高校2年生の頃の事。
地元では、珍しく大雪が降った。
電車の止まる可能性があるために、学校が早くに下校を促した。
降り積もるにしたがって、音が少しずつ吸収されて、遠くの方へ追いやられたような感じをおぼえる。
駅では、ポイントの氷つきを防ぐために燃やされたランタン。
列車が去って行った後にぼやけて見える赤いテールランプ。
冷たく光る真っ青な信号。
全ての風景を詩的に捉えることができた、あの頃の感性を今も持っているのだろうか?
雪に埋もれて行く田んぼ
白く 白く
その日、帰宅するとしばらくして電車が止まった。
そんな晩に限って、あいつから電話がある。
泣きながら「会いたい」って言う。
何があったのか解らないけど、情緒不安定なあいつに時々そんな事があった。
雪の中燃えるランタン
にじむ赤いテールランプ
冷たい青い光
遠くに追いやるような音を吸い込む雪
止まった電車
「行けない」
「行けない」
「嘘だよっ・・・」と言って、いきなり切られる電話
「行けない」
「会いたい」
交錯する想いは、雪の中に消えて行く。
東北に引っ越して10年程度経つ。
雪には慣れたけど、凍った路面では転倒する。
あの時の不可解な電話の意味も、ちゃんと今では解る。
解らない事は、雪を見ると切なくなるこころ。
去っていく赤いテールランプのように、尾を引きながら雪の中に残り続ける。