「どう伝えるか」が大切な理由

知的障害のある子どもたちに性について伝えるとき、「何を伝えるか」と同じくらい大切なのが「どう伝えるか」です。
性の話題は抽象的で、誤解が生まれやすく、また家庭や文化の影響も受けるため、子どもの理解の仕方に丁寧に寄り添う必要があります。

視覚的な教材の力

性教育において、視覚支援は非常に効果的です。例えば以下のようなツールが活用できます。

  • 絵カード:体の部位、表情、感情、行動などを視覚的に示すことで、イメージがしやすくなります。
  • シンプルなイラスト:写真よりもイラストの方が抵抗感が少なく、注目すべき点が明確になります。
  • 人形・フィギュア:ぬいぐるみや関節が動く人形などで、触れ方や距離感を実演的に学べます。
  • 絵本や紙芝居:ストーリー仕立てにすることで、子ども自身を投影しやすく、感情移入もしやすくなります。

特別支援学校では、「プライベートゾーン」を示す絵カード、「ここからは自分だけの場所だよ」という視覚シールなどを活用して、概念の定着を図る場面が多く見られます。

伝える言葉の選び方

子どもたちが持っている語彙や理解力に合わせて、言葉の選び方を工夫することが大切です。

  • 専門用語よりも日常語を使う:
    例:「陰茎」→「おちんちん」、「陰部」→「大切なところ」など、子どもが日常的に聞いたことがある表現を使いましょう。
  • なるべく短く、具体的に:
    「他の人の体をさわってはいけないよ」「お風呂は一人で入る練習をしようね」など、場面が思い浮かぶ言い方が効果的です。
  • 否定より肯定を:
    「それはだめ!」ではなく「こうしたらいいよ」と示すことで、混乱や恐怖感を和らげます。

タイミングの工夫

性の話題を伝えるときには、「教える側の都合」ではなく「子どもにとっての意味があるタイミング」を意識することが重要です。

  • 困った行動が起きた直後: 例えば、公共の場でズボンを下ろしてしまったなど、その場面をきっかけに伝えると、理解が深まりやすくなります。
  • 身体の変化が出てきた時期: 思春期に入る頃、体毛や生理など具体的な変化を感じたときが、性教育を始める大きなチャンスです。
  • 定期的な振り返りの時間: 一度で終わらせるのではなく、日常の中で繰り返し触れることで、知識の定着や自信にもつながります。

ステップアップの工夫

子どもの理解度に応じて、性教育も少しずつステップアップさせていくことが大切です。

  1. まずは「自分の体を大切にする」から:
    手を洗う・清潔に保つ・服を着るなどの日常生活スキルの中に、「性」を含めたケアの意識を育てましょう。
  2. 「違いを知る」:
    男女の体の違いや、誰に見せてもいいのかダメなのかなど、区別を丁寧に伝える必要があります。
  3. 「相手との関わり方を学ぶ」:
    触れ合いのルール、プライベートゾーンの理解、NOと言ってもいいことなど、他者との境界を意識できるよう支援します。

さいごに

性教育は、急いで一度に教えるものではなく、子どもの育ちに合わせて少しずつ積み重ねていくものです。
特別支援学校や福祉施設でも、家庭と連携しながら、子どもが自分自身を大切にし、他者と安心して関われるよう、日々の支援を丁寧に積み重ねています。

教材の工夫、言葉の選び方、タイミング、そしてステップアップの仕組み――これらを意識することで、性教育はもっと安心できるものになります。
一緒に、子どもたちの「わかる」「できる」「安心できる」を育んでいきましょう。