【第1回】なぜ排泄がうまくいかないの?
〜「まだオムツ?」と責めないで。子どもが排泄で困る理由を知る〜
知的障害のある子どもたちにとって、「排泄の自立」は多くのご家庭で大きな課題となります。
オムツがなかなか外れない、トイレに誘っても拒否される、外出先での失敗が怖くて行動範囲が狭まる……。
こうした悩みは、親御さんにとって“人に相談しづらく”、“日常生活に直結する”大きな負担です。
●「できない」のではなく、「いくつかのハードルがある」
排泄の課題には、以下のような背景があることが多いです。
- 身体的な要因:膀胱の発達、便秘や下痢、排尿間隔が短いなど
- 認知的な要因:尿意・便意の理解が難しい、自分の感覚と行動の結びつきが弱い
- 環境的な要因:トイレの場所が怖い・苦手、トイレの流れる音への感覚過敏、視覚的に分かりづらい
- 心理的な要因:トイレでの失敗経験がトラウマになっている、成功体験が少ない
これらが重なって、「トイレで排泄すること自体が不安・不快・わからない」となっているケースが多く見られます。
●「年齢=排泄の自立」ではない
保護者の方が一番気にするのが、“年齢に見合った排泄の姿”です。
同年代の子がトイレで排泄できるのに、自分の子はまだオムツ。
保育園や学校の先生からも「家でどんな様子ですか?」と聞かれ、自信を失ってしまう……。そんな声を多く耳にします。
しかし、知的障害のある子どもたちにとって、発達のペースは本当に人それぞれ。
排泄に関しても「3歳でオムツが外れる」「5歳までに夜のオムツが取れる」といった一般的な目安が、必ずしも当てはまりません。
それでも焦ってしまうのは、「親の責任」と感じてしまうから。
まずは、うまくいかない理由が“本人の努力不足”ではないことを、支援者と共に理解していきましょう。
●排泄が自立するために必要な「7つの力」
排泄がうまくいくためには、以下のような「見えない力」が関わっています。
- 尿意・便意を感じ取る感覚
- 「行きたい」と思った時に、行動に移す判断力
- トイレまでの移動能力(身体的な移動、道順の理解)
- 衣服の上げ下ろし(手先の力、順序の理解)
- 座って排泄する姿勢保持
- 出し終えたことの感覚の認知
- 流す・拭くなどの後始末の手順
これらのうち、いくつかが苦手であったり、つながりが弱かったりすると、なかなか排泄がスムーズにいかないのです。
特に、知的障害や発達障害を持つ子どもたちの中には、「自分の体の感覚に鈍い」「行動の順序がわかりにくい」「急な対応が難しい」といった特徴があることもあります。
●「支援」のスタートは、課題の“切り分け”から
排泄の支援は、「オムツを外すこと」や「トイレでできるようにすること」だけが目的ではありません。
大切なのは、「どの部分が本人にとって難しいのか」を丁寧に見つけていくこと。
たとえば…
- 本人は尿意を感じていない?
- 感じていても伝える手段がない?
- トイレに行きたいけれど、トイレそのものが苦手?
- 衣服を脱ぐのが難しくて、失敗につながっている?
このように課題を細かく分けていくことで、必要な支援が見えてきます。
●最後に:排泄の支援は「親子の尊厳」に関わること
排泄の悩みは、家庭の中だけで抱えるにはあまりにも大きな負担です。
時に保護者は「恥ずかしい」「私のせいかもしれない」と感じ、自分を責めてしまいます。
でも、誰も悪くありません。排泄の課題は“発達の特性”であり、“個人の問題”ではないのです。
子どもが少しずつ自分の身体と向き合い、自信を持てるように、支援者と共に取り組んでいきましょう。