【第4回】トイレトレーニングのステップと声かけ
〜「できた!」につなげる支援のくふう〜


排泄の自立をめざすうえで、多くの保護者や支援者がぶつかる壁のひとつが「トイレトレーニングって、いったい何から始めたらいいの?」という疑問です。

特に知的障害や発達障害のある子どもたちの場合、「トイレに行く」という一連の流れを理解して実行するまでに、長い時間がかかることもあります。

焦りやプレッシャーのなかで、「結局、何を教えたらいいのかわからない」と感じる方も少なくありません。けれど、排泄は誰にとっても“生活の一部”であり、支援には必ず道筋があります。

今回は、「ステップを踏むこと」「伝え方に工夫を加えること」を中心に、トイレトレーニングを日常に取り入れていく方法を考えていきます。


■ ステップ①:「気づく」「伝える」を支援する

排泄支援の最初のステップは、「排泄したい」という感覚に子ども自身が気づくこと、そしてそれを周囲に伝えることです。これは排泄の“入り口”の力であり、ここが育たなければ自立に進めません。

けれど、知的障害や発達の遅れがある子どもの中には、「自分のお腹の状態や膀胱の感覚に気づく力」が育ちにくい場合があります。まずはそこに焦点を当てた支援が必要です。


●「そろそろ出そうかな?」を知らせる工夫

  • 朝起きたとき、食後、外遊びのあとなど、「出やすい時間」を意識してトイレに誘導する。
  • 日課に組み込むことで、「この時間に行く」と予測しやすくなる。
  • トイレ前に「おしっこ出る?」「うんちかな?」と声かけして意識を向ける。

ポイントは、排泄の感覚に子ども自身が気づきやすい環境をつくることです。


●「伝える手段」があるかを見直す

言葉で「おしっこ」と言えない子でも、絵カードやジェスチャー、タイマーの使用など、意思表示の手段を支援者が一緒に育てることで、トイレへの移行がスムーズになることがあります。

「出そうなときに言えたらすごいね」「知らせてくれてありがとう」と声をかけ、伝える経験を積み重ねていきましょう。


■ ステップ②:トイレの「やり方」を伝える

次のステップは、「トイレでの排泄動作」ができるようになることです。

大人にとっては当たり前の動作も、子どもにとっては複雑なプロセスです。「便座に座る」「パンツとズボンを下ろす」「終わったら拭く」「流す」「手を洗う」……たった一回の排泄に5つ以上の工程があります


● 視覚的に順番を伝える

口頭で「ズボン脱いで、便座に座って、終わったら拭いて……」と伝えても、理解や記憶が追いつかない子どもには難しいものです。

  • 写真を使った「トイレの流れ」表を貼る
  • 1枚ずつめくれる順番カードで視覚的に伝える
  • 人形を使ってトイレの動作を再現し、見せる

といった方法で、「次は何をするのか」がわかるようにします。動作を1つずつ区切って練習することで、子ども自身の成功体験にもつながります。


●「できるところから」でOK

最初から全部できることを目指すのではなく、たとえば「ズボンを下ろすだけやってみよう」「終わったら水を流してみよう」など、1工程ずつ練習を積み重ねることが大切です。


■ ステップ③:「失敗」を怒らない仕組み

トイレトレーニングの過程で避けられないのが「失敗」です。けれど、失敗を責められる経験が続くと、子どもは「トイレ=怖い」「パンツ=不安」と学習してしまいます。

● 大人の態度が安心感をつくる

たとえお漏らししても、「大丈夫だよ。次はトイレでできるといいね」と声をかけることで、子どもはチャレンジをやめなくなります。

「失敗しても受け入れてもらえる」「次はがんばろう」と思える関係性が、トイレトレーニングには欠かせません。

● 保護者自身の気持ちも大切に

とはいえ、毎日の洗濯や掃除、周囲の目にさらされながら支援を続けることは、想像以上に大変です。「もう限界」と感じる日があって当然です。

自分を責めすぎず、時には支援者や医療機関に相談するなど、ひとりで抱え込まないことが何より大切です。


■ ステップ④:声かけの工夫で「できた」を引き出す

トイレトレーニングでは、「いつ、どのように声をかけるか」が子どもの行動に大きく影響します。

● タイミングは「前」と「後」

声かけには「トイレに行く前の声かけ」と、「終わった後の声かけ」があります。それぞれに目的があります。

  • 行く前:「おしっこ出るかもしれないね」「トイレ行ってみよう」→ 排泄意識を育てる
  • 終わった後:「出たね、気持ちよかったね」「自分でできてすごいね」→ 成功体験を肯定する

強制する声かけではなく、選択肢や安心感を含んだ言葉が効果的です。

● 否定ではなく「期待」を伝える

「なんで漏らすの?」「また失敗?」という否定的な言葉ではなく、「きっと次はトイレでできるよ」「おしっこって教えてくれてうれしいな」といった未来への期待を込めた声かけが、子どもを前向きにします。


■ 「できた!」の積み重ねが自信になる

トイレがうまくいったときには、子ども自身にとっても大きな達成感があります。「出たね」「トイレでできたね」という言葉に加えて、表情や拍手、ごほうびシールなどを使って、「やってよかった」と思える成功体験にしましょう。

● 成功経験は視覚化して見える形に

1週間トイレで成功したらカレンダーにシールを貼る、スタンプカードを使うなど、達成感を視覚的に感じられる仕掛けも有効です。自信を積み上げる工夫が、次の一歩につながります。


■ まとめ:トイレトレーニングに「早すぎる」も「遅すぎる」もない

トイレトレーニングは、「○歳までにできなきゃいけない」というものではありません。大切なのは、子どもの発達や理解に合わせて、ひとつひとつの段階を支えていくことです。

うまくいかない日があっても、それは「失敗」ではなく、「学んでいる途中」の姿。子どもは、周りの大人のまなざしに応えながら、少しずつ成長していきます。


次回【第5回】では、外出先での排泄の不安と支援について掘り下げます。「トイレが怖くて入れない」「間に合わないかもしれない」といった子どもたちの不安にどう寄り添うか。実践的な工夫を紹介していきます。