣
ギターと歌:清永アツヨシ
ケーナ、ナイ、アイリッシュフルート:八木倫明
5月21日(土)午後6:00
銀座のシャンソニエ『月夜の仔猫』
¥5500(1ドリンク付き)


笑福亭里光  Roダん落語会
5月22日(日)午後2:00 喫茶Roダん
(一橋学園駅北口スグ)


やぎりんカルテート・リベルタ札幌公演
7月22日(土)午後1:00 札幌市民交流プラザ


やぎりんカルテート・リベルタ遠軽公演
7月23日(日)午後2:30
遠軽町芸術文化交流プラザ小ホール


やぎりんカルテート・リベルタ♪
自由の風 平和音楽会 2023年8月3日(木)
昼の部 午後2:00開演
夜の部 午後6:30開演
日暮里サニーホールコンサートサロン



天使と悪魔の絶望名歌集
「世界が終わっても音楽と愛が残る」
歌:大前恵子(★印)
演奏:やぎりんカルテート・リベルタ(1〜16)
 高橋泉(チェロ)
 藤枝貴子(アルパ)
 清永アツヨシ(ギター)
 八木倫明(ケーナとナイ)

演奏:やぎりんトリオ・ケルティカ(17〜18)
 田中麻里(アイリッシュハープ)
 清永アツヨシ(ギター)
 高橋泉(チェロ)【ゲスト】
 八木倫明(ケーナとアイリッシュフルート)

読み語り:河向貴子(5と7)

1. ガブリエルのオーボエ
  (E.モリコーネ作曲)
2. 『銀河鉄道の夜』〜白鳥の停車場
  (藤平慎太郎・作曲)
3. ふるさと銀河に還る★
  (E.モリコーネ作曲/やぎりん作詞)
4. あなたの肩を借りたら
 【You Raise Me Up】★
 (B.グラハム作詞/R.ロヴランド作曲/やぎりん訳詞)
5. [読み語り]
  パラグアイの先住民族グアラニーの伝説
6. チョグイ鳥 (パラグアイ民謡)
7. [読み語り]
 ニュージーランドの先住民族マオリの伝説
8. ポカレカレ・アーナ★
 (NZマオリ民謡/やぎりん日本語詞)
9. 鳥の歌 (カタルーニャ民謡)
10. 聖母の御子★ (カタルーニャ民謡)
11. 愛は花、君はその種子★
  (A.マックブルーム作詞作曲/高畑勲・訳詞)
12. アマポーラ (J.M.ラカーリェ作曲)
13. もう一度愛の言葉を[切れた絃]★
  (ロシア民謡/やぎりん訳詞)
14. 鶴★【ウクライナ名歌】
  (R.ガムザートフ作詞/Y.フレンケリ作曲/やぎりん訳詞)
15. ワルツ 切れた絃 (ロシア民謡)
16. 小さなオルゴール (ウニャ・ラモス作曲)
17. 思い出のサリーガーデン★
  (アイルランド民謡/やぎりん訳詞)
18. 広い河の岸辺★
 (スコットランド、イングランド民謡/やぎりん訳詞)
19. ムーン・ダンス (清永アツヨシ作曲)[ギター+ケーナ]

CD番号
LIBERTAD-CD8686 【¥2800+税】
◎お申し込みは、やぎりんへ
yagirin88@gmail.com
税送料込みで¥3000にいたします。
*******************

◎エッセイ『広い河の岸辺』
大変好評で、販売中ですドキドキ


クローバー必然と偶然が時を得て生み出した、
大いなる奇跡!
この歌は今後50年、
100年と歌い継がれて
日本の歴史に残るでしょう。
湯川れい子

本の表紙
ドキドキ やぎりんBOOK『広い河の岸辺』
(主婦と生活社)!!¥1000+消費税

コンドル合唱譜混声
やぎりん作詞《コンドルは飛んで行く》
やぎりん訳詞《つばめよ》
吉田桂子編曲
合唱譜が出版されました。
女声三部/混声三部の2種類。
それぞれに、易しい二部合唱の楽譜も
収録されています。
¥1300(+税)全音楽譜出版社


合唱譜女声
ドキドキやぎりん監修の合唱譜が発売(全音楽譜出版社)。
小川類・編曲
☆女声三部/二部
★☆混声三部/二部

《広い河の岸辺》(スコットランド民謡)
《思い出のサリーガーデン》(アイルランド民謡)

2曲セット。
定価¥1200(+消費税)


完成した絵本表紙
ドキドキ葉祥明さんの絵本(文:八木倫明)
『ひろいかわのきしべ』(国土社)
発売しました!!


絵本『ひろいかわのきしべ』推薦文の
帯付きは初版のみです。
クミコさんと湯川れい子さんの言葉が
載っています。

ドキドキクミコさん
いま世界にあってほしいと思うものが
この絵本の中にあります。それは
暗い空をてらす、希望の光です。

ドキドキ湯川れい子さん
この歌は、これからの時代に愛され、
その時代を踏み越えて、
未来に継承されていくと信じています。


クミコジャケ写
合唱のスコアもついた
《広い河の岸辺》CD
You Tubeには載っていない合唱バージョンが
このCDには収録されています。
女声合唱団「青い鳥」が素晴らしい演奏をしています。

★《広い河の岸辺》の本質
『小さな死』からの出発。
http://amba.to/1oBdnE3


★地球人が渡るべき河のこと
http://amba.to/1t0E3O6

***********************

「なにも知らない。なにもできない。
なにもない。
なのに、なにかを求めている。
自分の微力は、よく承知している。
とるに足りない才能についても自覚している。

でも、せっかく生まれて来たのだから
感動したい。共鳴したい。
おなじ心のひとに会いたい。

それがせめて
みじかい生命の軌跡の中で
ぼくらが望むものではないか。

ところであなたは・・・。


★『詩とメルヘン』サンリオ刊
1982年4月号編集後記やなせたかし
◎やなさたかしさんの限りない優しさ
*********************
★エーリッヒ・フロムの愛の論理と音楽