1985/8/28 髪切りデスマッチについて色々と記事がありますので引用します。
「プロレス取調室」より(長与千種編)
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敗者髪切りデスマッチの衝撃
玉袋 あと長与さんはね、家族だけじゃなくて、全国の悩める少女たちを、ある意味でたくさん救って いたわけだからね。 学校で嫌なことやつらいことが あっても、クラッシュギャルズを観ることで、強く 生きていけるっていうさ。
ガンツ 80年代半ばは、ホントに少女たちの教祖で したもんね。
玉袋 教祖だよ〜。
ガンツ「信じるものは千種だけ」 みたいな子が、 全国にもの凄い数いましたよ。
玉袋 そういう多感な時期の女の子の心をつかんで 離さなかった、あの色気っちゅうのは凄いよな。 ガンツ あと長与千種は、強くてカッコいいだけじ ゃなく、やられる姿でもまた惹きつけるんですよね。
玉袋 耐える姿がいいんだよ~!
長与 あれはクラッシュの役割分担として、考えて やってましたね。 飛鳥はホントに身体能力が高くて 心肺機能も強かったんですけど、心肺機能の強い人 たちって、攻めるスキルが凄い高いんです。だから 私は彼女の隣にいるなら、受けに回ったほうが絶対 にいいって。ピッチャーとキャッチャーのように。 それを徹底して追求していくと、やっぱり女房役の ほうがケガが多いんですね。
玉袋 相手の攻撃を受けまくってるわけだもんね。
長与 だから、うまい女房は奥歯がほとんどウソの歯なんです。私も奥歯は全部ブリッジ入れたりして るんで。で、攻めの人は前歯がないんです。 前に出て行くから当たるじゃないですか。だから、飛鳥は 前歯が差し歯なんですよ。
玉袋 それぞれの役割を果たしながら、身体を張っ てたんだね。
ガンツ だからクラッシュギャルズって、ファンクスみたいですよね。長与さんがテリーで、飛鳥さんがドリー。 クラッシュvs極悪同盟って、 ファンクス アブドーラ・ザ・ブッチャー&ザ・シークそのも のですもん。
玉袋 ホントそうだよ。長与さんが凶器攻撃で血だるまにされてさ、観客が泣き叫んでね。それで男の ファンも「おお、凄え!」って思わせちゃうところ が凄いんだよ。
長与 "坊主マッチ"のときもそうでしたね。
玉袋 坊主マッチ! 長与千種vsダンプ松本の敗者 髪切りデスマッチが凄えんだ。会場中が阿鼻叫喚だもん。
長与 本気で泣いてますからね。作りいっさいなしで悔しかったし。
ガンツ あの試合は、男子も含めて、プロレス史上 最も凄惨で壮絶な試合と言っていいんじゃないです かね。
玉袋 言っていいよ!あんな映像、いまテレビじゃ絶対に流せねえもん。
長与 あれ実際、放送禁止になったんですよね。
ガンツ あの試合はゴールデンタイムで放送されたんですけど、ダンプ松本の悪行とあまりの凄惨さに、 抗議の電話がテレビ局に殺到しすぎて、関西地区で は人気絶頂なのに『全日本女子プロレス中継』が打 ち切りになったんですよ。
玉袋 反響がありすぎて打ち切りなんだもんな~。
ガンツ それで翌年のリターンマッチはフジテレビでも放送できないってことで、最初からビデオ発売のみだ ったんですよね。
玉袋 凄いよ、ホントに凄い。フレッド・ブラッシーの噛みつきを見ておばあさんが死んだ事件を超えてるもん。
ガンツ 人気絶頂のアイドルが血だるまにされて、 さらに頭を刈られる姿がゴールデンタイムで流され るわけですからね。
玉袋 だからAKBのあの子(峯岸みなみ)が坊主にしたって何にも感じなかったよ。こっちは長与vsダンプを観てるから、どうってことねえもん。
ガンツ 長与さんが極悪同盟に押さえつけられて、 頭を刈られるシーンは、キリストの処刑にすらたとえられましたからね。
玉袋 ゴルゴタの丘だよ!だから逆に言えば、あ れ、刈るほうも刈るほうだぜ!
ガンツ あれだけ悪に徹するって凄いですよね(笑)。
玉袋 それも凄えよ、やっぱり。
長与 いま2人でよく言うのは、「ホントに憎しみ 合ってたよね」って。
ガンツ あれ、普通の感覚じゃできないですよね。 あの試合にかぎらず、ダンプさんの凶器、ホントにグサグサいってますよね?
長与 全っ然、やってますよ。やってますとも。あ れはホント、シャレにならない。痛すぎて笑いが出るんですよ。
玉袋 新人時代にジャッジメント・デイのとき、「歌って踊れるベビーフェイスになりたかった」って泣いてた人がさ(笑)。人間、開き直ると凄いね。
ガンツ ダンプvs大森ゆかりのときは、腕に刺した ハサミがそのまま刺さってるっていうのがあって
長与 あー! それ知ってる、知ってる! モニタ ーで見た! みんなに「見て見て、凄いことになっ てる!」みたいな(笑)。
ガンツ いや、長与さんも同じようなことやられて たんですけど(笑)。だから、あの頃の全女は、ど んなハードコアマッチより凄い試合が日常でしたよ ね。
玉袋 ライバル抗争の気持ちと覚悟が、極限まで登 りつめちゃうんだろうな。
長与だから全女ってモンスターを育てる団体だっ たのかもしれない。また、そっちに仕向けるのもう まいですよね。会社の手です。べつに、そこまで憎しみ合ってなかったのに、会社がそう仕向けるんですよ(笑)
ガンツ 長年女子プロレス興行をやって、どうやっ たら本気の怒りを引き出すのか、闘う若い女性の心 理を知り尽くしてるんでしょうね。
長与 だと思いますね。
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「女子プロレス ここまで喋っていいかしら」より(長与千種)
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丸坊主にされて何を思ったか いまだから話せること
大阪城ホールで、ダンプ松本に負けて髪を切られたときは、大粒の涙がしたたり落ちました。 顔じゅう血だらけになりながら、頭から流れてくる血と涙がまざり合って、もうグシャグシャです。
最初はグイと髪の毛をつかまれて、ハサミでバッサリとやられた。悲しかったですね。昔から、髪は女の生命だといわれています。自分では、そのときは女だなんて意識はなかったんだ けど、本能なんですね。無意識のうちに、自分のなかにある女の意識がわたしを悲しくさせた のでしょう。ハサミを入れられる前は、試合に負けたくやしさだけだったのに、バッサリやられたら、急に女としての悲しみが心のなかで広がったのです。
大かたハサミで切られたあとに、バリカンで刈られました。そのバリカンが、髪を切るのと同時に頭皮まで切っちゃったんです。頭って血が集まっているところだから、流れる血はハン パじゃないんです。まさに滝のように流れてくる。それでもダンプはバリカンを使っていくん です。
切った髪は、ダンプが笑いながら、マットの外にいるファンに向かって投げつけるんです。ファンのコたちはもう、悲鳴の嵐のなかにいます。
大声で泣きながら、ダンプが投げた髪を拾っている。そのようすはあとになってきいたのですけど、悲鳴をあげながら、われ先に髪を奪い合っているんですって。もう地獄ですよね、そうなったらたら。
わたしは、そんな状況をみられたもんじゃなかったんです。くやしさと、悲しさと、流れ出る血で意識がもうろうとしちゃって、 思考能力がほとんどゼロになっていたんです。
バリカンでかりあげられるたびに皮が切れて 新しい血がドバドバと出てくる。それがまた痛 いのなんのって。
よっぽど、暴れ出してやろうかと思ったくらいです。なんでわたしがこんなひどい目にあわされなくちゃいけないのかって。 こんなひどい 目は女子プロレス始まって以来じゃないかって。 あのときは憎みました。もちろん、ダンプも そうですけど、ヒールの助っ人とヒール側のレフェリーも憎くてしょうがなかった。
でも、負けたら丸坊主にされるということは、 自分が約束したことだったのです。誰にも文句はいえない。すべて自分が負けたからこうなっ ているんだ、と思いつつも、憎しみがしだいに頭をもちあげてきたんです。
"ダンプの野郎、絶対に殺してやる"
殺意っていうものがどういうものか、はっきりわかりました。こいつを殺さなきゃ、この憎しみは晴れない......。そう思ったのです。
そして、つぎの日。鏡をみるのがとてもつらかった。丸坊主になったなんて、とても女のコじゃありません。もちろん、女子プロレスラーだから少々のことはあるでしょう。体じゅうアザだらけだし、足も脱臼によって変形しちゃってる。でも、丸坊主はいくらなんでも恥ずかしすぎる。
勇気を出して鏡をみました。もともと童顔なのに、丸坊主になったら、なおさら童顔がきわだっちゃった。まるで小学生の鼻たれ小僧です。
でも、鏡をずっとみているうちに、なんだか心の奥のほうから笑いがこみあげてきちゃった のです。不思議なことに鏡に写っている自分の顔をみているうちに、どうしようもなくおかし くなっちゃった。ひとりで、大声をあげて笑い出しちゃったのです。
なんと、頭にジャリッ禿があったんです。これには笑いました。と同時に、メチャクチャ悲 しくなりましたけどね。そんな思いがあって、わたしはダンプを倒すまでは死にもの狂いでプ ロレスをつづけようと心に誓ったのです。
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「1985年のクラッシュギャルズ」より
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傷ついた少女たちの代理人
わずか六日後の大阪城ホールの主役は、またしても長与千種だった。
ダンプ松本との髪切りマッチに敗れた千種は首に鎖をまかれ、両腕を悪役レスラーに抑えられたまま髪を切られた。
広い大阪城ホールを埋め尽くした女子中高生たちは、スーパーヒロインの受難劇を目の当 たりにして泣き叫び、ダンプ松本に憎悪を叩きつけた。
女子プロレスラーの多くが恵まれない環境で育ったのと同様に、女子プロレスのファンも また、思春期の真っ只中で心の中に闇を抱えていた。
「自分は虐げられている。痛めつけられて苦しんでいる」と千種は全身で表現する。
千種が痛めつけられる姿を、少女たちは自分自身に重ねる。
千種の痛みを、少女たちは自らの痛みとして味わう。
長与千種のプロレスは、少女たちがふだん眠らせている感情のすべてを引きずり出す。わ ずか一試合の間に、少女たちの心を期待と不安、歓喜と憎悪、全能感と無力感の波が繰り返し襲う。純粋で一途な少女たちは、長与千種に洗脳されてしまうのだ。
この試合を実況した志生野温夫アナウンサーは、大阪城ホールに充ち満ちたダンプ松本への殺意をひしひしと感じた。この熱狂ぶりはただごとではない、プロレスの領域を逸脱して いる。このままでは死人が出ると恐怖した。
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「ダンプ松本のマジだぜ」より
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そして、今までのダンプ様のプロレス生活 の中でいちばん気分がよかったのが、もちろ 8月28日、大阪城ホールの長与千種との「敗髪切り、ランバージャック・デスマッチ(時 間無制限一本勝負)」だ。
結果は誰でも知ってるとおり、ダンプ様の 完勝 KO勝ちだ。
長与を丸坊主にしてやったぜ!
あの時、長与のセコンドについていた飛鳥、デビル、ジャガー、それにナマイキな3人娘、小倉 永友なんかの泣き叫ぶ顔ったらなかったぜ! 今思い出しても、笑いが止まらねェよ、ハッハハハハ。
おまけにクラッシュファンのガキどもまで、ギャーギャー、ビービー泣いちまってさ。
女子プロレス界の帝王は、デビルでもクラッシュでも、ましてやJBエンジェルスなん でもなく、このダンプ松本様なんだよ。
それがよ~くわかったんじゃねえか?
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まだ色々な本に当時のエピソードがありますが、またなにかありましたら追加していきたいと思います。
バリカンって、頭に直接やると頭皮が破れて血がドバドバでるものなんですかね。怖いです。