それは、父さんと釣りに行けなかったこと。
ボクが小学生だった頃、父さんはよく釣りに連れて行ってくれた。
今でも思い出す、あの夏の暑い日。
知り合いの漁師さんから、小舟を借りて、お休みの度に連れて行ってくれた。
小舟には屋根も無く、暑くて暑くて・・・。

ボクが高校生になって、友だちと出かける日が増えるにつれて、
父さんと釣りに行く機会は少なくなった。
大学生になってからは、親元を離れたがゆえ、
一度も行かなくなっていた。
ボクが社会人になって、
実家に帰省した際に、父さんがぽつりと言った。
「今度、釣りに行こう」
未熟な若者、というかバカ者のボクは、いつでも行ける、と思っていて、
地元の友だちと遊んでばかり。
その機会はなかなかやってこなかった。
月日は流れ、かれこれ、二十年。
結局、釣りに行かないまま、父さんは帰らぬ人となってしまった。
もう行けない。
帰省したあるとき、母からこんなことを聞いた。
「お父さん、照れ屋だから自分から言わんかったけど、
あんたが帰省したときは、いつも釣り道具出して、手入れしてたんよ・・・」
ボクは、やっと気付くことができた。
あの夏の暑い日は、もう二度とこない。

ご両親が、まだ健在であるアナタへ。
もし、今、ご両親を疎ましく感じているとしたら、
どうか思い出してください。
世界中どこを探しても、
アナタのご両親は、目の前にいるお二人しかいない。
そして、ご両親と過ごす「今日」と言う日は、
どんなことをしたって再び経験することはできない。
お子さんをお持ちのアナタへ。
もし、今、子育てでうんざりしているとしたら、
どうか思い出してください。
お子さんが2歳のときは、今しかない。
お漏らしした布団を干す、なんていう幸せな経験は、
今しかできません。
お子さんが小学生のときは、今しかない。
成績が下がったんだから、勉強しなさいー!って怒る、なんていう幸せな経験は、
今しかできません。
お子さんが高校生のときは、今しかない。
反抗期になって、憎まれ口を聞かされる、なんていう幸せな経験は、
今しかできません。
過ぎてしまってからでは、遅すぎる。
今をしっかり噛み締めないと・・・。
