「自分のことを自分で決めていい」——その大切さ
性教育の中でもとても重要な視点の一つが、「性のプライバシー」と「自己決定権」です。
特に知的障害のある子どもたちにとっては、この2つを丁寧に伝えていくことが、将来の自立やトラブル防止につながります。
「わたしの体はわたしのもの」
「嫌なことには“いや”と言っていい」
「触られたくないところを守るのは、当たり前のこと」
こうした考え方は、大人でもつい忘れてしまいがちですが、子どもが“自分の存在を尊重していい”と感じるために不可欠です。
プライバシーを理解するための基本ステップ
知的障害のある子どもたちは、「プライバシー」という抽象的な言葉を理解するのが難しい場合もあります。
そのため、実際の行動と結びつけて、具体的に教えていくことが大切です。
1. プライベートゾーンの理解
- 下着で隠れる部分は「人に見せない」「触らせない」「自分だけの大事なところ」
- イラストや人形を使い、触れていい場所・ダメな場所を視覚的に伝える
- 性別による違いも、「誰でも違ってあたりまえ」と肯定的に教える
2. プライベートな行動の場所
- 「トイレ・お風呂・着替えはひとりでするもの」
- 「人前で下着を脱いだり、体を触ったりしない」
- 行動カードや「この場所ではOK/NG」表で、具体的な場面ごとに学ぶ
3. 情報にもプライバシーがある
- 名前、住所、電話番号、通学ルートなども「むやみに教えない」ことを練習
- インターネットやSNSの写真・動画の取り扱いも、“勝手に載せない・撮らせない”ことを伝える
自己決定の力を育てるには
自己決定は、単なる「わがまま」とは違います。
自分のことを自分で考え、選び、責任を持つという経験の積み重ねで育まれます。
1. 小さな選択の積み重ね
- 朝、どの服を着るか
- 給食で何を先に食べるか
- 放課後に何をして過ごすか
こうした日常の小さな「選ぶ」経験を通して、「自分で決めてもいい」「決められるんだ」という感覚が育っていきます。
2. NOと言える練習
- 「いやなことは、いやって言っていい」
- 実際のロールプレイで、「こんなときはどうする?」と練習
- 子どもの「いやだ」の気持ちを大人が尊重することが、信頼の土台に
3. 同意の重要性を伝える
- 「手をつなぐとき」「ハグするとき」なども、お互いの同意が必要だと伝える
- 嫌がっている子に「無理に近づかない」「無理に遊びに誘わない」ことも練習
支援者や保護者の関わり方
本人の自己決定を大切にすると言っても、放任ではうまくいきません。
支援者や保護者が「一緒に考える」「選びやすい形に整える」などのサポートを通じて、自分らしく選択できるように導いていくことが大切です。
1. 安心して「間違えられる」環境を
- 「選んだ結果がうまくいかなかった」ときも、怒らずに「どうしたらよかったか」を一緒に考える
- 失敗を責めるのではなく、次の機会につなげる
2. 本人の声を聴く姿勢を
- 意思がはっきり言えない子にも、表情・しぐさ・行動を読み取って尊重する
- 代弁するのではなく、「こう思ってるのかな?」「これでいい?」と確認しながら進める
性教育の中で“選ぶ力”を育てる意味
性教育というと、「性行為」や「体の変化」だけに目が向きがちですが、実はその根底には「自分を守る力」「他者と心地よく関わる力」があります。
「選ぶ」「断る」「話し合う」といった力は、まさにその土台です。
その力を育てていくには、家庭・学校・福祉の現場が連携し、本人のペースに合わせた支援を積み重ねていくことが必要です。
小さな「選ぶ」経験が、子どもたちの未来を支える「生きる力」につながります。
さいごに
「性の自己決定」は、誰にとっても当然の権利です。
しかし知的障害のある子どもたちにとっては、それを実現するための支援が欠かせません。
「あなたの体は、あなたのものだよ」
「いやって言ってもいいよ」
そんな言葉を、日々の中で当たり前に伝えていける関係性を築いていくことが、性教育の出発点になるはずです。