「家庭ではどこまで話せばいいの?」「学校に任せていいの?」——性教育に関して、保護者と学校のあいだで“距離感”を感じることは少なくありません。
けれど、性に関する支援は、家庭と学校が協力してこそ、子どもの安心感と学びの定着につながるものです。今回は、家庭と連携して性教育を進めていくうえで大切にしたい視点を紹介します。
◆「性教育=特別なもの」ではない
「性教育」という言葉に、強い抵抗感を持つ保護者の方もいます。なかには、「うちの子にはまだ早い」「性的な話は避けてほしい」と希望される方も。
しかし、性教育とは決して特別な内容ではありません。日常の中の「プライバシー」「体の清潔」「他者との距離感」なども、すべて性に関わる教育です。
保護者に伝えたい視点:
- 「性教育=性交渉の話」ではない
- 着替え・排泄・体調管理も“性”の学び
- 安心できる環境でこそ、子どもは育つ
学校から保護者に説明する際は、「日常生活に根ざした支援」であることを丁寧に伝えることで、不安が和らぐこともあります。
◆「家庭で話すのが難しい」と感じている保護者も
保護者の方の中には、子どもへの性の伝え方が分からず、「どう話せばいいか分からない」「話題にしたくない」と悩んでいる人も多くいます。
特に知的障害のあるお子さんの場合、どこまで理解しているのか、誤解を与えず伝えるにはどうしたらいいのか、不安が尽きません。
そんなとき、「学校でもこういう支援をしていますよ」「家庭ではこういう言葉で伝えるのがおすすめです」といった、具体的なヒントを学校側から提案することが有効です。
連携の工夫例:
- 保護者会や個別懇談で「性と生」の支援について話す時間をつくる
- 「おうちでこんな言葉かけをしてみてください」と例文付きで提案する
- 絵カードやワークシートを家庭用にアレンジして配布する
◆“話せる雰囲気”づくりを支援の第一歩に
性にまつわる話題は、どの家庭でも“重く”なりがち。だからこそ、「日常の会話の中で、自然に話題にできる雰囲気」をつくることが大切です。
たとえば、お風呂で「大事なところは自分で洗おうね」と伝えたり、テレビの場面を見て「これはいい関わり方だね」と話したり……そんな小さな言葉の積み重ねが、子どもにとっての性教育になります。
支援のヒント:
- 「どうやって言えばいいか分からない」保護者に、短くて使いやすいフレーズを教える
- 「こう言うと子どもが分かりやすかった」実例を共有する
- 家庭で困ったときの相談窓口(学校や専門機関)をあらかじめ紹介しておく
◆学校と家庭が同じ価値観でつながるために
性教育で最も大切なのは、子どもを「大切な存在」として尊重する視点を、学校と家庭が共通して持つことです。
どんなに丁寧に伝えても、家庭と学校で真逆のメッセージを受け取れば、子どもは混乱します。
たとえば、
- 学校では「生理は自然なこと」と教えているのに、家庭では「恥ずかしいこと」と言われる
- 学校で「触られてイヤなときは言っていい」と習ったのに、家庭で「我慢しなさい」と言われる
このような食い違いは、子どもの“自己肯定感”や“安心感”を揺るがすことにもつながりかねません。
学校の役割:
- 性に関する支援の「ねらい」や「考え方」を保護者と共有する
- 決して「上から教える」のではなく、あくまで協力関係として提案する
- 対話の中で、お互いの考え方をすり合わせていく
◆おわりに
性教育は、「親がやるべきこと」「学校に任せたいこと」と線引きするのではなく、子どもの幸せのために、みんなで取り組むものです。
家庭でできること、学校でできることはそれぞれ違っても、子どもを真ん中に置いた“あたたかなチーム”があれば、それが最大の支援になります。
次回は、「性と生を支える支援者の視点」について、私たち支援者が持っておきたい心構えについて考えたいと思います。