感覚異常確かに、上りの電車が来た音がした。けれど、少し早すぎる。少しだけあわてて歩く、踏切の音。秋の低くなった朝日に、照らされた軒先の干し柿。ハレーションをおこしているように見える、2階建ての事務所の白壁。風向きが起こした、マジック。下り電車の音が、何かの建物に風に流され反射して、上り方面からの音に聞こえた。その混乱が招く、普段の代わり映えのない朝の、感覚異常。