1984/11月号の「主婦と生活」にクラッシュ&極悪が特集されたので引用します。
--------------------
やってるときは、ホンキだよ
女子プロレスに、また、火がついた。マッハ文朱、ビューティー・ペア、ミミ萩原の三期黄金時代を経て登場したのが、ライオネス 飛鳥、長与千種の"クラッシュ・ギャルズ"コンビ。その人気はビューティペアを追い越す勢い。何がそんなにすごいのか。要するに悪玉(ダンプ松本、クレーン・ユウの 史上最悪軍団)に凶器攻撃を受け鮮血を流しながらも、けなげに立ち向かって悪をこらし める勧善懲悪の美学。そこに小・中学生の若い女の子が酔う。「キャーッ、やっつけろ、 コノヤロー、ヤッター」という女の子とは思えぬ 黄色い喚声。それにまじって「いいぞ、もっとやれぇ」のオジサンの声も。健康的な肉体の躍動も、見る側の主観によっていろんな楽しみ方ができる。
「あまり股を広げるとダメよ、と先輩からいわれてるんだけど、試合が始まるとそんな余裕がなくて・・・」と千種。ショーとはいえ年間三百試合をこなし、厳しい トレーニングを積む。四~五時間の平均睡眠で旅から旅へ。「焼肉だったら七~八人前は 軽い」というのがパワーの源泉。が、素顔はまだあどけない。
悪玉の二人も「やりすぎたな、と思ったときはあとでゴメンネって謝るの」。
悪玉の哀愁が漂う
--------------------
クラッシュと極悪が特集されています。
この時期(1984/11)には珍しく、メイクした状態で笑顔で撮影されています。
男子プロレスが「斜に構えたり」、「裏目読み」をしたりする方向に入り始めた時期に、クラッシュvs極悪は、勧善懲悪の分かりやすいプロレスでした。特に中高生の女子ミーハーファンを惹きつける魅力が十分にあったと思います。私も若かったですが、見ていて分かりやすかったし、男子プロレスでは私はタイガーマスクが好きだったので、勧善懲悪型はとても好きでした。もちろん複雑な内部抗争が玄人には面白いっていうのも否定はしませんが。
しかし勧善懲悪型じゃないと、マニアックな方向になって国民的な人気は出ないかも。
さて、この記事ではダンプの愛犬であるポロンとクルミ、クレーンのパフィが映っおり、極悪だけど愛嬌がある感じに撮影されています。「主婦と生活」という雑誌の特性上、ミーハーファンが見るような雑誌ではないので、大人の書きかたなんでしょう。
「やりすぎたな、と思ったときはあとでゴメンネって謝るの」
これは本当ですかね?
1984年の頃はまだ赤バス前なので、試合以外でも少しは話す機会があり、ちょっと謝っていたんでしょうか。この後、だんだん松永会長のタレコミで憎み合うようになっていったんでしょうか。
そのあたり、長与の本にも書かれているので、引用してみます。
長与千種「ここまで喋っていいかしら」より-----
心のタイトルマッチはいつまでも
ダンプ松本とは、ほんとうにいい勝負をしました。大阪で"髪切りマッチ"に敗れ、髪をズタズタに切られ頭から血を吹き出していたとき、殺してやりたいぐらい憎かった。
これはほんとうの話です。ウソでもなんでもない。
女子プロレスは、試合では敵同士でもリングを降りたら仲がいいんだろうと思っている人も多いでしょうが、わたしとダンプはほんとうに憎み合っているといっても過言ではなかったでしょう。
カッコつけていえば、彼女はよきライバルで あり、ひとりのレスラーとして、対戦相手として、申しぶんなかったとでもいうんでしょうけど、実際はそんなきれいな言葉で表現できるもんじゃないんです。
だってそうでしょ。プロレスは格闘技です。 相手に対して少しでも甘い感情をもっていたら、とても倒せません。真剣勝負なのですから。
しかも、女であるわたしの髪を切り、頭皮を切り裂いて血を吹き出させたのですから。いくらリング上のことといっても、感情的に許せはしません。
そんなわけで、リングを降りてもダンプとはひと言も口をきかなかったんです。もちろん意識的にです。だからといって、私生活上でもケンカをするとかということはなかったですけれどね。
そしてダンプも2年前に引退しました。ヒールとしての史上最高のキャラクターだったダンプがいなくなることで、女子プロレスのひとつの色が褪せました。それは事実です。
------------------------------------------
長与はダンプとはケンカはしていないが、私生活では話はしなかったと書かれています。仕事の特性上、ベビーフェイスとヒールが楽しそうに話しているところをファンが見たら興ざめになりますから、その部分は一線を引いていた、という行動だったようです。
おそらくダンプも同じなんでしょう。
リング内ではムカつく相手だが、それを私生活までは持ち込まないし、私怨もない。リング上だけの憎しみあいだったようです。このあたり、長与のプロ意識を十分に感じさせます。