【第3回】「できない」の前に環境を見直す
〜安心して排泄できる“トイレの環境”とは〜
子どもがうまく排泄できないとき、「本人の理解が足りないのかも」「やる気がないのかな」と感じてしまうこともあります。
でもちょっと待ってください。
「環境」が子どもを困らせていないか?
まずはそこから見直してみませんか。
●「トイレが怖い」「落ち着かない」…子どもの声を代弁すると?
多くの子どもにとって、トイレは少し特別な空間です。
音、におい、狭さ、静けさ、逆に反響音が大きすぎる…
大人が気にしないことが、子どもにとってはストレスの元になります。
たとえば、こんな声が聞こえてくるかもしれません:
- 「トイレの手洗いの音が怖い」
- 「電気がまぶしい」
- 「誰かが近くにいると落ち着かない」
- 「壁の模様が気になる」
特に感覚過敏のある子や、空間の変化に敏感な子は、トイレそのものが「嫌な場所」になってしまうことがあります。
●子どもにとっての「安心できるトイレ」って?
安心して排泄するためには、次のようなポイントを整えてみましょう。
- 音の工夫:手洗いの音・水洗音が苦手なら、ハンドルを押さえて流す、音楽をかけるなど。
- 光の調整:明るすぎる照明は間接照明に。可能であれば暖色系の光に変更。
- においの配慮:芳香剤の香りが強すぎないように注意。無臭の消臭剤などが◎。
- 空間の構造:個室に安心感があるか?仕切りの高さや扉の閉まり具合は大丈夫?
- トイレの高さ:足がぶらぶらして不安定になっていないか?足台を使うことで安心感アップ。
トイレの“物理的な負担”が減ると、子どもがトイレに行くこと自体へのハードルが下がります。
●視覚支援で「何をする場所か」を明確に
トイレが「どんな場所か」「何をすればよいか」が曖昧だと、不安や混乱につながります。
視覚支援を取り入れることで、安心して行動できる子も多くいます。
たとえば:
- 写真やイラストで流れを示す(例:「ドアを開ける → ズボンを下ろす → 座る → 拭く → 流す → 手を洗う」)
- トイレ使用中のマークを出す(使用中/使用可の表示)
- 好きなキャラクターのトイレマークを活用して、「安心できる場所」へ変える
●“誰にも見られない”が大事
特に就学年齢以降になると、排泄行動を見られたくないという気持ちが強くなる子も増えてきます。
これは「性の自覚」の一歩であり、ごく自然なことです。
集団のトイレであれば:
- 個室の鍵がかかるか確認する
- できれば1人ずつ入るようにする
- 支援が必要なときも、「声かけて入るね」と前もって伝える
「見られていない」「安心して出せる」
この感覚があるだけで、排泄の成功率が大きく変わることがあります。
●家庭でもできるちょっとした工夫
家庭でも、こんな工夫が役立ちます:
- トイレの床に滑り止めマットを敷く
- 便座が冷たいと感じる子には便座カバーをつける
- 補助便座や踏み台で「安心して座れる」姿勢をつくる
- おもちゃを持ち込まない(トイレは遊ぶ場所ではないことを明確に)
小さな配慮が、子どもにとっての「トイレに行ってもいいんだ」「怖くないんだ」という気持ちを育ててくれます。
●最後に:子どもの困りごとは、“悪意”ではなく“環境のミスマッチ”
トイレに行きたがらない、座ってもすぐ立ってしまう…
そんな行動の背景には、「トイレが落ち着かない」「怖い」「わからない」など、環境への反応があることも多いのです。
排泄のトラブルに直面したとき、「この子はわがままなんだ」「ちゃんとしないからダメなんだ」と責める前に、
“この環境は、この子にとって安心できているかな?”
と見つめ直してみてください。
次回は、実際にトイレトレーニングを始める際の「ステップ」と「声かけの工夫」についてお話しします。