知的障害児が通う特別支援学校のしくみと役割


「特別支援学校って、どんな子が通っているの?」「普通の学校とどう違うの?」——特別支援学校に関心を持つ方から、よく寄せられる疑問です。

このシリーズでは、特別支援学校の教員としての実践経験をもとに、知的障害のある子どもたちが学ぶ場の現状と、その教育の特色を詳しくお伝えしていきます。初回となる今回は、特別支援学校の制度的なしくみや、対象となる子どもたち、全体の教育課程、そして果たしている役割についてご紹介します。


■ 特別支援学校とは?

特別支援学校は、視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・病弱・知的障害のいずれか、あるいは複数の障害のある子どもを対象とする学校です。従来は「養護学校」と呼ばれていた制度が、2007年の法改正で「特別支援学校」に一本化されました。

中でも、知的障害のある子どもたちが通う特別支援学校は全国各地に設置されており、教育基本法および学校教育法に基づく「小・中・高等学校」にあたります。つまり、学齢児童が通うための正式な教育機関であり、義務教育もここで行われています。


■ 特別支援学校と特別支援学級の違い

よく混同されがちなのが、「特別支援学校」と「特別支援学級」の違いです。

  • 特別支援学校:独立した学校。知的障害や重複障害、医療的ケアが必要な児童生徒など、特に手厚い支援が必要な子どもが通う。
  • 特別支援学級:普通校内に設置された、障害のある児童のための小集団学級。通学区域にある小中学校に通いながら、必要に応じて特別な指導が受けられる。

どちらに通うかは、子ども一人ひとりの状態、通学距離、保護者の希望、市区町村の判断などをもとに決定されます。


■ どんな子が通っているの?

知的障害の程度には個人差があり、支援学校に通う子どもたちの姿もさまざまです。

例えば、

  • 日常生活の多くに介助が必要な重度の子
  • ことばが不十分で、支援を通じてコミュニケーション力を育てている子
  • 学習の基礎理解に時間がかかるが、自分のペースで着実に取り組める子

なかには自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)など、発達障害の診断がある子どももいますが、特別支援学校に通うには「知的障害」の診断が前提です(ただし自治体によって運用に幅があります)。

また、重複障害のある子や、医療的ケア(胃ろう、吸引、導尿など)を受けながら学校生活を送る子どもも在籍しています。


■ 小学部・中学部・高等部の3つの学部構成

特別支援学校は、小学部・中学部・高等部に分かれています。名称は異なりますが、それぞれ普通の小・中・高校に相当します。

  • 小学部:6年間(通常は6歳〜12歳)
  • 中学部:3年間(通常は12歳〜15歳)
  • 高等部:3年間(通常は15歳〜18歳)※義務教育ではない

教科の名前や教育課程は、学齢に応じて定められているものの、実際には子どもたちの発達段階に合わせた「個別の指導計画」が主軸です。知的な発達、行動の特徴、生活スキルなどに応じて、一人ひとりの到達目標が設計され、チームで支援が行われます。


■ 学びの中心は「生活」

知的障害のある子どもたちにとって、学びの軸となるのは「生活そのもの」です。日常生活の中での理解や動作を支える「生活単元学習」や、日々の生活に密着した「自立活動」が大きな柱になります。

たとえば以下のような内容です:

  • 衣服の着脱、排泄、食事などの身辺自立
  • 買い物、公共交通機関の利用、電話のかけ方
  • 自己表現・意思決定のトレーニング
  • 職業的な技能や作業体験(中学部〜高等部)

これらの学習は、「できる・できない」に焦点を当てるのではなく、「少しずつ育てていく」「その子のやり方で取り組めることを増やす」ことを目的に進められます。


■ 支援学校が果たす役割

特別支援学校は、単に学びの場であるだけでなく、地域社会との接点としても重要な役割を担っています。

  • 専門的な支援の提供:教員は特別支援教育の研修を受け、医療的ケア児への対応にも習熟しています。
  • 家庭との連携:家庭訪問、面談、ケース会議などを通じ、学校と家庭が一体となって子どもの成長を支えます。
  • 地域との協働:地域の施設や企業、福祉事業所と連携しながら、子どもたちの社会参加の機会を広げます。

卒業後の進路(就労・福祉サービスの利用など)にもつながる支援体制が整っており、「生きる力を育む教育」の実現をめざしています。


■ 一人ひとりが「大切にされる」場所

支援学校の教室には、教科書だけでは測れない、豊かな学びと人間関係があります。

誰かの手を借りることが当たり前であっても、自分でできたことを嬉しく思える。

言葉では伝えにくくても、思いを理解してくれる大人がそばにいる。

そうした「安心と信頼」に包まれた学校生活が、子どもたちの心と体を育てていきます。


■ これからの連載に向けて

次回からは、小学部・中学部・高等部と、それぞれの段階ごとの学びや育ちについて、より詳しく掘り下げていきます。

特別支援学校に通う子どもたちは、決して「特別な存在」ではありません。それぞれの育ちのペースに合わせて、生活と学びを丁寧に積み重ねていく姿は、すべての子どもと同じく、真っ直ぐで、ひたむきです。

この連載が、そんな子どもたちの姿を少しでも多くの方に知っていただくきっかけになれば幸いです。

次回は小学部の生活と学びの特徴について詳しくご紹介します。