Yakiniku Simulation



人から焼肉を奢ってもらった。

微かに話題の焼肉を焼くゲームだ。
焼肉と言うからには例えデジタル焼肉でもビールを飲まねば無作法という物。
飲みながらプレイせねば。

焼肉、それは最高の快楽。 
焼肉屋、それは僕にとって最も近場な異世界。 

安々でも安楽亭でも牛角でも、或いはもっと高い店でもそれは同じだ。 

焼肉屋のドアを開くと、神社仏閣やディズニーランドに入ったときのような"空気の変わり目"を錯覚する。  
ドアの境界のこちら側とあちら側が少しだけ違う世界だ。 
それは僕にとって少しだけ呼吸のしやすい空気が存在する世界だ。
  
生きている時間の大半を半無職として過ごし、アウェーな空気を吸っている僕にとって、
焼肉屋とは、数少ない"こちら側"(異常者)と、"あちら側(現実的な人々)"の空気が交差する異世界なのだ。 

ドアを開け、カウンターに座り、清潔なおしぼりで手を拭き、油ぎったベルを鳴らし、
角張ったラミネート加工を施されたメニューを確かめつつ、生ビールを注文する。 

参拝の前に手水で口をすすぐようなものだ。
現実世界の穢れをこの1杯で自らの奥底にすすぎ落とし、焼肉屋の空間に調和するための神聖な儀式なのだ。 

なんだかんだ現実に生きる仲間と乾杯し、ビールを1杯煽り、肉が届けば既に僕は焼肉屋の魔法にかけられている。
焼肉屋の空気に歓迎された者がだけが纏うことのできるバフが付く。  

普段あまり饒舌ではない僕が、酒を飲み、考えすぎるほどに考えすぎる思考にブレーキをかけ、肉を食いたいという原始的な欲求によって、お調子者の陽気な厄介おしゃべりマシーンへと変身する(酔っ払いとも言うらしい)  

脳内フィルターによって濾過されすぎて抽出されない言葉が、
心で流した涙を溜め込んだダムが決壊するが如く口から大放流される。 

自分の好きなことの話や他人の今ハマっている物、
日頃の苦労話などを肉と同時に飲み込み、ビールで流し込む。

この瞬間、"今だけは人のフリではなく、僕は人間なのだ"と思う。
他人と同じ空間、楽しみを共有し、社会的システムに組み込まれることができている。
普通の人間の1人だという安心感が得られる。

寿司屋でも落ち着いたバーでもない、酒と喧騒と微かな煙に囲まれた焼肉屋でのみ味わえる不透明で純粋な安心感だ。
きっとそれはヒロイックな感傷に浸る僕だけではなく、同じ肉を囲み、焼ける時間を共有する人間たちも少なからず抱いている安心感だと思う。

そして何より焼肉はうまい。
僕もたまに嘘をつくし、他人は僕より嘘をつくが、味覚は嘘をつかない。
うまいものはうまい。
これより嘘偽りのない感情は他にはあまりない。

三大欲求のうち、眠くても眠くないフリをしなければならない時はある。
エロい気分でも抑えなければならない場面ももちろんある。
しかし、うまいものをマズいと言わなければならないシーンなんて殆どない。

うまいものはうまく、皆がうまいと共通認識でわかりきっている焼肉は、
互いの共通点を再確認する点でもコミュニケーションとして最高峰の娯楽なのだ・・・


・・・・・・・・・?

もともとなんの話をしてたんだっけ・・・?
なんで焼肉の話してんだっけ・・・

ああ、そうだ、なんか変なゲームもらったんだ・・・
僕はYakiniku Simulationをプレイしていたんだ・・・

酒も飲んでいるし、饒舌になっているはずだ。

ゲームの話であるなら水を得た魚、肉と酒を得た僕だ。

Yakiniku Simulationの話をしなければ。

えっと、起動するとモード選択が出ます。


フリーモードではいろいろな肉を自由に焼肉を焼くことができ、

チャレンジモードでは焼いた肉の焼け具合でスコアを競うことができます!

 

 

・・・?

5分でゲーム内の全てのコンテンツを遊べてしまったぞ・・・?

妙だな・・・酒も飲んでいるし、好きなこと、ゲームの話ならば無限に出来るはず。

それこそ他人に"校長先生のお話"と揶揄されるくらいには。

 

で、あるならば導き出される答えは1つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これゲームじゃないんじゃない???

本当に純粋な焼肉のシミュレーターに遊び心でスコアアタックついてるだけじゃない???

ちょうど1年前くらいにブログに書いたMountainより遊べる要素ないぞ???

 

 

参った、本当に語れることが何もない。

何もないゲームにおいてMountainと同列に語れる物が存在するとは思わなかった。

あのゲーム(?)には少なくともピアノとランダムのイベントがあった。

本当に肉が焼けるのが少し早い焼肉シミュレーターだ。

 

・・・・・・・・

 

ただ、2つだけ評価できるポイントがある。

1つは、ゲーム設定で肉を食べる時の咀嚼音をオン・オフ出来ることだ。

 

咀嚼音を不快に感じるお友達も快適にYakinikuをSimulationすることができる。

 

もう1つは、確かに焼肉がめちゃくちゃ食べたくなることだ。

こんなゲームに200円ちょい出すなら焼肉安々で290円のペラペラな安々カルビを食べたほうが100倍幸せになれる。

 

 

いや、もしかしたら自分でプレイするゲームではなく、気になるあの人を焼肉に誘いたいがうまく行きそうもない時に、このゲームを送ってプレイさせ、事前に焼肉を食べたい気分にさせるためのツールとして活用できるかもしれない・・・

 

たぶんこのゲームやらせた時点で脈はないと思います!